鼻血の対処法のいろいろ | 福岡ER ~日々奮闘中!~

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あなたは鼻血が出たとき、どうやって止めていますか?

とりあえずはティッシュを丸めて鼻に入れるという対応で良いと思います。



問題はそこから始まります。

鼻血で救急要請する人は・・・


血圧が180にもなっている!大変なことになっているのではないか?」


「洗面器が真っ赤に染まるくらい大量に出血した!このまま死んでしまうのではないか!?




ほとんどの方が上記のようなことを心配して救急車を呼ばれます。



鼻出血の方に限らず
もし上の血圧が200mmHgであっても
内臓の症状がでていなければ緊急で血圧を下げたりすることは推奨されていません。
Should a moratorium be placed on sublingual nifedipine capsules given for hypertensive emergencies and pseudoemergencies?


来院時に血圧200の人も、安静にしていたら160程度まで下がることはよくあります。

逆に不安が血圧を上げる要因にもなりますので、まずは気持ちを落ち着かせることがとても重要です。




普通のティッシュで止まらなくても
ほとんどの鼻出血が、青い丸の部位を手で押さえれば止まります。






どうやって手で押さえるかというと、こんな風にします。
血液を飲み込むと吐き気が出てくるので、口からお盆に出すようにしましょう。

UpToDate "Approach to the adult with epistaxis(成人の鼻出血への対応)"より

これでほとんどの鼻出血は止まります。

これで止まるような鼻出血であれば、命にかかわるような出血量ではないと考えてもらってもいいと思います。
(もちろんごく少数の例外はありえます)





15分ほどこの方法を試してそれでも止まらない場合には・・・

薬や軟膏のついたガーゼを、どんどん鼻に押し込みます。


この処置はかなり痛いですが、我々もよく行っています。






そこで、約8倍に膨らむスポンジを挿入する器具も使っています。

「ライノロケット」 カタログ


こちらの方が痛くなさそうな印象があります。

ただし、これで止まるとは限りません。





アメリカにはスプレーするだけで止血できる薬が売られています。
ある文献によると、ERの鼻出血の65%が止血できるとのことです。

これは痛くなさそうですね。


調べてみると
日本でもナシビンという名前で市販されていました!!

鼻出血になりやすい人は、こっそり持っておいても良いのかもしれません。
(ただし、日本ではあくまでも鼻炎や鼻づまりに対するお薬です。)






これらは主に、鼻の前の方から血が出てきた場合の対処法です。
鼻出血の多くは前方からの出血です。
痛みを我慢すれば、結局はほとんどが止まります。
問題は後ろの方から出ている場合です。
うまく圧迫できないので止血ができないことがあるのです。



このような緊急事態で一時的にでも止血する場合、
耳鼻科の先生はべロックタンポンなどというガーゼを使用していますが、一般医にとっては少し難しい処置になります。



救急医が奥の手として使うのは、尿道バルーンです。
尿道に入れる管を鼻に入れます!!まさかの方法です。



これで後ろにタレこむ血液を止める事ができます。
実際には、さらに前方にガーゼなどを詰め込む必要があります。


このような専用のバルーンも市販されています。
我々は、食道静脈瘤に使うSBチューブというチューブで代用することもあります。これもまさかの治療法です。

東海大学の先生方の論文によると、SBチューブを鼻腔内に入れた後に、食道用バルーンの圧を40~45mmHgとすると良いようです。
咽 頭 癌 に よ る 鼻 腔 ・咽 頭 か ら の 大 量 出 血 に 対 し て Sengastaken-Blakemore tubeに よ る 止 血 の1例


最終的には耳鼻科医にお願いして出血源を焼いてもらったり、

レントゲンを使いながら
血管の中から治療するという方法がありますが、それについては、長くなりましたのでまたの機会にアップします。