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沖縄タイムス、高知新聞

障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動 http://www.j-il.jp/jil.files/daikoudou/daikoudou_top.htm  のMLより。


ーー以下転載ーー



さて、既報のように
本日「障害者自立支援法案」の本格的な審議が、
衆議院厚生労働委員会においてはじまりました。

このような中、
参議院での同「法案」の採択を受け、
・10/17「沖縄タイムス」
・10/19「高知新聞」
――において、この件に対する、
社説が掲載されているとの報を、
知人よりいただきました。

早速、一読しますと、以前のこのメールでも紹介いたしました、
「読売新聞」の社説との論調とは随分と異なるように感じられ、
国会審議等とあわせて注目されるところです。

以下に、その二紙の社説をご紹介いたします。
一読いただきましたら幸いです。

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[沖縄タイムス 2005年10月17日・朝刊]
■【社説】自立支援法:障害者の不安に応えよ■


 障害者への福祉サービスを一元化し、利用料の原則一割負担を求める「障害者自立支援法案」が、参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決された。

 施行日が来年一月から四月に延期されただけで、先の通常国会で廃案となったものと同じ内容だ。衆院に送付され、今国会で成立する見通しという。

 これにより障害者サービスの仕組みは大きく変わる。

 障害種別に分かれていたサービス体系が一元化されることで、制度の枠外だった精神障害者に手を差し伸べたことは評価したい。

 市町村の在宅サービスに対する国の財政負担を義務化したことも心強い。

 二〇〇三年度に始まった支援費制度は財政難に陥っており、財政が安定しなければ継続したサービスは提供できないからだ。

 しかし一割負担の導入には、障害者やその家族から反対や不安の声が相次いでいる。



 サービス利用の多い重度の障害者ほど負担が増える仕組みで、負担増は障害者の社会参加の流れを後退させかねない。

 所得保障が不十分なままの定率負担には慎重であるべきだ。低所得者には必要な負担軽減策がとられるというが、不安を取り除く内容にはなっていない。

 法案は障害者に対する就労支援も盛り込んでいる。障害者自らが制度を支える仕組みにするには、職業訓練も重要である。

 とはいえ、民間企業において法定雇用率さえ達成できていない状況で、どう実効性をもたせていくのか、課題は山積みだ。

 衆院での審議が始まる。

 障害者が地域で自立した生活を営めるよう支援するための制度が、逆に施設や家族に頼らざるを得ない状況をつくってはならない。

 構造改革の名の下で進む福祉サービスのスリム化に待ったをかけたい。

 必要なのは手厚い支援と温かいまなざしだ。

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[高知新聞 2005年10月19日・朝刊]
■【社説】障害者自立法:福祉はカネの対価か■


 先に参院を通過、衆院に審議の場が移っている障害者自立支援法案は、障害者福祉への理念を大きく変える性質のものだ。

 法案は身体や知的、精神の障害の種類によって分かれていたサービスの提供を一元化し、その上で障害者に1割の自己負担を求めている。また、サービス決定の事実上の権限を市町村に移すことを柱とする。

 必要に応じてサービスを選択する支援費制度に代わって2年半で、また制度の変更だ。在宅サービスの急増で制度維持が難しいため、障害者の就労を促す目的という。しかし、障害者団体の多くが目的とは逆の結果になると指摘し、法案に反対だ。

 高知県内のある小規模の福祉事業所では、ティッシュや野菜を束にまとめるなどの軽作業で週5日間働いて月1万円ほどの賃金にしかならない。現在も事業所で働く「費用」として1万円を超えて支払っている障害者がいるが、法案が成立するとサービスの対価として最大で4万円以上払う人も出てくるという。

 これでは働く意欲はわかないのではないか。4万円超のサービスを切り詰められればよいが、障害者に我慢を強いることが福祉とはとても言えない。

 生活保護世帯の障害者は負担なしとしているように、低所得世帯に優遇措置は設けている。だが、それも障害者本人の所得で決定するのではなくて、障害者の家庭の収入が基準だ。優遇措置を受けられない障害者も多いだろう。

 能力に応じた負担をという「応能」から、対価を支払う「応益」の発想へ徹底して転換を求めている。カネを払えばそれに相当する福祉サービスを提供するというわけだ。

 だが、障害者が障害を感じずに暮らせるためになされる福祉の理念とは別物だ。福祉がカネの対価でよいのだろうか。そこには、社会保障費の削減の狙いしか感じられない。

 事業所の賃金が日払い方式に変わるため障害者が厳選した揚げ句、事業所が閉鎖に追い込まれることもあるだろう。地方の小さな施設ではその恐れがある。障害者はまた社会から閉ざされ、在宅するほかない。サービスの決定権が市町村に移るについても、市町村は扱いが慣れないことであり障害者の不安は大きい。

 福祉の現場の状況からは障害者が社会に出て行けるのか疑問に思える。民主党は自己負担を凍結とする対案を提出し、他の野党は法案に反対だ。成立を急ぐべきではない。

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≪再掲≫ [読売新聞 2005年10月13日・朝刊]
■【社説】障害者支援法:保護から自立への大きな転換だ■


 成立すれば、保護から自立へ、障害者施策の大きな転換となる。郵政解散で廃案となり、特別国会に再提出された「障害者自立支援法案」である。

 これまでは、障害者を施設や親元で保護することに重点が置かれてきた。障害の種類によって福祉サービスは異なり、就業支援も不十分だった。

 法案は、障害者が自立できるよう支援するための制度を整え、必要な財政基盤の強化を図ろうとしている。今国会で成立させるべきだ。

 主要な柱は三つある。第一に、身体、知的、精神の各障害によって分かれている施策や制度を一本化する。第二に、就業支援として職業訓練や創作活動の事業を促進し、空き店舗や空き教室などを活用できるよう規制緩和する。

 第三に、障害者が利用する福祉サービスについて、国の財政負担を義務付けた上で、介護保険と同様に原則1割の自己負担を求める。

 制度の一本化と就業支援には、ほとんど異論がない。だが、福祉サービスの1割負担導入には、野党や一部の障害者団体が反対している。

 障害者福祉では一昨年から、必要なサービスを自分で選ぶ「支援費制度」ができた。国と自治体が年間7000億円の税金を投じているが、利用が多く、財源不足が生じてしまった。

 新法が成立すると、国はサービスの利用の伸びに応じて、支出を増やす義務を負う。障害者が一定の自己負担を引き受けることは、この点について広く理解を得ることにもつながるだろう。

 もちろん、1割負担といっても上限を設け、収入の少ない大多数の障害者には減免措置がとられる。ただ、厚生労働省が「低所得者にきめ細かく配慮した」という減免の仕組みがかなり複雑で、障害者の不安を増幅させている。厚労省は十分に説明する必要があろう。

 民主党は対案の概要だけを示した。国の財政負担を義務づけるが自己負担の導入は見送る、という内容だ。しかし、政府案は参院先議で委員会採決の段階を迎えようとしているのに、正式な民主案はいまだに提出されない。前原代表が「重要法案にはすべて対案を出す」としているのに、この姿勢は極めて疑問だ。

 民主党は、介護保険制度を若年層に拡大して、障害者支援にも活用するよう主張している。介護保険との整合性を図るためにも、1割負担を導入することは不可欠ではないか。

 障害者自身も出来る限り、福祉制度の支え手となってほしい。そのための議論を深めることが、国会の責任である。