西洋薬と漢方薬の違い | 富士堂(漢方薬局・はり灸マッサージ治療院) ブログ

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中国南京中医薬大学出身の中医師・順天堂大学医学博士である代表の許志泉が創立した富士堂東洋医学研究所(富士堂漢方薬局飯田橋本店・渋谷店;富士堂針灸マッサージ治療院)のブログです。

西洋薬と漢方薬の違い
  薬剤師 松本

**このレポートは富士堂漢方薬局で研修する薬剤師が研修会でまとめたものです。

〈1 体の考え方〉
 ・西洋医学では人体は数々の臓器の集合体と考え肉体と精神をまったく別のものとしてとらえます。例えば胃の痛みは胃の痛みという症状としてのみとらえ、その背景のストレスや不安についてまで考慮しないのが基本です。

 ・中医学では人間をひとつの統一体ととらえ、各パーツは相互に作用しあっていると考え病気は体内のバランスの乱れによって起こると考えます。

〈2 薬の選択の仕方〉
 ・西洋薬は症状緩和のための薬になります。頭痛には痛み止め、咳には咳止めと病名を決めて薬を選びます。そのため同じ病名の人には同じ薬が用いられることが多くなります。
西洋医学では薬で治すのはひとつひとつの症状です。

 ・中医学では患者の体質や症状を判断して薬を決めます。患者の体質や病気の状態のことを「証」といい、証をたてるための診察には「望診、聞診、問診、切診」の4つの方法がありこれを「四診」といいます。
   望診:目で見て観察する。(肌の色、舌の状態)
   聞診:耳と鼻で観察する。(声、口臭)
   問診:これまでの経過や自覚症状などの聞き取り。
   切診:触診(脈やおなか)  
  
  例えば頭痛でも、その頭痛を引き起こした原因によって漢方薬は違ってきます。そのため同じ病名でも違う処方を用いたり(同病異治)、反対に同じ処方でも違う病気に用いられることもあります。(異病同治) 
  また漢方独特の治療方法に「標本同治」という考え方があります。「標治」とはいわゆる対症療法、病気の表面的な治療で、「本治」とは病気の本質を治すこと。これを同時に行うことを「標本同治」といいます。例えば風邪をひいた場合、西洋医学では一般的に標治を行います。そうすると治ったと思って薬をやめるとまた症状が悪化するということがあります。しかし漢方治療では標本同治を行い、対症療法と同時に病気を引き起こした患者の本質も治療することができるのです。
  更に漢方薬ならではの治療に「未病」を治すということがあります。なんとなく体調が悪いという「未病」の段階からの治療は西洋薬ではほとんどできません。



〈3 効きめの強さ〉
 ・ 西洋薬の症状を短期間で緩和する働きは、漢方薬に比べて一般的に作用が強い。効きめが強く出すぎて副作用が現れることもあります。

 ・漢方の生薬は「上品」「中品」「下品」の三つのタイプに分かれます。
 「上品」というのは体質を強化するなどの効果があり、副作用は全くありません。毎日摂取することができ、「命を養う」。「中品」は少量か短期間なら副作用がなく毎日摂取でき、穏やかな作用で「精を養う」。「下品」は病気治療作用が強いものの、しばしば副作用を伴います。
 この分類でいくと西洋薬は中品か下品となると考えられます。 


〈考察〉
西洋薬と漢方薬の違いをまとめてみますと、漢方薬は病気ではなく病人を癒し、治療するものであると感じました。
また、私自身漢方を服用した際、お湯の溶かした漢方の香りを嗅ぐだけで症状が緩和した覚えがあります。香りで症状が緩和するというのは漢方薬ならではでないかと思います。


【研修中出てきた用語】

・黄膩(おうじ)・・・舌苔が黄色くベタベタ(脂っぽく)なっている
・胖大(はんだい)・・舌が大きく厚ぼったい
・安神薬(あんじんやく)・・不眠やイライラなど精神の安寧に使われる
・無形のたん、有形のたん・・・「湿が集まって水となり、水が集まって痰となる」という考えがあり、体内に停滞する湿気や水分はいずれは痰となって新しい病症を引き起こすといわれている。「有形の痰」には気管支喘息や一時的な咳などで喀出して実際目で見ることのできる痰が含まれ、「無形の痰」は例えば乗り物に酔いやすい・原因不明のめまい・頭痛頭重・吐き気・息切れ・動悸・精神異常などの病症は無形に痰によるものと考えられる。