第145回・天皇賞の実況回顧 | 舩山陽司アナウンサーの『障害戦で激アナ予想』

第145回・天皇賞の実況回顧

 2012年4月29日(日)に行なわれた第145回・天皇賞(春)の「実況」の回顧です。レースの内容を振り返るものではなく、あくまでも公式実況を担当したアナウンサー個人が、自身の状況を心境を振り返るものです。



 当日は3週間振りの実況担当でした。前回の担当は4月8日の中山。春雷Sで勝ち馬の名前を間違えた日です。正直なところ、今までに無い間違え方をしてしまい、少なからずショックを受けていたので、「実況ミス明けでいきなり天皇賞」は厳しい状況ではありました。

 と言っても、出来ることは体調を整える事と馬名をよく覚える事以外になく、今度間違えたら暫く実況は出来ないだろうと不安を抱えながら当日を迎えました。

 最初の担当レースである7レースはかなり慎重だったと思いますが、それほど淀みなく馬名も言えましたし、まだまだ引退せずに済むと安心しながらレースをこなし、11Rの天皇賞となりました。

 
 本馬場入場は2009年まで使用していた「ザ・チャンピオン」。少し気持ちに余裕も出来ていたので、曲の冒頭部分を長めに聴かせられたり、紹介コメントをスムーズに加えられたり、まずまず普通の状態でこなせました。


 そしてレース本番。ポイントはオルフェーヴルの動き以外にないと言っても過言ではなく、そう言う意味では焦点がハッキリしているので、喋りやすいレースだったと思います。

 それでも、やはり本番では余裕がありませんでした。

 スタート地点の描写をまずまずこなせたのですが、どうしてもウインバリアシオンの名前がすんなり出てこないために、道中でもたついてしまったのが悔やまれます。これは「ウインバリアシオンだから」ではなく、時折、全然覚えられない馬名があったりするものなのです。たまたま天皇賞の時はウインバリアシオンで、京都記念ではすんなり言えたのですから、たまたまそうだったとしか説明できません。ただカンペを見ながら一見スムーズにはこなせたとは思います。

 ただ、そんなもたつきと、余裕が無かった所為で、途中でラップタイムを入れることが出来ませんでした。これが最大の反省点です。前は飛ばしていてもペースはそれほど速くないと思ってはいたのですから、ラップタイムを入れて、ファンにも自分自身にも、その証拠を提示するべきでした。

 2周目向正面で、後続の馬群に動きが無いと喋った時点で、前残りは覚悟しました。4コーナー手前でビートブラックが差をひろげた時は、オルフェーヴルの負けを覚悟しました。ただ、この状況をどうするんだとオルフェーヴルの様子を追い過ぎてしまったのが判断ミスで、オルフェーヴルが「届かない」と私が言ったのは残り200m。それよりも前に届かないと決め付けられた訳で、勇気のない実況になってしまいました。

 ゴールした後も、空気に負けました。ビートブラックを称えるのも、オルフェーヴルが動けなかったことも中途半端にしか触れられませんでした。

 実況アナは、ファンの誰よりも良い場所でレースを見られるので、少しでも早く、少しでも多く情報を提供しなければいけないのに、今回はそれが適いませんでした。ひたすら反省です。

 
 ただ、今は、事故なく終わり、ホッとしています。それに尽きます。


 この文章に対して色々な受け止め方をする方がいると思いますが、申し訳ございませんが、そこはあまり気にしていません。ブログへのコメントには一切返事をしません(それは手間の問題もありますが)。いちいち気にしていたら、人前で喋れなくなってしまいますから。

 
 今週末は東京競馬場で喋ります。38歳ともなれば、若手気分でもいられない年齢ですが、気持ちを新たに頑張りたいと思います。