真正譲渡(その1) | 不動産法務コンサルタントへの道

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こんにちは。不動産法務コンサルタントの中沢です。


今日は、不動産の証券化に関連する重要な概念の一つである真正譲渡( True Sale )についてご説明させて頂こうと思います。


A社が保有している不動産について、B社へ所有権を移転し、B社がA社にお金を支払ったというケースを考えます。


このようなケースは「売買」であることが一般的です。


ところが、実はA社はB社からお金を借りただけで、お金を返したら不動産を戻してもらう約束をしているというケースもあります。


つまり、A社からB社への不動産の所有権移転は「担保設定」ということであり、このような取引を「譲渡担保」と言います。



A社からB社へ不動産の所有権を移転した後、A社について会社更生手続きが開始されたらどうなるでしょうか。


A社からB社への所有権移転が「売買」だとすれば、原則的には何の影響もありません。


しかし、A社からB社への所有権移転は「担保」取引だということになると、B社は更生担保権者という立場におかれ、更生計画によって権利内容が変更される可能性が生じます。


仮に、B社からA社へ100億円が支払われていたとします。


売買ではなく担保設定だと評価されるということは、その100億円は売買代金ではなく、貸付金であるという扱いになります。


あくまでも担保として不動産の名義人になっていることになるので、勝手に処分することができず、更生計画に従った弁済(長期分割払いとなることもあります。)を受け、完済のおりには所有権をA社へ戻す必要が生じます。


不動産証券化のケースでは、上記のB社がSPCということになるわけですが、A社(オリジネーターと呼びます。)からの資産の取得が「売買」ではなく「担保」とみなされてしまうことは、とても甚大な影響を被ってしまうことになります。


このため、オリジネーターからの資産取得行為が真正譲渡( True Sale )であるかということが、不動産証券化において欠かすことのできない前提条件とされているのです。


この続きは次回に。