ほんとうは飛べることり
昨日早朝、道に鳥がおちていた。
歩道に横たわったままぐったりしているので最初は死んでるのかとおもったが、目を開けてるしすこし動いている。
しかしどうやら弱って立てないらしい。
今はまだ早朝だがここは人通りの多い新宿の路上だし、道の真中に放置したら踏まれたりして危険、と思い、もっていた布でひろった。とりは何の抵抗もしないで手に乗せられた。
手に乗っけて、これはなにかの雛かな、確か鳥の雛はひろってはいけないのではなかったか‥とおもって近くの木を見上げるが何の巣も見えない。鳴き声もきこえない。
しかたない、相当弱っているみたいだしとりあえず朝9時まで保護しよう、それから医者かどこかに相談しようか、たしか家の近くに動物病院あったな‥と決め、一度家に連れて帰ることにした。
歩くと鳥の頭が揺れるので、ああこれは、かわいそう、なるべくゆっくり、鳥に衝撃のすくないように摺り足気味で歩いて帰った。
鳥はおとなしく目を閉じていたが、たまに目を開けてこちらの顔を
見ていた。
帰る途中、あれ、これ、スズメの雛じゃないかなあ、やっぱり連れてきたらまずいかも、返そうか、いやでもあの場所は危険だし、とさんざんに迷いながら、どちらにしても一度帰って対策することにして、またゆっくり歩いた。
時間がすごくかかって家に帰りつき、小さい洗面器にタオルを敷いて鳥を中に入れた。ペットボトルのふたに水を入れてそれも中に入れた。
さてどうしようかな
鳥、保護、などで検索してみるといろいろでてきたが、動物病院ではあまり野鳥に対応できるところがすくなく、都の鳥獣保護の機関に相談窓口がある、西新宿にあるらしい‥
9時になったら相談してみよう。しかしその前に鳥が弱って死んだらどうしよう。餌、摺り餌、ミールワーム‥そんなものは家にはない。それにわたし今日夕方から仕事があるし、連れていけないし、でも家にほっといたら死ぬかも‥こまったどうしよう。
鳥は落ち着かないようなので、洗面器にハンカチをかけて暗くした。体が冷えると致命的らしいのでエアコンも切った。
そしてようすをみながら調べものを続ける。
この鳥、なんていう鳥だろう。スズメの雛を調べたらぜんぜん姿が違った。スズメのように丸くないし、うぐいすのような色をしている。メジロでもない。目のところに白い線が入っている。頭の上にも。
結局いろいろ見ていくとスズメでもなく雛でもなく、ムシクイという種類の鳥の成鳥だった。渡り鳥らしい。こんなに弱って、ガラスにでもぶつかったのかしら。
しばらくすると鳥は落ち着いたようで、目を閉じてしずかに呼吸だけしている。
それから一時間後くらい、調べものを続けていたが、きゅうにパシャと水の音がした。とりが目を覚まして洗面器の中で動いている。さっきより元気なようす。
あれ、もしかしていけるんじゃないか？ベランダのドアを開けて洗面器をもって出た。
そとにでると蝉がないていた。
鳥はキョロキョロしたりこっちを見ている。
それからきゅうに飛んでいった。
よかった。ほっといたらげんきになったよ
ほんとうは飛べることり
