「ふゆちゃん!
実家の電話番号は!?」

彼の、お父さん。

必死に声を振り絞って、慣れた数字の並びを口にする。



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「ふゆさーん!
ごめんねー服切るねー。」






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「ふゆさーん、手術するよー。いいですかー?」

こんな痛いのは、嫌。
『全身麻酔ですか?』

「そうだよ。全身麻酔だよ。」

『じゃあ、お願いします。』



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ケータイ。
私のケータイ。
先生が誰かと話してる。

「え?あ、はい。意識はありますよ。はい。代わりましょうか。」
白衣を着た男性が携帯電話をこちらに差し出してくれる。

「ふゆ!大丈夫かい!?」

携帯電話越しに聞きなれた母の声が聞こえる。何か話したいけれど、母の声を聞いて、なんだか安心してしまった。

『うん、うん………』




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視界が、暗い。それに、なんだかぼやけて見える。


ここは……病院?



ああ、そうか…。


 夢じゃなかったんだ。
 生きてて良かった…。


ふたつの思いがいっぺんに頭に浮かぶ。

夢だと思っていた一方で、夢じゃないと分かっていた。

不思議な感覚だった。

そうしてまた、眠りについた。