⇒添削例2 院理系1年男子(メーカー志望)B君の自己PR
大学院理系1年男子(メーカー志望)B君の自己PR
私は、モノつくりをトータルコーディネートできる技術者に
なることを目標としています。なぜなら、使い手のニーズ
を正確に把握して、より多くの満足感を与えることのできる
商品開発に携わりたいからです。まず技術開発の部分では、
ユニバーサルデザインの観点から考えていきたいと思います。
現在、人間工学に関連した研究を行っており、ユニバーサル
デザインに大変興味があるからです。また、市民講座や講演会
に参加して実際に街にあるユニバーサルデザインに触れること
で、現状として高齢者向けという意識が強いように感じ、もっと
万人に向けたデザインを考えたいと思ったからです。また経営
戦略の部分は机上の空論にならないように、より実践的な環境
で学びたいと考えています。よって、9月からの6ヶ月間で「実際
にベンチャー企業を立ち上げる過程を体験できる」講義に参加し、
技術開発からマーケティングまでの幅広い視野を身に付けたいと
思います。(397字)
⇒まず全般的な感想
実はまったく自己PRになっていない文章であることには
お気づきだろうか。やってみたい抽象的な内容をひたすら
羅列しているだけ。なぜだか将来的な目標まで、はたまた
抽象的な曖昧な言葉で羅列して貴重な400字を費やして
しまっている。これではあなたのどの部分を魅力的だと
判断して採用すればいいのかまったくわからない。
私立中学や高校を受験する際の面接では、こういう一見
優等生っぽい話をダラダラしているだけでも通用するが、
企業の採用において今回の自己PRはまったく無意味だ。
書類ならば採用担当が最後まで読まずに途中で破り捨て
るだろう。面接ならば面接官は途中で聞くのをやめるはず。
自己PRとはあなたのコマーシャルなのだ。あなたという
「商品」を企業という「消費者」に買ってもらうためのCM
なのだ。あなたはそこをまったくわかっていない。
あなたという存在を、他の応募者と比較して際立たせて
くれるのが自己PRの役目。つまりライバルとの差別化
がもっとも大切なのだ。あなたの文章は他の優秀なライ
バルと差別化ができていると思うだろうか。
あなたが今何ができるのか・・・あなたが今どういう特長を
持っているのか・・・それらを簡潔に分かりやすく魅力的な
表現で語るのが自己PRであると、強く肝に銘じるべし。
理系で技術系を目指す学生さんは、ほぼ決まったように
「机上の空論ではなく血の通った技術を!」というセリフを
言いたがる傾向が強くて、古井戸先生も聞き飽きてしまっ
たのが本音。今回のようなロジックをいくら語っても、あなた
を成功へとは導かない現実は知っておこう。根本的に自己
PRは考え直す必要があると、厳しく言わせていただく。
以下、挿入しながら各部分の感想を述べる。
>私は、モノつくりをトータルコーディネートできる技術者に
>なることを目標としています。
自己PRでなぜ目標を述べるのかが意味不明。目標などは
言葉で何とでも言えるから、あなたのスキルや魅力の証明
にはならない。ちなみに頭の古い面接官のおじさんによって
は、カタカナ語を嫌う人がいる。「トータルコーディネート」な
んて耳にまったく残らない言葉を使うべきではない。
>なぜなら、使い手のニーズ
>を正確に把握して、より多くの満足感を与えることのできる
>商品開発に携わりたいからです。まず技術開発の部分では、
>ユニバーサルデザインの観点から考えていきたいと思います。
ここでは一見「志望動機もどき」を語っているように思う人が
いるかもしれないが大間違い。志望動機にさえなっていない。
「志望している事実」を長々と言葉を多くして語っているに過ぎ
ない。「志望してます!」と言ってるだけ。つまり無意味。今回
は自己PRを求めているのだから、そもそもテーマが根本的に
ずれてしまっている。
>現在、人間工学に関連した研究を行っており、ユニバーサル
ここで「関連した研究」なんて曖昧に言ってしまうからダメなのだ。
どんな研究なのかまったく分からないではないか。どんな研究に
没頭したのか具体的に教えてあげないと、相手はあなたの得意
分野について、まったくわからないではないか。
>デザインに大変興味があるからです。また、市民講座や講演会
自己PRや志望動機で複数のテーマや内容を語るのはご法度だと
思ってほしい。短い文章や短い時間内で、学生さんレベルの表現
能力では複数の内容を語るのは絶対に無理。相手は聞くのが面倒
になるし話が複雑になって分かりにくくなる。絞込みが自己分析の
大切なプロセスであることも知っておこう。「あれもこれも」と詰め込
んだ文章は絶対に失敗する。そういう意味で「また」という接続詞は
禁句だ。これを使うということは、必ず複数の内容が盛り込まれてい
ることに他ならない。
>に参加して実際に街にあるユニバーサルデザインに触れること
>で、現状として高齢者向けという意識が強いように感じ、もっと
>万人に向けたデザインを考えたいと思ったからです。また経営
>戦略の部分は机上の空論にならないように、より実践的な環境
>で学びたいと考えています。よって、9月からの6ヶ月間で「実際
「また」とか「よって」とか妙な接続詞を使って色々書きすぎてしまい、
結局どの文がどの文に掛かっているかが分からなくなっている。
日本語として成立していない。文章は一文を短く構成は簡略化を。
相手は仕事で疲れ果てたおじさんなのだ。こんな面倒な文章を
丁寧に読んでくれると思うなら大間違いだぞ。
>にベンチャー企業を立ち上げる過程を体験できる」講義に参加し、
>技術開発からマーケティングまでの幅広い視野を身に付けたいと
>思います。
まだ体験してもいないものをいくら語ってもまったく無駄。問題外だ。
自己PR文章じゃないと仮定して読んだとしても・・・
あなたは技術者を管理する人になりたいの?
ユニバーサルデザインに携わりたいの?
起業家になりたいの?
何がやりたいの?
・・・まったくわからないままだった。実に残念。
結局あなたは何ができる人なのか・・・何に秀でている人なのか・・・
まったく分からないままだ。400字も使ってこの状態はかなり重症。
古井戸先生も協力は惜しまないが、近くに説教をしてくれる社会人
のアドバイザーを発見しないとえらいことになりそうだぞ。
あなたは頭の中を整理した方がいい。何ができるのか。どこが特長
なのか。具体的に何をやりたいのか。大学の研究以外で自己PR
を作れるのか(実際そういう要求は頻繁にされる)。よく考えてほしい。
時間がかかるかもしれないが再チャレンジ
をやはり期待したい。あなたもきっと言われ
っ放しは嫌だろう。
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