開幕節 マッチレポート |  

開幕節 マッチレポート



 いに緊張の色がみられた前半、名古屋は引いた神戸ディフェンスに対し、森岡やボラの縦への突破や遠めからのシュートで活路を見出す。2分、上澤のミドルシュートがバーに当たるなど、何回か惜しチャンスをつかんでいた前半の名古屋は決して悪くないが得点までには至らない。このまま、前半終かと思われた17分、試合は動いた。山田 ラファエルの横パスから上澤がまたもミドルシュートを放つと、これがゴール左隅に突き刺さり名古屋先制。上澤はFリーグ得点第1号となりFの歴史に名を残した。




再三、ミドルを狙っていた上澤。


 一方の神戸は単発ではあるがカウンターを試みるが決定機には至らない。


 エンドが換わった後半、1つのゴールで状況は一転する。23分、それまでも再三ドリブルで仕掛け名古屋の脅威となっていたブルーノが、ペナルティエリア付近でファールを受ける。そのFKを伊藤が打つと壁に当たって角度が変わりそのままゴールに吸い込まれる。神戸の貴重な同点ゴールの瞬間だった。そこから名古屋が反撃に出るが神戸も体を張ったディフェンスで得点を与えない。





同点のFKを決め、チームの中心の伊藤。


 本来ここで名古屋はパワープレーに入る前の選択肢として森岡、マルキーニョスの同時起用というオプションを使うが、マルキーニョスの不在で今回それが使えない。


「練習でもほとんどやったことがないメンバー」(北原)であるならば機能しなくて当然だ。後半終了間際の森岡からのパスにボラが競り、こぼれ球を前田がフリーで放ったシュートもポストに嫌われ1-1の引き分けに終わった。この引き分けは両者にとって意味合いの違う引き分けとなる。


 まずは神戸だが、「今日は100点をあげたい」(鈴木監督)というとおり、評価が未知数であった神戸にとって咋年度3冠の名古屋相手に引き分けたことは賞賛に値する。神戸はこの試合、日ごろ掲げる”超攻撃フットサル”でなく現実的なフットサルに終始したのは少々残念であったが、これは開幕戦で相手が名古屋であったため仕方のないところか。ただし、次節もこれではいけない。今節の引き分けを活かすためにも次節ホーム初戦で”超攻撃フットサル”を是非見せて欲しい。


 一方の名古屋だが、

「前半は悪くなかったが、後半同点にされてから慌ててしまいチームプレーでなく個人プレーに走ってしまった」(北原)のは、王者の戦いぶりとしてはいただけない。マルキーニョスの不在というマイナス要素はあったが、それにしても今日の名古屋は全体的にリスクをかけたパスが少なく、相手を混乱に陥れるまでに至らなかった。これが開幕戦の難しさか。依然として優勝の最右翼であることに違いはないが、今後も相手が引いてくることが予想される。その相手に対して今日のような戦いを繰り返すようであれば名古屋優勝に疑問符がつく。ホーム初戦となる次節では唯一のプロチームとして同じ失敗は繰り返せない。




第2試合 町田 7-3 大阪



 盤ペースを握っていたのは町田。町田の代名詞ともいえる連動したパス回しからチャンスをつむ。しかし、先制したのは大阪。7分右サイドからのキックインに素早く反応した西村がファーサイドで合わせ先制。さらに8分、右サイドでボールを受けた安川がスピードに乗ったドリブルで一気に相手を振り切ると、そのまま中に切れ込みゴールするなど大阪が前半続けざまに2点を奪う。
 

 しかし、町田も黙ってはいない。14分にCKからホンダ マルコスが合わせ1点を返すと、前半終了間際は電光石火のカウンターから横江、久光とつなぎ、最後はまたもホンダ マルコスが押し込み、たちまち同点とする。

 

 後半の勝ち越しゴールも大阪。23分、シュートのこぼれ球に西村がいち早く反応し、この日2点目となるゴールを決める。その後両チーム膠着状態が続き徐々に次の1点が重い展開となる。その大事な”次の1点”は町田に入る。同点ゴールは32分、左サイドでホンダ マルコスがボールを奪うと、そのまま縦にドリブルしマイナスのボールを出す。そのボールに絶妙のタイミングでゴール前に走りこんだ金山があわせ3-3とする。



今シーズンはこの二人のコンビがカギとなる、金山とマルコス。


 これで勢いに乗った町田は、33分にCKから相手ゴレイロのミスで逆転に成功するとその後も

「今はこの練習しかやっていない」(金山)という練習どおりのパスカットから独走した久光のゴールや狩野のロングパスを受けた横江のボレーでリードを3点に広げる。

 

 対する大阪は、3-6の36分、岸本をゴレイロにパワープレーを試みるが、パワープレー中にその岸本が負傷退場したこともあり万事休す。相手パワープレー中のミスからもう1点追加した町田が終わってみれば7-3と大逆転勝利を収めた。


 この日の町田は、常に先手先手を取られる苦しい展開であったが、粘り強く応戦したことが終盤の大転勝利につながった。また、後半はパスカットからの速攻で何度もチャンスを作り出しており、

「勝因は面でのプレーセレクトの誤りを指摘してくれる監督の存在」と甲斐は、その背景にあるバイアーノ監督果を認めていた。


 町田はジョガータの完成度など細かい部分にまだまだ課題もあるが、プレシーズンマッチで結果がていなかっただけに比較的苦手にしている大阪を倒してのこの1勝は大きい。この勝利でチームに弾みがつくであろう。今日の町田を見る限り終盤に逆転を許していた昨シーズンの姿とは一味違うようだ。





岸本の不調の中、2ゴールと結果をだした(左)西村。



 一方、後半途中まで試合を優位に進めていた大阪だったが、終盤に息切れしての逆転負け。西野の加入により多少岸本の負担は軽減されたが、それでも大事な局面では「感覚が無く左足に力が入らない状態」という状態の岸本に頼らなければならないのが現状で、町田とのチーム状態の差を見せつけられる形となった。試合後の岸本の

「現状では魅せるフットサルはできないが、それにしても試合運びがヘタクソ」

というコメントが今日の大阪のすべてを物語っていた。

 しかし、まだリーグは始まったばかりだ。関西リーグ4連覇という看板を引っさげFリーグに乗り込んできた関西の雄としての意地を次節でみせて欲しい。




第3試合 花巻 2-4 湘南



 ッシェル、ビニシウスがまさかの欠場で柱を失った花巻が湘南攻撃陣をどうしのぐかが最大の焦点となっていたこの試合、序盤は静かな展開となる。


 湘南は序盤、野嶋のドリブルやピヴォ当てからの落としを豊島のミドルシュートで攻めるが、花巻のボックスのゾーンディフェンスに手を焼き、ピヴォにいい形でボールが入らず単発に終わる。さらに、「(野嶋)倫の使い方を間違えた。最初はボール回しのセットで行って相手が引いた所で倫を使うべきだった」と奥村が言うとおり、野嶋の強引なドリブルやパスミスからカウンターを受け、流れをみすみす相手に渡してしまう。


 それでも「ジオゴが前半の中盤には攻略法を編み出した」(阿久津)という話のとおり、へドンド(旋回)でアラが相手ボックスの中央のギャップに顔を出す展開から数回チャンスを作るが、花巻のゴレイロ内山の再三の好セーブに遭い0-0で静かな前半を終える。





好セーブ連発で会場を沸かせてた内山。



 しかし、後半になると試合は打って変わって激しい様相を見せる。後半開始早々花巻はハーフウェーの混戦で水上がボールを奪うと、すぐさま「右足だったらポッカリ蹴れるコースが空いていた」(水上)という高い位置にポジションを取る湘南のゴレイロ阿久津の頭上をあざ笑うかのようなロングシュートで先制点をもぎ取る。


 一方、湘南もすぐさま反撃に出る。失点から1分後、ゴール前FKで岡田 ジオゴがシュートを打つと見せかけ、花巻守備陣の虚を突き野嶋へパス。それを野嶋が落ち着いて決め同点ゴールを奪う。これで勢いに乗った湘南はさらに24分、右サイドでボールをキープした岡田 ジオゴが中央に走りこんできた伊久間へ芸術的なループパスを出す。これを受けた伊久間が逆転ゴールを決める。しかし、その1分後、花巻は小原が左サイドから立て続けにシュートを打つとこれがゴールに突き刺さり、2-2でゲームを振り出しに戻す。


 その後、試合は膠着し迎えた31分、湘南はカウンターで数的有利を作ると、沖村 リカルドのまたぎパスを受けた岡田 ジオゴが冷静に流し込み3-2と勝ち越す。





勝負強さを見せつけ、2ゴールの岡田ジオゴ。



 追う花巻だったが、34分、岡田 ジオゴのシュートが、自陣ゴールエリアでクリアをしようとした小原の手にあたりこれがハンドの判定。小原は退場でさらにPK。そのPKは内山のスーパーセーブで防ぎ試合の望みをつなぐが、1人少なくなり流れをつかめない。38分には、岩見をゴレイロに据えパワープレーを開始するが実は岩見をゴレイロに置くパワープレーは、ほとんど練習をしておらずさっそく綻びを見せる。岩見の苦し紛れのドリブルを岡田 ジオゴにカットされそのまま無人のゴールへ。これで勝負あり、4-2で湘南が辛うじて激戦を制した。

 湘南は、"相手に合わせる"というロンドリーナ時代からの悪い癖は多少覗かせたが、昨年までとの違いは大量補強でできあがった圧倒的な選手層だ。それをチームの頭脳岡田 ジオゴがうまく使いこなすことができるならば湘南は突き進むだろう。


 花巻は、苦しい時間帯に頼るべき助っ人外国人の不在が最後に響いた。他の選手は守護神内山を中心に奮闘したが「ボールの取られ方が悪いからディフェンスでもリズムを作れない。課題は攻撃です」内山の言うとおり、今後はいかに攻撃での精度を上げられるかが鍵だ。




第4試合 浦安 4-2 大分



 安はゲーム序盤こそ稲田のピヴォ当てを生かしチャンスを作るが、大分もマンツーマンで激しいディフェンスで抵抗し得点には至らない。するとチームのストロングポイントである元FPのゴレイロ青柳のキックの精度を活かすため青柳を高い位置に上げ5人でボールを回すと徐々に浦安を押し込んでいく。


 先制は大分、12分カウンターから右サイドでボールを受けた松田 マルシオがダイレクトでシュートを決める。通常あの場面はトラップして相手ゴレイロをかわして抜きたいところだが、パススピードと川原の位置を見てダイレクトでのシュートを選択するあたりはさすが昨年度東海リーグ得点王。ゴールへのバリエーションが豊富であることを証明した。

 ここから浦安も反撃をしたいところだったが、大分が、若手中心で引いてカウンターの1stセットと経験豊富な松田 マルシオや千綿 ヒカルド中心にハイプレスをかける2ndセットをうまく使い分けることもあり、「大分の情報が少なかった」(市原)という浦安は変化に対応できず流れをつかめない。
 




若手の中でも十分に力を発揮した(左)仁部屋。

第2PKをはずしたものの、しっかりと結果を残した(右)稲葉。


 ただし、大分がこの日多用した青柳から相手左CK付近へのロングボールに対しては

「あそこを使われること自体はそんなに怖くない。あそこから中に入られたり、落としたボールに対するフォローの選手のケアをしておけばOK」(川原)と浦安もきっちりケアしており、崩すまでには至らず0-1で前半を終える。 


 後半、開始早々浦安が相手ゴールエリア付近でFKのチャンスを得る。

「前半同じような場所で得点できなかった。監督からは『ただ決められたサインプレーばかりやるのではなく、プレーするのは選手だから自分のやりたいようにやっていい』と言われていたのでハーフタイム中に選手と話し合ってアレンジした」と言う藤井が高橋のパスをヒールで流し小宮山へ。これを小宮山が決め浦安はいい時間帯に同点に追いつく。浦安はこれで落ち着いたか徐々にボール回しが戻ってくる。


 さらに「大分は走るチームなので、試合の中盤から終盤にかけて、フレッシュな岩本や中島を投入して相手のミスを誘うことを狙った」と浦安のシト監督が語ったように、後半大分の運動量が落ちてきた時間帯にこの日温存していた岩本や中島を使いこれが的中する。


 33分、カウンターでチャンスをつかむと、中央の江藤から右サイドの岩本へ、さらに岩本が中に折り返すとそこに走りこんだのは中島だ。このボールを中島が落ち着いて流し込み浦安がついに逆転する。さらに続けざまに得たCKのチャンスでは平塚のシュートのこぼれ球を小宮山が押し込みこの日2点目のゴール。浦安はあっという間に3-1とリードを2点に広げる。





攻守にわたり最高のパフォーマンスを見せた小宮山。


 大分もパワープレーで反撃するが、稲葉にボールを奪われ無人のゴールへ放り込まれ大勢は決まった。それでも大分は終了間際、青柳の意地のドリブル突破から1点を返すなど最後まで抵抗を見せたが試合終了。4-2で浦安が勝利を収めた。

 中島や小宮山など"脇を固める人"の活躍で何とか勝ちを拾った浦安。本調子にはまだ程遠いがそれでも最後は経験の差がものをいった。次節は稲田、稲葉、藤井といったいわゆる”点を取るべき人”の派手な活躍に期待したい。


 一方の大分は敗れはしたが、ゴレイロの青柳を中心にやっているフットサルに可能性を感じた。選手もまだ若いので伸びしろも感じる。ただし、あえて一言苦言を呈すとすれば、試合後選手が口々に敗因は「経験不足」と言っていたことだ。単純にそういう場面に慣れていないだけのかもしれないが、敗因が験不足」では理由が漠然としていて同じことを繰り返す可能性もある。相手は常に自分たちより経験のあるチームなのだから、具体的にどういう所がダメだったのか特に試合中での修正点を千綿 ヒカルドなどのベテランに頼らず自分たちがピッチ上で判断することを意識して今後の試合を戦ってもらいたい。そうなれば大分の未来は明るいであろう。