■中国軍が艦載機の本格調達に着手か:着々と進む空母保有 | FUNGIEREN SIE MEHR !!

■中国軍が艦載機の本格調達に着手か:着々と進む空母保有

【進む中国軍近代化 艦上戦闘機調達へ露製50機 空母計画に関連か】  (産経iza 11月6日)


 戦力の近代化を進めている中国がロシア製の艦上戦闘機スホーイ33SU33)を最大で50機、約25億ドルで購入する方向で最終調整していることが5日、分かった。防衛庁は、中国の空母建造計画と密接な関係があるとみられることから事実関係の確認などを始めた。
 中国軍の動向を追っているウェブサイト「チャイナ・ディフェンス・トゥデー」などが、ロシア兵器輸出公社ロソボロン・エクスポート社と中国当局の間で進められていた交渉が最終段階に入ったと伝えた。
 情報を総合すると、中国軍はまず2機を試験導入し、飛行テストや技術・能力評価を実施。その後12機を追加導入しパイロットの習熟訓練を本格的に開始、最終的に50機調達する予定という。
 SU33はロシア空軍の主要戦闘機SU27に艦載機としての装備を追加し、主翼、水平尾翼が折りたためるほか、対艦攻撃の兵器搭載、運用も可能な「空母艦載機」に改良した艦上戦闘機。
 中国は2008年ごろの実戦配備を目標に空母建造計画を進めているとされ、香港の「東方日報」などは「空母に中国国産艦載機やSU33を搭載する予定」と伝えている。
 だが一方で「中国の空母保有は中国の海洋戦略を根本的に変える」として、空母建造計画に大きな関心を持っている防衛庁情報本部や海上自衛隊では、中国の艦載用SU33導入の意図や背景を探るため米軍などと情報交換しながら警戒感を強めている。




 ついに中国軍がロシア製艦載機の本格調達に乗り出すようです。


 ■Su-33とは


 旧ソ連・ロシアのスホーイ設計局が開発したSu-27(NATOコードネームフランカー)の派生型です。フランカーDSu-27Kとも呼ばれます(※Su-27Kは98年までの呼称なので本稿ではSu-33と呼称する)。大型の長距離戦闘機として開発されたフランカーに、カナード(前翼)、主翼・水平尾翼折りたたみ機構、降着装置を強化した機体です。兵装の強化もされていて、豊富な対空・対地・対艦兵装を運用することが可能な強力なマルチロールファイターとして完成しています。UPAZバディ空中給油プローブも装備し、ロシアでは海軍北洋艦隊に採用されています。


 ・Su-27フランカー

 Su-27


 ・Su-33フランカーD(Su-27K)

 飛行するSu-33


 艦載状態のSu-33
 


 Su-33はそれまで貧弱だったフランカーのコンピュータを8目標同時攻撃可能なZhuk-PH N011に換装しているとされています。ハードポイント(ミサイルなどの兵装を取り付ける箇所)を12箇所も持ち、各種多様な兵装を運用することが可能です。


 ・多様な兵装を装備するSu-33

 多様な兵装のSu-33 


 機体の真ん中下部に見えるのはKh-41モスキート対艦ミサイル(NATOコードネームSS-N-22サンバーン)です。射程距離は300kmで、イージス艦の防空圏外から攻撃することが可能な超長距離対艦ミサイルです。4基のロケットと1基のラムジェットエンジンで推進され、その速度はマッハ3を超えます。誘導は慣性誘導・アクティブレーダー誘導となり、命中精度の程は不明ですが、飽和攻撃を行った場合にイージス艦を含めた艦隊に打撃を与えることが可能なミサイルです。


 ・Kh-41モスキート対艦ミサイル

 Kh-41モスキート対艦ミサイル


 Su-33は、このKh-41を運用するには機体が小さすぎ、写真でもわかるようにKh-41はSu-33の全長(21.9m)の半分近くの巨大な大きさ(9.75m)となっています。余程の推力が無い限りこんなミサイルを装備して飛行することは困難であり、電子制圧機、指揮管制機など各種支援航空機の支援が無ければ容易に捕捉されてしまう可能性がありSu-33がアメリカ艦隊に攻撃を行うことは事実上不可能でしょう。

 しかし、防空戦力、航空管制能力の貧弱な日本の自衛隊に対してであれば十分効果的な打撃を与えることは可能かもしれません。


 Su-33はもう1種類、Kh-41を小型化したようなKh-31ズヴェズダという対艦ミサイルを装備することが出来ます。こちらの射程は70km、誘導方式はKh-41と同等です。


 ・Kh-31ズヴェズダ対艦ミサイル

 Kh-31ズヴェズダ対艦ミサイル



 ■中国のフランカーシリーズ運用実績


 中国はこれまで多数のフランカーシリーズを運用してきた実績があります。


 Su-27SフランカーBのダウングレード版である、単座型(Su-27SK)及び複座型(Su-27UBK)を殲撃11型(殲-11、J-11)として運用しています。同機は限定的な対地攻撃能力(非誘導兵器のみが運用可能)を保有しています。


 ・殲撃11型(単座型)

 su-27sk

 ・殲撃11型(複座型)

 su-27ubk



 また、Su-27の複座戦闘攻撃機型であるSu-30MKK及びその改修タイプであるSu-30MKK2殲撃13型として04年頃より運用し、台湾への有力な攻撃能力を保有するほか、空中給油装置を備えてインドや東南アジア、グアム方面への侵攻も可能であるとされています。また、スホーイ社より中国空軍に対して、レーダーの改修などを含めた改修案(Su-30MKK3)も提示されているようです。


 ・殲撃13型

 Su-30MKK(中国)



 中国軍はこれらのフランカーシリーズを、各100機単位で運用しています。



 ■中国軍の空母計画


 事実上中国は、Su-33を運用できる空母を1隻保有しています。大連港にて改装工事が行われているとされる「ヴァリヤーグ」がそれです。


 ・空母「ヴァリヤーグ」要目

 「アドミラル・クズネツォフ」級2番艦

 満載排水量58900t

 搭載機数 固定翼機・回転翼機合わせて60機


 もともとこの空母は海上ホテルとして改修する目的でウクライナから中国の会社(社長は中国情報機関の退役大佐であった)に売却されたものですが、「ヴァリヤーグ」の中国到着後にこの会社が霧散したため、今は事実上中国政府が同艦を管理しています。もともとの約束を反故にしたというほうが正しいのかもしれませんが、「ヴァリヤーグ」は改修修理すれば実用空母として運用できるポテンシャルを保持しており、中国政府はこれに中国海軍艦艇と同じ塗装を施し、かつて同艦の建造に携わっていたネブスコエ設計局やニコライエフ造船所の技術者たちを招聘して一部欠損した内部機能の回復に努めているようです。ロシアから同艦の設計図面や技術図、資料を全て購入しているため彼女の再建は容易でしょう。


 ・大連港で改修工事を受ける「ヴァリヤーグ」

 ヴァリヤーグ@大連


 この「ヴァリヤーグ」の同型艦である「アドミラル・クズネツォフ(別名ブレジネフ、あるいはトビリシ)は、かつてSu-33とMig-29Kの離着艦試験を行った艦ですので、「ヴァリヤーグ」は当然Su-33を運用する能力を保有していると見て間違いありません。


 ・Mig-29KファルクラムD

 mig29k

 旧ソ連・ロシアのミコヤン設計局が小型局地戦闘機として開発したMig-29ファルクラムの艦載機型。

 フランカーとファルクラムとの関係は、しばしばアメリカ製のF-15とF-16の関係に例えられる。

 Su-33と同時期に運用試験が行われたが、ロシアはコストパフォーマンスと長距離侵攻性能、兵装の多様性などの観点からSu-33を艦載機として採用した。

 Mig-29Kはインドがロシアから購入した中型ヘリ空母「アドミラル・ゴルシコフ」(満載排水量44500t)に搭載するために採用が決定している。インドは同艦でファルクラムDを運用するために全通甲板化への大改装を04年から施している。


 話を元に戻します。

 中国軍は将来的な空母保有を見越して、空母に関する航空技術の獲得にまい進しています。オーストラリアから空母「メルボルン」をスクラップ目的で購入しそれを9年もかけて解体研究(限定的なリバースエンジニアリング)した中国は、「メルボルン」を基にした地上の模擬空母飛行甲板上でSu-30MKKなどによる空母発着艦を想定した訓練を進めているといわれています。


 中国軍は多くのフランカー運用実績を持ち、世界有数の造船大国でもあるため、空母の保有は時間の問題であるといえます。



 ■中国の空母は脅威足りえるか


 中国が採用を決定したSu-33と改装中の「ヴァリヤーグ」は脅威となるのでしょうか。

 

 Su-33の採用やロシア、フランスに対する熱心な空母購入打診、空母護衛部隊としての運用を念頭に置いたとしか思えない新型艦艇の大規模建造など、中国が強く空母保有を志向しているという事は明らかな事実です。


 よく言われることですが、軍艦1隻を実戦運用状態に置こうとすれば、同型艦が3隻必要となるといわれます。1隻は実戦配備、1隻は休養、1隻は練習・改修という風にです。軍艦が同型3隻単位で建造されるのはこれが理由として挙げられます。


 私は、「ヴァリヤーグ」が実戦運用されたとしても、1隻だけでは練習空母としての運用や示威行動などの限定的な運用にとどめられるのではないかと推測します。


 実戦に使用されるとすれば、南シナ海方面、領土紛争が激しい南沙諸島、西沙諸島付近での遊弋示威行動と、限定的なエアカバーを受けた揚陸戦部隊の実力行使で付近諸島の奪取というシナリオが想定できると思います。実力で中国海空軍に著しく劣る東南アジア諸国を空母戦力と揚陸戦戦力で粉砕し、南シナ海を先ず中国の内海とする目的があるのではないでしょうか。米国の中国語誌「多維月刊」は改装された「ヴァリヤーグ」が海南島に配備されると報じています。同海域の制海権を握れば、同海域にシーレーンが集中する日本に間接的な脅威を与えることが可能です。南シナ海が日米安保、周辺事態の周辺に該当しないため、現段階で日本が軍事力で中国の南シナ海制圧に対抗することは不可能です。



 中国軍のSu-33と空母に日本が単独で対抗することは不可能です。中国が空母保有を現実のものとしたならば、日米安保体制や日本国そのものの安全保障体制に大きな変革が必要とされることでしょう。

 軍事政策は先の10年20年を見越して実施されるものです。日本の政治家が、中国の軍事政策の実像を正しく認識し、日本国が取るべき対抗オプションを叡智を結集して策定してくれることを祈っています。



 【参考HP】


 新聞記事・ニュース批評@ブログ  様

 Chinese Defence Today  様

 週刊オブイェクト  様

 日本周辺国の軍事兵器  様



 【参考文献】



江畑 謙介

中国が空母をもつ日


世界の艦船 2006年 05月号 [雑誌]

 朝日新聞2006年1月13日朝刊国際欄6面 【中国軍に悲願の空母か】 


 ・『元ロシア空母「ワリヤーグ」が中国空母に!?』アンドレイ V.ポルトフ 「世界の艦船」2006年3月号



 

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