自立支援法成立後の各報道 | ふくしらぢお dansoundemo

自立支援法成立後の各報道

[しんぶん赤旗 2005年11月10日]
■精神通院の減免範囲広げます:自立支援医療検討会が決める■


 障害者「自立支援」法で新たにもうけられた「自立支援医療制度」の調査検討
会が九日、厚生労働省内で行われました。

 検討会は、「自立支援医療制度」に組み込まれる精神障害者の通院公費医療に
ついて、特別の減免をする「重度かつ継続」の範囲を三疾患(統合失調症、狭義
のそううつ病、難治性てんかん)から拡大し、認知症などの器質性精神障害、ア
ルコール依存症などの精神および行動の障害、てんかん、うつ病も対象とするこ
とを決めました。これ以外の疾患でも、一定の精神治療の経験を持つ医師が判断
すれば、「重度かつ継続」の範囲内となるとしています。

 育成医療・更生医療は、データがそろっていないため、当面は三疾患(腎臓機
能・小腸機能・免疫機能障害)を「重度かつ継続」の範囲とし、制度施行後に範
囲拡大を検討することになりました。

 今回の検討会の結論をふまえ、最終的に厚生労働省が省令で定めます。

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[北海道新聞 2005年11月2日・朝刊]
■≪社説≫障害者自立法:「支援」とは名ばかりだ■


 障害者団体などが抱く懸念を、国会は聞く気がなかったとしか思えない。「自
立を阻害する」と批判されてきた障害者自立支援法がほぼ原案通り成立した。

 前の国会では、衆院解散のため廃案になった。再提出された後も、全国で反対
運動が続けられた。こうした障害者の声を押し切って成立させたことに強い疑問
が残る。

 政府は「決して無理なお願いはしていない」(小泉純一郎首相)と言っている
。そうであれば、今後も障害者の意見をよく聞き、無理な負担があれば、大胆に
見直しをしてほしい。

 二面性のある法律である。障害者は受けるサービス費用の一割を負担すること
になった。軽減措置や上限はあるものの、低所得者ほど負担感が重くなる。現在
は所得によって額が決まり、多くの人が無料で利用している。

 一方で、現在はサービスを受けられない精神障害者にも対象を拡大。地域間の
サービス格差縮小を図り、就業支援策なども盛り込んだ。

 今国会では、野党議員が負担増の問題を追及してきたが、政府側はサービス拡
大などの長所を強調、論議の焦点はぼかされてしまった。

 支援法が導入される理由の一つに、財政事情が挙げられる。現行の「支援費制
度」は利用者が想定より多くなり、国の補助金が二○○四年度で二百七十五億円
の不足となった。

 このため政府は支援法で「利用サービスの量や所得に応じた公平な利用者負担
」を提唱、負担増を求めた。

 だが、障害者の多くは年金で暮らしている。一級だと、月額は八万三千円程度
だ。この場合、負担の上限は二万四千六百円と、年金額の三割近くを占めてしま
う。

 しかも、トイレや入浴、外出など、これなしには生活が成り立たない分野でさ
え、介護が有料になる。「自立支援にはとてもならない」「暮らしていけない」
などと多くの障害者が訴えるのも無理はない。

 「国にお金がないことは知っている。ほかの人が汗水たらして納めた税金を無
駄づかいしようなどとは思ってない。生きるための自由がほしいだけ」。そんな
思いは、政府・与党には遠く届かなかった。

 財政事情は厳しいにせよ、障害があり、所得も低い人たちに重い負担をかける
ことは公正とは言えまい。

 支援法が施行される来年四月からは、負担に応じきれない障害者が、サービス
利用を手控える懸念がある。

 厚生労働省は政省令をつくる際に障害者の意向を取り入れるともに、施行以降
、障害者の暮らしがどう変わったか、無理な負担増が自立を阻害していないかを
よく調査してほしい。問題があった場合は、ただちに制度をあらためるよう、併
せて求めたい。

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[徳島新聞 2005年11月2日・朝刊]
■≪社説≫障害者自立支援法:低所得者に十分な配慮を■


 これで障害者の自立が進むのだろうか。疑問をぬぐえないまま障害者自立支援
法が与党の賛成多数で成立した。

 身体、知的、精神の各障害者施策を一元化し、費用の原則一割負担を求めるの
が柱だが、野党や障害者団体は「負担増が大きい」と反発している。

 障害者施策の大転換といえる法律が多くの反対を押し切る形で成立したのは残
念だ。新たな施策は来年四月から順次、実施されるが、障害者の声に十分耳を傾
けながら進めなければならない。

 最大の焦点は一割負担の導入である。現在は障害者が自らサービスを選択し、
ほとんどの人が無料で利用できるからだ。所得にかかわらず一割負担することに
なれば、障害基礎年金や福祉作業所のわずかな賃金で生計を立てている障害者に
とっては切実な問題である。

 このため同法は負担の上限(月額四万二百円)や減免措置を設けている。ただ
、障害者に生計を共にする家族がいる場合は減免を受けられないケースも出てく
る。家族に頼らざるを得なくなるのでは、自立支援に逆行しかねない。

 法律には評価できる点もある。一元化によって、対象外だった精神障害者もサ
ービスを受けられるようになる。国の財政負担が義務化され、財源も安定化する
。障害の種類や地域によって生じる格差をなくすのは大切なことだ。

 二〇〇三年に導入した現行の支援費制度が財政難に陥ったのは、国が利用者の
予測を誤ったからである。そうしたことが障害者の不信感に拍車を掛けているこ
とを忘れてはならない。

 今後、具体的なサービス利用基準づくりなどが本格化する。国は低所得者に十
分配慮するとともに、支援策の要となる就労支援に全力を挙げるべきだ。

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[公明新聞 2005年11月3日]
■≪主張≫障害者自立支援法が成立公明、利用者負担の減免など尽力■


・3障害の縦割り解消

 障害者の自立した地域生活を支援する障害者自立支援法が10月31日、衆院
本会議で採決され、与党の賛成多数で可決、成立した。

 同法は、どこでも、だれでも必要なサービスを公平に利用できる基盤整備をめ
ざしており、障害者福祉施策をほぼ半世紀ぶりに抜本改革するものだ。

 現行の身体、知的、精神の3障害で縦割り状態にある障害者福祉施策を一元化
することで、支援費制度の対象にすらなっていなかった精神障害者の福祉を他の
障害者と同等に引き上げ、障害福祉サービス全体を底上げする。

 また、都道府県、市町村によって、障害福祉サービスの充実度に大きな格差が
あるという地域間格差の解決にも着手。すべての都道府県、市町村に障害福祉計
画の策定を義務付けるとともに、規制緩和を大胆に実施し、小規模自治体でもサ
ービスを開始できる環境を整備する。

 さらに、安定的な財政基盤の確立に向け、国の財政責任を明確化。従来の、国
は予算の範囲内で市町村に補助できるといった不確かな仕組みを改め、費用の2
分の1は国が責任を持つ。当初予算が不足すれば、補正予算を組んででも確保し
なければならない。

 併せて利用者にも応分の負担をお願いし、より多くの障害者にサービスが行き
渡るよう、増大する費用を皆で支え合う形にする。障害者自らが選択・契約し、
利用したサービスについて、最大1割を限度として負担し、残りを公費、つまり
国民全体で支える。

 しかし、障害福祉サービスと医療に定率1割負担が導入されることを中心に、
障害者から不安の声が上がった。公明党はそうした声を真正面から受け止め、4
月22日、財務省と厚生労働省に対して、利用者負担のきめ細かな減免措置の導
入など障害者の要望を実現するよう強く申し入れた。国会審議の場でも、障害者
が不安に感じている点を一つ一つ取り上げ、問題解決に全力を尽くしてきた。

 その結果、利用者負担については、所得に応じて月額の負担上限を設けること
に加えて、グループホームの利用者や成人の施設入所者に対しては、すぐに活用
できる資産が350万円以下で、月収6・6万円以下の人は定率負担をゼロにす
ることに。新たに食費などが実費負担となる施設入所者には、少なくとも手元に
月2万5000円が残るよう、食費などの負担を減額する。

 通所施設やホームヘルプサービスを利用している在宅生活者に対しては、社会
福祉法人による負担軽減措置を創設し、月額の負担上限を2分の1まで減額する
。そのほか、さまざまな減免措置を組み合わせ、低所得の障害者の負担はほとん
どの事例で、定率ゼロから1割に達しない範囲となった。

 さらに、法案修正により、「就労支援を含めた障害者の所得確保の方策のあり
方」と「法の対象となる障害者の範囲」について、政府に検討を義務付けた。政
府は直ちに検討を開始すべきだ。


・今後の政省令を注視

 同法に基づく制度の具体的な運用は、今後、定められる政省令にゆだねられて
いる。障害者がサービスの利用を制限されるといった事態が生じないよう、公明
党は細部まで注視していく構えだ。

 自立支援法の成立をスタート台に、一人暮らしの最重度の障害者でも安心して
地域で生活できる、そうした日本を築いていきたい。

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[神戸新聞 2005年11月3日・朝刊]
■≪社説≫障害者支援法:自立への具体策がほしい■


 先の通常国会でいったん廃案となった障害者自立支援法案が、今特別国会で再
提出され、成立した。多くの障害者から反対の声が上がっていた内容は変わらず
、その船出は「波高し」といわざるをえない。

 支援法の柱の一つは、身体・知的・精神の三障害で異なっていたサービスの一
本化だ。特にサービスの圏外に置かれていた精神障害者も同じく組み入れられる
ことになり、この再編は歓迎すべきだろう。

 しかし論議の的は、サービスに応じて一割の定率負担が導入されることだった


 二〇〇三年発足の障害者支援費制度は、サービスを選んで受けられるなど使い
勝手がよく、しかも費用は収入に応じての負担で、在宅利用などが急増した。こ
れまでニーズが抑えられてきたことの裏返しとも受け取れるが、国としては補助
金の膨張を懸念して、制度改正に踏み切った。

 支援費制度の収入に応じた「応能負担」は、新法の下では、負担の上限を設け
るなどの措置はあるものの、原則として定率の「応益負担」に大きく転換される


 その仕組みの問題点は、はっきりしている。障害が重くなれば、サービス利用
も多くなり負担がかさむのに、収入などの負担能力は障害が重いほど少なくなる
。受けるサービスのほとんどは障害者の自立にとって必要なものだろう。サービ
スの量で負担を決めること自体に無理がある。

 障害者の大半は、障害基礎年金による数万円の収入に頼っているのが現状だ。
しかも、新制度では、施設や通所サービスでの食費までも実費負担となる。

 民主党は今国会で対案を出した。一割負担は見送り、支援費制度を当面継続す
る一方、〇九年度までに包括的な障害者福祉法を策定するとの内容だったが、参
院の先行審議が終わった後の衆院段階での提出だった。もっと早ければ、政府法
案ともみ合う形で異なる展開があったかもしれない。

 ただ、「自立支援」を掲げた新法の精神そのものは前向きに受け止めたい。障
害者が働ける事業の創設や企業雇用の促進をうたい、一般就労するための支援事
業も、確かに盛り込まれている。

 だが、実効性のある収入増加策など具体策はみえない。その意味で新法は自立
と逆行しかねない“矛盾”をはらむ。障害者が不安を募らせるのもそこに原因が
ある。

 とはいえ、行政批判だけでは前に進まない。政府が働きかけるまでもなく、企
業や社会もいま一歩。障害者の就業促進へ踏み出したい。新法定着には問題点を
見詰め、解決策を積み重ねるしかない。

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[南日本新聞(本社:鹿児島市) 2005年11月3日・朝刊]
■≪社説≫特別国会閉会:数の横暴は許されるか■


 衆院選で自民党の圧勝を受けた第163特別国会が閉会した。42日間の長い
会期に加え、小泉純一郎首相が会期末に内閣改造を断行するという異例の展開だ
った。

 政府提出の24法案のうち郵政民営化関連法案など21本が成立、「共謀罪」
新設を柱にした組織犯罪処罰法改正案など3本が継続審議となった。

 小泉首相が会期を長期にしたのは、先の通常国会で否決された郵政法案の可決
を最優先するためだ。数の横暴と批判されないよう国会運営に気を使ったという
が、強気の姿勢に変わりはない。

 与党の強硬路線に対し、民主党の前原誠司代表は重要法案に対案を出す戦術を
とった。民主案を並行審議することで、審議拒否や強行採決が消えたのは評価で
きるが、結果は首相の狙い通りだ。郵政民営化法は圧倒的多数を占める与党ペー
スで審議が進み、スピード成立した。

 しかし、論議が十分尽くされたかというと疑問が残る。民営化の流れを絶えず
検証する構えを崩してはならない。

 今国会は、郵政民営化にばかり目を奪われて、ほかの重要法案の審議がなおざ
りになったことも見過ごせない。

 最も気がかりなのは、インド洋で米軍などへの給油支援をする海上自衛隊艦船
の活動期限を1年延長するテロ対策特別措置法改正案が可決されたことだ。

 陸上自衛隊のイラク派遣と両輪で進められている海外での自衛隊の米軍支援活
動については、撤退を視野に入れて論議を尽くす時期に来ているはずなのに、反
対の声が強まらないまま、すんなり延長が決まったことに危機感を覚える。

 障害者の福祉サービスの費用を原則1割自己負担する障害者自立支援法も成立
した。国と自治体が財政負担する見返りに、利用者にも負担が義務付けられる。
収入の限られた障害者がはたして負担に耐えられるのか、不安はつきない。

 自立を支援するどころか、逆に負担増を強いることになれば、障害者とその家
族を苦しめることにもなりかねない。国と自治体は障害者の実態をつぶさに把握
して、施策を講じる必要がある。

 巨大与党を率いる小泉首相は靖国神社参拝を実行するなど近隣外交にも強気で
臨み、中国や韓国などの反発を招いている。こうした強硬路線にブレーキをかけ
る気概を民主党など野党には求めたい。

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[信濃毎日新聞(本社:長野市) 2005年11月4日・朝刊]
■≪社説≫障害者支援法:手直しを考えながら■


 障害者自立支援法が特別国会で成立した。身体、知的、精神の障害別に分かれ
ていたサービスを一元化する。利用者は原則1割の負担をする。重い出費だけに
、見直しも視野に入れつつ、柔軟に運用したい。

 新しい自立支援法は、2003年度に施行された支援費制度に代わるもので、
主に4つの特徴がある。

 一つは、障害の種別にかかわりなく、同じ制度に基づいて福祉サービスを利用
できる点だ。支援費制度は、知的、身体障害を対象にしていた。新制度に精神障
害者も含めたことは、一歩前進といえる。

 二つ目は市町村がサービスの窓口となり、全国一律の基準で認定する仕組みを
つくることだ。具体的には、利用者の申請を受けた市町村が、障害の状態により
、サービスの必要度を決める。介護保険と似た考え方といえる。

 これまでの支援費制度は、自由に利用できた半面、地域によってサービスにば
らつきが生じた。一律の基準を導入することで、公平性を確保する狙いである。

 ただ、知的障害や精神障害などの判定には難しさが予想される。障害者の自立
を積極的に後押しする仕組みが欠かせない。

 三つ目の特徴は、在宅サービスに対して、国と自治体の財政負担を義務付けた
ことだ。予算枠を理由に、サービスが打ち切られる不安がなくなったことは評価
できる。

 四つ目に、国の財政負担を義務付けた見返りとして、利用者に原則1割の負担
を設けた。障害が重く、サービスの利用が多い人ほど負担が膨らむ。負担上限額
を月4万200円とし、低所得者には軽減措置を設けたとはいえ、利用者には痛
い。

 障害者にとって雇用や収入の確保は難題である。2005年版の「障害者白書
」によると、身体障害者の常用雇用は約41%、知的障害者は約24%しかない
。精神障害者も含め、障害基礎年金を頼りに暮らす人は多く、1割の負担は大き
い。

 国会論議で最も激しい論議が交わされ、野党が法案そのものに反対した一番の
問題点である。法律が成立した以上、政府や自治体は障害者の就業支援などに、
いっそう取り組む責任がある。

 来年四月から施行される。利用者や市町村の専門スタッフなどが、具体的な運
用を一つ一つ点検していくことが大事になる。実態に即して問題があれば、逐一
手直しをする姿勢を政府には求めたい。