これは、大体10年前からの記録(汗)であり、霧原菜穂の記憶です。
オンライン物書きを自称する割に、読み物として面白い日記というわけではありませんが……小説を含めて更新していこうと思っていますので、どうぞどうぞ、時間の許す限り、肩の力を抜いて、お楽しみくださいませ。


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2016-05-18

【悠樹編・只今ラブコメ勉強中①】Resisters Quartet【43.5】

テーマ:創作物語
キャラクターや世界観を再利用・再構築して、戦隊ものっぽい物語を書きたくなったらしい。
普段は2回で1話ですが、ここからしばらくは1話完結の外伝です。本編では中々フォロー出来ない各キャラの日常や裏話をお届け出来ればと思っています。
ブログへの小説更新って実はちょっぴり否定的だったのですけど、これなら続けられる……と、いいなぁ。
コメント等、お待ちしております。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 俺――奥村悠樹と最近何かと行動をともにしている彼女は、やはり、よく分からないことが多すぎる。

「――踊れ・颯!!」
 彼女――樋口香澄の声と共に振り下ろされた刃・『颯』は、一陣の風を生み出して……射程距離内にいた『堕落者』を粉砕し、消える。
 その風の余波が近くにいた俺のところにも届き、パーカーのフードと髪の毛を巻き上げていく。
 ……もう少し、周囲との距離感を考えて攻撃をして欲しいものだ。
 久那市の郊外にある運動公園、その裏山に整備されたサブグラウンドが、今日の戦闘場所に選ばれていた。遊具があるのはメイングラウンドの方なので、普段はあまりここまでこないけれど……木々に囲まれてぽっかり開けたこの場所は、雛菊さんの『境界』がなくても、周囲から取り残されたような空間だった。
 彼女が仕留めたのが、本日最後の獲物だった。空間上に味方しか残っていないことを全員が確認し、それぞれに持っていた剣を虚空へ放り投げる。
 時刻は午後4時を過ぎたところ。今日は曇り空なので、普段はジリジリ照りつける太陽の光も届かない。というか、今にも雨が降りそうな色の雲だ……空気もジメッとした湿気を多く含んで汗を誘発するので、早く帰りたい。
 俺の剣・『焔』が消えたことを確認すると、少し離れた場所にいた仲間――有坂椎葉が、意気揚々とした足取りで合流する。
 アウトドアブランドの半袖Tシャツに膝丈のカーゴパンツ、足元はハイカットスニーカーで、動きやすさを重視した服装だ。無地の半袖ポロシャツの上からパーカーを羽織り、下は紺のジーパンという俺とは対照的というか、彼の金髪という髪の色とも相まって、言い方は悪いけれど遊んでいるように見える。まぁ、実際間違いでもないだろう、多分きっと。
 改めてこうして見ると……こういう縁がなければ、絶対に自分から話しかけないタイプだ。
「いやー、終わった終わった。しっかし、俺達も大分慣れて早くなったんじゃね? 絢芽ちゃんがいないのが勿体無いぜ……」
 そう、本来ならば4人で討伐するはずだった今回の『堕落者』だが、このチームのエースでもある東原は、本日諸用で参加できず。急遽3人で5体を仕留める、ということになったのだ。まぁ、何の問題もなく15分で終わったけれど。
「椎葉ー、そっちも終わったんだよね?」
 樋口が俺達の方へ駆け寄ってきて、互いの顔を見合わせる。
「香澄ちゃんお疲れ、俺達の方は終わってるぜ」
「あたしも何とかなったよ……それにしても、夕方前に終わるなんて珍しいね。まぁ、その分夜はゆっくりできるからいいんだけどさ」
「うわー、香澄ちゃんはゆっくり出来ていいねぇ……俺はもうちょっと動き回んなきゃダメなんっすよ……」
「それ、『灰猫』としてってこと? 最近忙しいねぇ……大丈夫?」
「ま、若いから大丈夫。それに、ボチボチ終わりが見えてきたから椎葉君は頑張っちゃうぜー」
 そう言って笑う有坂につられた樋口が笑顔を見せると、どこからともなく雛菊さんが現れ、コチラへ近づいてくる。
 真夏だというのにビシっとした和服に身を包み、その顔は涼しけ、汗の一滴だって見当たらない……いや、確かに俺達とは体の構造そのものが違うのかもしれないけど……信じられない。
「皆さん、お疲れ様でした。迅速に対応していただいて助かりました」
「おうよ雛ちゃん、これくらい楽勝だぜ」
「椎葉さんは心強いですね。では……『境界』を解除しますので、目を閉じていただけますか?」
 その言葉に従って、3人共目を閉じる。
 そして、体に違和感を感じたら……全てが元通り、今日の御役目も無事終了だ。

 ……そう、思っていたのだが。

「あれ、奥村先輩……自転車じゃないんですか?」
 サブグラウンドの脇に自転車を止めているという樋口と有坂とは反対方向へ――メイングラウンドの方へ向かおうとする俺の背中を、樋口が呼び止める。
 俺は振り向いて、その理由を説明した。
「いつもの感覚で、メインの方の駐輪場に止めたんだ。だから、俺のことは気にせずに行ってくれ」
「分かりました。気をつけてくださいねー」
 そう言って手を振る樋口と有坂に改めて背を向け、俺は自分の自転車の元ヘと再び歩き始めた。

 ……の、だが。

 異変は突然だった。数歩先に進んだところで、まるで足に根っこがはえているかのごとく動かなくなってしまう。
「あ、あれ……? 俺、何をして……」
 右足も動かなければ、左足も持ち上げられない。上半身は自由に動かせるが、下半身が自分の意思ではびくともしなくなってしまった。
 そして……異常は連鎖する。
「あ、あれっ!? 足……足が動かない!?」
 俺と同じ現象が、すぐ後ろにいる樋口でも発生しているらしく……隣りにいる有坂が訝しげな表情で彼女を見つめている。どうやら、彼は自由に動けるらしい。
「香澄ちゃん、俺で遊んでる?」
「いやいや違うから!! 試しに引っ張ってみてよ!!」
 そう言って自分の両手を前に突き出す樋口。彼女の前に立った有坂がその手を握り、思いっきり自分の方へ引き寄せて――
「――ぐぬっ!?」
 すぐにその異変を感じ取り、彼女を引っ張ることを諦めた。
 そして、直立不動の俺を手招きする。
「おーい悠樹、ちょっと手伝ってくれよ」
「いや、俺も手伝いたいのは山々なんだがな……」
「お、おいおいマジかよ……自由に動けるの俺だけ!?」
 動けなくなってしまった俺と樋口の距離は、2~3メートルくらいだろうか。俺達の間を行ったり来たりして焦る有坂が、いなくなった雛菊さんを大声で呼んだ。
「ちょっ……雛ちゃん、雛ちゃーん!! 緊急事態だからもう一回出てきてくれーっ!!」
「……何ですか騒々しい。私、帰ってテレビ見たいんですけど」
 すぐにその場へ戻って来た雛菊さんは、不機嫌な顔で俺達を見やり……。
「あら……お二人とも、随分ガッチリ絡まってますねぇ……」
 しみじみと呟く。
 代表して樋口が手を上げ、雛菊さんに説明を求めた。
「か、絡まる? 雛菊、何を言ってるの?」
「あら、皆さんには見えませんか? 香澄さんと悠樹さんの……そうですね、互いが発する気力とでも言いましょうか……とにかく、目に見えないものが空中で絡まっているんですよ」
「へ? あたしと先輩の……気力?」
「そうです。香澄さん、悠樹さんに自分の攻撃を当てたりしませんでしたか? 恐らく悠樹さん側が『風』の力に過敏に反応して……要するに風に煽られた『炎』が応酬して、空中で絡まっちゃったんです」
 そう言って、雛菊さんは俺達の頭上を指差しているが……当然、何も見えない。
 互いに無表情で目を合わせた後、樋口が焦りを追加して雛菊さんを問い詰めた。
「こ、コレ、何とか出来ないの!? あたし達動けないんだけど!?」
「なるほど、今のお二人は一定距離以上は離れられなくなってしまっていますね。試しにお互い近づいてみてください」
 雛菊さんの言い分に従って、俺達は互いに一歩後ずさりして……距離を近づける。
 先程まで頑なに動かなかった足は、何事もなかったかのようにすんなり動かすことが出来た。
「本当だ……ねぇ雛菊、コレ、何とかならないの?」
 そう言って、樋口が自分の頭上を指差す。
 困り顔の俺達を交互に見つめる雛菊さんは、これまた困った顔で頬に手をあてた。
「そうですねぇ……『縁故』の方でもいらっしゃればすぐに解決するんですけど……作品違いますからね」
「あの雛菊、何言ってるの?」
「独り言ですので気にしないでください。うーん……これは私が無理やり断ち切ることも出来なくはない、ですが……」
「で、ですが……?」
「ただでさえ力が拮抗して緊張状態のところに、私が無理やり干渉すると……ばーんってなっちゃいますよ。木っ端微塵ってやつです」
「そ、それはダメ!! じゃあ、あたし達はずっとこのままなの!?」
「いえいえ、恐らく……この程度ならば24時間後くらいには自然と消えていると思います。それまで多少体に変化があるかもしれませんが、基本的には大人しくしていただければ大丈夫ですよ」
「問題しかないんですけど!? あた……あたし達、家に帰れないじゃない!!」
「いえいえ、お二人は一定距離近くにいればいいのですから、今日はどちらかのお家で一晩やり過ごしていただければ大丈夫ですよ」
「全然大丈夫じゃないんですけど!? 第一、学年も性別も違うんだから、そう簡単に相手の家に泊まれるわけないでしょう!?」
「あら、今日は香澄さん、家で私と2人ですよね。好都合じゃないですか」
「そ、そりゃあそうだけど……って違う!! そうじゃなくてね!!」
 1人で怒り焦る樋口を横目にため息をついていると……有坂が俺をジト目で見ていることに気付いた。
「……何だよ有坂、言いたいことがありそうだな」
「いーやべっつにー、香澄ちゃんの家でお泊り会なんて、随分楽しそうだなーと思って」
 この状況を楽しめるのは、第三者以外にありえない。
 無責任な発言に、俺は顔をしかめた。
「お前なぁ……当事者になって考えてみろよ、制限だらけで割と面倒だぞ」
 今後を考えて再びため息をついてしまう、そんな俺に、有坂は目を見開いて力説する。
「いいや、考え方次第では天国だろこの状況!! この距離じゃないとダメってことは、食事も風呂も寝るのも一緒だろう!?」

 ……。

 ……何だと?
 
「……有坂、その発想を俺に理解させたお前を一度殴らせろ」
 俺が真顔で拳を握りしめてにじり寄ると、慌てて距離を取る有坂。
 案の定、数歩進んだ所で……樋口が立ち止まっているため、俺の足が動かなくなる。
 ……ほら、早速制限がかかったじゃないか……。
 行き場のない拳をブンブン動かして威嚇する俺に、有坂は勝ち誇った顔でこう言い放った。
「ここが年貢の納め時だな、悠樹!! 妙齢の男女が一つ屋根の下で何も起こらないわけがないのだよ!!」
 後ろの樋口は雛菊さんへの抗議で、有坂の言葉まで聞こえていない。その状況に内心安堵しつつ……俺は、奴をジト目で見つめた。
「俺と樋口に限って何もない。あるとすれば……宿題で徹夜する可能性くらいだ」
「い、今から宿題で徹夜すんのかよ……ま、まぁ、それはさておきだ!! 俺は気が利くから押しかけないでいてやんよ!! でも、何があったかは根掘り葉掘り聞くからな!! 覚悟しておけよ!!」
 ここでようやく有坂の大声に気づいた樋口が、何事かと振り返った。
「椎葉……どうしたの? なんか楽しそうでムカつくんだけど……」
「ううん、何でもないよ香澄ちゃん。んで雛ちゃん、この2人、どーすんの?」
「そうですね……経過観察もしたいので、悠樹さん、申し訳ないですが、今晩は香澄さんの家に泊まっていただけませんか? 辻褄合わせは私が責任をもって行いますから」
 雛菊さんにこう言われた俺は……不承不承、了解するしかなかった。

 そこから約1時間後、一旦俺の家で必要な荷物をまとめて、樋口の家へ向かう。
 自転車でも離れる距離に制限があり、特に信号では気を遣った……同じペースで並走することの難しさを思い知った1時間だった。
 そして……午後5時過ぎ、まだ外は明るい時間帯で、空気もじっとり蒸し暑い。雨が降らなかっただけマシなのだろう。
 樋口の家は一戸建てで、車庫に車は見当たらない。その一角、屋根があるところに自転車を止めて、彼女に従い、家の中へ。
「お邪魔します……」
 ここへ来るのは初めてではないが、泊めてもらうのは初めてのことだ。着替えや洗面道具、勉強道具の入ったドラムバックを持って、とりあえずリビングへ向かう。
 先に入った樋口がエアコンのスイッチを入れ、テレビの前にあるソファを指差した。
「とりあえずその辺に座っててください。麦茶でいいですか?」
「ああ」
 そう言ってキッチンへ向かおうとした足が……止まる。
 ……あぁそうか、たった数メートル、この距離も離れられないのか。
 俺はカバンを床において立ち上がり、彼女に近づいた。
「慣れるまで厄介だな」
「そうですね……あー焦った……」
 苦笑いの樋口と連れ立って冷蔵庫の前に立ち、2人で麦茶を飲む。
「そういえば……雛菊さんはどこへ行ったんだ?」
 あの場で別れたはずの雛菊さんは、まだ、家の中で姿を見ていない。
 純粋な疑問で首を傾げる俺に、どこか冷めた目の樋口がボソリと呟く。
「さぁ……でも多分、6時15分からのニュースまでには帰ってくると思いますよ」
「そうなのか?」
「はい。地域ニュース担当の男子アナウンサーがお気に入りみたいですから」
 呆れ顔で呟く樋口は、コップの中のお茶を飲み干して……上目遣いで(身長差があるからしょうがない)こちらを見つめた。
「そういえば、夕ご飯は何がいいですか? 候補は冷やし中華かハヤシライス、角煮は……時間が足りないから、親子丼かなぁ……」
 俺にメニュー候補を告げながら、冷蔵庫を見やる。
 料理が得意な彼女には、これまでに何度も助けられてきた。
 最近はそれが当たり前で感謝を忘れていた自分に呆れつつ、俺は彼女の質問に答える。
「俺は何でもいいよ。使いきったほうがいい食材があるなら、それを優先してくれ」
「了解です。じゃあ、トマト食べたいし簡単だから冷やし中華で!!」
 そう言って笑顔を向けてくれる樋口に、俺は足を向けて眠れないのであった。

 その後……6時過ぎに帰ってきた雛菊さんも合流して食事を済ませ、時刻は気付けば7時30分を過ぎたところ。
「お2人とも、お風呂あきましたけど……どうしますか?」
 完全に風呂あがりの雛菊さんがリビングに顔を出す。
 食器を片付けて、ダイニングテーブルの椅子からテレビを見ていた樋口が、同じく正面で椅子に座っている俺に目線を向けた。
「じゃあ、先輩先に入っちゃってください。あたし、最後に風呂掃除したいので」
「分かった。じゃあ、お先に」
 そう言って立ち上がった俺が、テレビの近くに置いた荷物を取ろうと足を踏み出して……当然のように一定距離から先へ進めなくなる。
「あ、そうだった」
 気づいた樋口が立ち上がり、俺に近づいた。
「スイマセン奥村先輩、忘れてました」
「いや、いいんだが……だよな、そうなるよな……」
「へ?」
「いや、だからその……風呂に入るとなると、樋口に付いてきてもらわないといけなくなるわけで……」
「あ、そりゃそうですよねー……って……!?」
 ようやく気付いた樋口が顔を赤くして、ソファでくつろいでいる雛菊さんを睨んだ。
「ちょっと雛菊!? 呑気にしてないで対策考えてよ!!」
「対策? 何のことですか?」
「だっ、だから……!! このままだと一緒に入らなきゃいけなくなるっていうか……!!」
「あら、良かったですね香澄さん。浴槽だけじゃなくてタイル掃除も出来ますよ」
「そういうことじゃない!! ど、どうしよう……でも、こんなに汗かいてお風呂入らないのもなんかイヤだし……」
 そう言って、彼女がすがるような目で俺を見つめた。
 ……正直、俺だって何も考えていないわけではない。覚悟しているし、ある程度の作戦は、既に脳内で完成している。
 俺は真顔で樋口を見つめ、口に溜まった唾を飲み込んで……こう、言った。
「一緒にいく、それしかないだろう?」

 とりあえず2階に付き添い、彼女の着替えも持って……再び1階、樋口家の脱衣所である。
 洗濯機と洗面台がある一般的な脱衣所は、白を貴重とした清潔感がある。そして、すりガラスの引き戸の向こうが……問題の浴室だ。
「お、奥村先輩……どうするつもりですか?」
「とりあえず、どれくらい離れられるのか確認しておきたい。樋口は動かないでくれ」
 彼女に洗濯機の前から動かないよう指示を出した俺は、荷物を床において、引き戸を開く。
 そしてそのまま浴室内に足を踏み入れて……4歩ほど歩いたところ、浴槽の手前で、足が動かなくなった。
「なるほど……体は洗えそうだが、浴槽につかるのは無理そうだな」
「も、もう少し近づきますか? こっちはまだいけますよ!!」
「頼む」
 樋口が引き戸ギリギリまで近づいてくれたため、更に数歩前に進む余裕が出来る。これなら大丈夫そうだし……最悪、シャワーですませてもいい。
 彼女のところへ戻った俺は、濡れた靴下を脱いで、安堵の息をついた。
「とりあえず……この距離を保てば何とかいけそうだ」
「分かりました。じゃあ奥村先輩、ちゃちゃっと入っちゃってください!!」
 そう言われたので、俺はとりあえず着ていたパーカーを脱ぎ、ポロシャツのボタンを外して……。
「ってちょっと待って下さい先輩!! な、ななななんで脱ぐんですか!?」
「風呂入るんだから脱ぐだろうが……」
「はっ!? そ、それは確かにその通りだ……すすスイマセン後ろ向いてますからっ!!」
 そう言って後ろを向き、少し距離を取る樋口。
 脱衣所の隅、体操座りで縮こまる彼女の背中を見つめながら……次は立場が逆になるのかと思うと、早くも憂鬱な気分になるのであった……。

 そして……約30分後。
 俺と交代した樋口が、今、風呂に入っている。
 俺は引き戸に背中をあずけて腰を下ろし、持ってきた世界史の参考書を読み進めていた。
 この時期はドライヤーを使わず、タオルで拭いて乾かしているので、頭にフェイスタオルをのせたまま……ページをめくる。
 背後から聞こえるのは当然だが水音だ。しかし、洗い終わったのか……お湯にザプンと何かが沈む音が聞こえ、静かになる。
 ……落ち着かない。参考書のページはもはやめくるだけ、全く頭に入ってこない。
 風呂あがりは頭もスッキリしていることが多いのだが……今日は例外のようだ。でも、何もしないわけにもいかないし、携帯電話はリビングに置いてきてしまったため、今は手元の本のページをめくるだけの簡単なタスクをこなすしかない。視線を動かせば彼女の着替えなどが目に入りそうで、何となくそれを見るのはいけない気がして……結果、手元の本に視線を落とすしかないのである。

 もしも今の俺の立場が有坂だったら、こういう場面でも扉越しに会話をしたりして、円滑にコミュニケーションを取れるのだろうか。
 不意にそんなことを考えて……何だが不愉快な気分になった。
 
 そうこうしているうちに、ザバンと大きな水音が聞こえてきた。そろそろ上がってくるのかと身構え、とりあえず本を閉じていつでも動けるように腰を浮かせる。
 とりあえず着替えだ、樋口の着替えさえ終われば……!!
 背中で扉が開く。湯気と石けんの香りが脱衣所に押し寄せて、そして――

「――うわ奥村せんぱひにゃっ!?」
「っ!?」

 逃げられない距離から降ってきた非常に重たいものが、中腰になっていた俺を持っていた参考書ごと床に押し潰した。
 パジャマ代わりのTシャツにジワリと水分が染みこんでいく嫌な感覚と、それとは別の、暖かくて柔らかい何かが俺を全力で潰そうと背中にのしかかっている。
 ……鼻が潰されて地味に痛い……。
 樋口が思いっきり前のめりで俺に倒れていることに気付いたのは、鼻に特大の痛みを感じた数秒後のことだった。
「うわわっ!? お、奥村先輩大丈夫ですか!?」
「あ、あのなぁ、大丈夫なわけが……」
「うわーっ!! まだ起きないで振り向かないでちょっと待って!!」
 刹那、俺の視界がぼんやり暗くなる。どうやら頭に湿ったバスタオルが放り投げられたらしい。
「はっ!? 自分のバスタオルを投げてしまった……!! ど、どうしよう……えぇっと……あぁもうフェイスタオルでいいや!! 奥村先輩、そのまま動かないでくださいね!!」
「……」
 ……もう、どうでもいいや。
 かくして、彼女の身支度が整うまでの約5分間、俺は頭にバスタオルを被ったまま、床に転がっていたのだった。

「……先程は大変失礼をいたしました……」
 10分後、身支度を整えた樋口とリビングまで移動し、ダイニングテーブルに横並びで腰を下ろして……彼女が神妙な面持ちと低姿勢で、俺にスススと缶コーラを差し出す。
 俺はコーラをチラリと横目で確認して、これみよがしなため息をついた。
「……さっきはどうしてああなったんだ? のぼせたのか?」
「い、いえ、ドアを開けたら先輩が思ったよりも近くにいて……ビックリして足がもつれました」
 シュンと小さく肩をすくめる樋口は、俺の顔をマジマジと見つめ……手を伸ばす。
 思わずビクッと体が反応する俺に、樋口もまた、慌てて手を引っ込めた。
「あ、スイマセン……その、鼻が赤くなってて大丈夫かな、と、思って……」
「大丈夫だ。見た目ほど痛みはない」
「そうですか、良かった……じゃあ、これをグイッとどうぞ!!」
 そう言って樋口が缶コーラをあけ、俺に差し出す。
 とりあえず受け取って、一口流し込んだ。冷たい炭酸が喉を通りぬけ、火照った体を中心から冷やしていく。
 もう一口すすりつつ……サイダーを飲んでいる樋口が、チラチラとコチラの様子を伺っていることに気付いた。
「どうかしたのか?」
「い、いえ、先輩コーラで良かったかな、と、気になって。特に聞くこともなく渡しちゃったんで……」
「ありがとう、大丈夫だ。飲むか?」
「お、いいんですか? じゃあ……あたしのもどうぞっ」
 そう言って彼女は自分の飲み物と俺の飲み物を入れ替え、コーラに口をつけた。
 樋口はそういうことを気にしない奴だとこれまでの経験から把握していたので、俺も躊躇うことなくソーダを一口いただく。うん、これはこれで美味い。
 刹那、近くに置いていた俺のスマートフォンが振動した。何かと思って画面を確認すると、有坂からメッセージが届いている。何事かと警戒しつつ、それを開いてみて……。

『よう悠樹、香澄ちゃんとのドッキリハプニングはあったか? 香澄ちゃんも何だかんだいっても女の子だから、お前が至近距離で「俺がこのままずっと一緒にいてやるよ」とか言えばドキドキズッキュンで両思い間違いなしだぜ!! 俺ってマジで頼れるキューピットじゃね!?
っていうか……悠樹にその気がないなら俺が香澄ちゃんに本気でアピっちゃうからな、後悔すんなよー♪』

 俺は無言でスマートフォンの画面を暗くした。
 口をへの字に曲げている俺の顔を、コーラを差し戻した樋口が覗きこむ。
「あれ先輩、もしかしてさっきの、電話ですか?」
 彼女から缶を受け取った俺は、それを一口すすってから返答した。
「いいや、迷惑メールだった。放っておいていい」

 こうして、互いに雑に飲み物を交換しながら体の熱を取り、その後は当然……。
「さて……樋口、やるぞ」
「え? やるって……何をですか?」
 手元のスマートフォンは午後8時30分と表示している。立ち上がった俺を見上げる彼女に、俺は当然のごとくこう言い放つのだ。
「宿題だ。俺に全教科面倒を見て欲しいんだろう?」
「……」

 そうして、約3時間……俺達は真面目に勉強をした。

 普段は2階の自室で寝ている樋口だが、今日は俺もいるため、1階の和室に寝床を整えてくれた。
 ここは普段、雛菊さんが寝室として使っている部屋らしい。そんな雛菊さんは樋口の部屋で寝ることを告げ、2階へと消えていく。
「あ、先輩……申し訳ないですが、戸締まりの確認したいので、付いてきてもらえますか?」
 という申し出を断れるわけもなく、一緒に1階をぐるりと見て回って、窓や扉が施錠されていることを確認することに。
 そういえば……この家に入ってから、雛菊さん以外の大人の姿を見ていないのだが……。
「樋口、玄関にチェーンをつけていいのか? 誰か帰ってくるんじゃ……」
「あ、いいんです。今日は母さんが夜勤で、父さんは1泊2日の研修なので、夜は誰も帰ってきませんから」
 さも当然という口調で玄関を施錠した樋口が、「次行きますよー」と風呂場の方へ向かう。
「夜勤……お母さんは看護師だったか?」
「はい。母さんは看護師で、父さんは薬剤師なんです。2人とも、市立病院で働いてます」
「病院か、忙しい職場だな」
「そうですね、母さんは特に……あたしも手がかからくなったことで4年前に昇進して、余計忙しくしてます。まぁ、楽しそうだからいいんですけど」
 そう言って風呂場の窓を閉めた樋口が「あとはリビングなので、電気も消しに行きますよー」と俺を先導する。
「普段は父さんがいてくれることが多いんですけど、割と当直だったり、研修だったりするので……こうして、雛菊以外の人が家にいるのは変な気分ですけど、なんか楽しいですね」
 リビングの窓の鍵を確認した樋口が、俺に向けて照れたような笑みを向けた。

 ……雛菊さんが来る前まで、彼女は1人で夜を過ごすことがあったのか。
 ふと、そんな感想を抱いた。

「さて、戸締まりも終わりましたので……寝ますか。それとも枕投げしますか?」
 先日の合宿でも率先して投げていたが、どれだけ枕投げが好きなんだ樋口は……俺はジト目で彼女を見やり、釘を刺しておくことにした。
「枕投げは合宿で十分しただろうが。そんなに元気なら数学の続きするぞ?」
 俺の本気の目に、樋口は顔を引きつらせて首を横に振った。
「いっ、いえ、それはもう十分ですやめましょうそうしましょう!! 先輩……よくそんなに集中力が続きますよね……尊敬通り越してコワイです……」
「聞こえてるぞ樋口。褒めてないだろ、それ」
「そーんなことないですよ!? で、電気消しますからねーっ」
 俺のジト目を不自然に受け流し、樋口がリビングの電気を消す。
 廊下の明かりのみとなった1階は、薄暗さが際立って……少しだけ、肌寒さを感じた。
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2016-05-11

【星霜学園編・優雅で密かなる女子会】Resisters Quartet【43.4】

テーマ:創作物語
キャラクターや世界観を再利用・再構築して、戦隊ものっぽい物語を書きたくなったらしい。
普段は2回で1話ですが、ここからしばらくは1話完結の外伝です。本編では中々フォロー出来ない各キャラの日常や裏話をお届け出来ればと思っています。
ブログへの小説更新って実はちょっぴり否定的だったのですけど、これなら続けられる……と、いいなぁ。
コメント等、お待ちしております。

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 夏の、とある金曜日の昼下がり、時刻は13時を過ぎた頃。
 私――東原絢芽は、在籍している星霜学園内にあるカフェテリアで、少し遅くなった昼食を食べ終えたところだった。
 今日は午前中に課外授業が実施され、12時前まで普段通りの授業を受けていた。私は部活に所属していないので、普段ならば真っ直ぐ帰宅するところなのだけど……今日はちょっとした『会議』への出席を打診されているため、校内に残って時間を潰している。
 星霜学園の生徒会長・綾小路先輩によると、会議が始まるのは1時半からだということだった。あと30分、ここで本でも読むか……そう思って、カバンから文庫本を取り出す。
 夏休み期間は昼食のみの営業となっているカフェテリアは、既に閉店準備の真っ只中。厨房の奥では片付けが始まり、食器を片付ける音が響いている。
 このテーブルは校舎が閉まるまでは自由に使っていいので、別に追い出されることはないけれど……私以外に生徒の姿はなく、何だか私も早々に移動したほうがいいような気がしてきた。
 この場所は……以前、力を使った場所でもあるし。
 今の時間ならば、会長も生徒会室にいるかもしれない。今回の『会議』の内容は何となく察しているけれど、私が知らない情報があるかもしれないから、早めに移動して資料くらい目を通しておくか……。
「……資料があれば、ですけどね」
 ボソリと呟いた私の声は、食器が重なる甲高い音にかき消された。

 さて、5分ほどで生徒会室に移動した私を待っていたのは……。
「あら、ごきげんよう東原さん。早かったですわね」
 部屋の奥にある専用の机で作業をしていた綾小路先輩が、顔を上げて笑顔を向けてくれる。
 暑い日々が続くからなのか、フワリと癖のある髪の毛を1つに結い上げ、星霜学園の夏服を完璧に着こなしている、生徒ならば誰もが憧れる存在だ。
 その手前にある別の机で作業をしていた、副会長の御崎さんも、私に気がついて軽く会釈をしてくれた。相変わらずのお下げが耳の横で揺れている。
 今のところ室内にはこの2名のみ。星霜学園の生徒会は他にも、確か……あと3人はいたはずだ。この高校の生徒会は選挙でなく、やりたい人間が集まるという部活動に近い形式をとっているので、正式に何名在籍しているのかは、私も把握していないけれど。
 とりあえず空いている場所――御崎さんの前――にある椅子を引いて腰を下ろした私は、自分を呼びつけた綾小路先輩を横目でみやり、話を切り出す。
「生徒会でない私に、わざわざ何の御用ですか、綾小路先輩」
 少し事務的な口調になる私へ、綾小路先輩が整理をしていた書類の影から顔を覗かせ、どこかとぼけた口調でこう告げた。
「あら、東原さん……2学期から本格的に、生徒会へ入っていただけるのではないの?」
「検討します、とはお答えしましたが、入りますとは言っていませんわ」
「あら残念、東原さんがその気になってくれたと、御崎さんと2人で喜んでいたところだったのに……」
 白いハンカチを取り出して、わざとらしく目元をおさえる綾小路先輩。この人……こんなコミカルなことをする女性だっただろうか?
 自分の脳内にあるイメージが大急ぎで書き換えられていくのを感じつつ、気を取り直して、再び問いかける。
「ですので、今日は何の用事なのかと伺っているんです。私、14時30分以降は用事がありますので、それまでに終わるようお願いしますわ」
 今日の午後、15時過ぎからは、『干渉者』としての招集がかかっている。一度自宅に帰って身支度を整えてから改めて戦地に赴きたいので、遅くとも14時30分には高校を出たいところだ。
 私の都合を改めて伝えると、綾小路先輩はチラリと扉の方をみやり……「そろそろ来るはずですから、始めましょうか」と呟き、手元の書類を脇へ片付け始めた。
 そして、何事かと改まる私を真っ直ぐに見つめ、こんなことを言う。
「ではこれより、『第1回・奥村会長と樋口さんの仲を微笑ましく見守る会』を始めますわ」

「……はい?」
 数秒考えこんで口から出た私の声は、星霜学園の生徒としては恥ずかしいくらい……間の抜けた声だった。

 一瞬、綾小路先輩が何を言っているのか理解出来なかったし、私を笑わせるための冗談かとも思った。
 しかし、彼女の大きな瞳はどこまでも真剣に輝いていて……先ほどの宣言がその場しのぎでない、これまで地道に準備してきたことを伺わせる。
 でも、いや、そもそもこれは……。
「綾小路先輩、1つ……確認しておきたいことがあるのですけれど……」
「はい、何でしょうか東原さん」
「この会議には、当事者である香澄さんや奥村さんは参加なさるのですか?」
「いいえ。むしろお二人には知られたくないので、東原さんも他言無用でお願いいたしますわ」
「はぁ……でしたら益々意味が分かりません。どうして当事者でもない私達がわざわざ集まって、香澄さん達の仲をとりもつようなことを考えなければならないのですか?」
 夫婦喧嘩は犬も食わない、ともいうように(そもそも2人は夫婦ではないけれど)他人が干渉すべきではない……要するにお節介ではないのか、と、言外に含める私に、相変わらず根拠の見えない余裕を持った綾小路先輩が、優雅に反論する。
「確かに、私達の行動はお節介なのでしょうね。ですが……お二人の近くにいる東原さんならば感じているのではありませんか? あのお二人の焦れったさというか、客観的に見てどう考えても互いに相手を意識しているのにあと一歩踏み出せないもどかしさみたいな、そのような感情を」
「……」
 図星だったので言い返せなくなる。
 確かにあの2人は……まぁ、色々厄介というか、どちらでも良いから素直になって告白でもして、更に先の関係へ進んでも良いのでは、と、イラッとしてしまうことがないとはいえない。
 でもそれが、香澄さんと奥村さんのリズムなのだ。それを外野が急かしてお膳立てするのは、やはり違う気がする。
 それに……綾小路先輩は、先日の夏祭りで奥村さんに告白し、その思いが叶わなかったと聞いた。今回のことは、それに対する当て付けではないのか?
 自然と、彼女を見る目が厳しくなってしまった私へ、綾小路先輩はどこか嬉しそうにこんなことを言う。
「東原さんが、自分以外の誰かをこんなに気遣うなんて……やはり、あのお二人との関わりは、貴女に良い影響を与えているみたいですわね」
「お言葉ですが綾小路先輩、私は普段からも、綾小路先輩や御崎さんを含め、自分の周囲にいる人のことは気遣ってきたつもりです」
「ええ、良く知っているわ。その気遣いが……一歩引いた、仕事をこなすようにどこか事務的なものだったということも」
「……」
「私からも少し厳しいことを言わせていただきますと、入学当時の東原さんは、学内でも浮いていましたわよね。中等部の頃はそこまででもなかったけれど、春休みに何かあって、貴女を取り巻く空気が研ぎ澄まされすぎてしまった。その空気に圧倒されて近づけなかったクラスメイトがいること、気付いていなかったわけではないでしょう?」
「それは……」
「でも、最近の東原さんは違う。良い意味で丸くなって、心に余裕が出来たのではないかと感じることが多くなりました。それは、樋口さんや奥村さんなど、外部の方と深い交流を持つようになったからだと、私は考えていますの。私は東原さんを変えてくださった樋口さん達に感謝していますわ。だから何か力になりたい、それだけです」
 笑顔で語る綾小路先輩だが……その裏にはまだ何か隠している。
 直感的にそう思った私は、ジロリと冷めた目で見つめ、カマをかけてみることにした。
「……本当にそれだけですか?」
 私の言葉を受けた彼女は、しばらく笑顔だったけれど……やがで表情を崩し、はぁ、と、重たいため息をひとつ。
「まぁ、今は正直……三木先生の問題を生徒会としてどう認識して片付けようか、そのことだけで頭が痛いですわね。だから、これくらい現実逃避しないと、疲れきってしまいますの」
 あの綾小路先輩に「現実逃避」したいと思わせている目下の問題は……先日、私達『干渉者』的には綺麗に片付いた、星霜学園を中心に発生していた諸々の事件だった。
 本人の記憶は消したけれど、目の前にいる綾小路先輩も、その事件には深く関わっていて……結果、私は彼女が感じていた孤独を少しだけ感じることが出来た。
 だから今、私はなるだけ生徒会に顔を出すようにしている。綾小路先輩の経過観察という意味もあるけれど、それ以上に……また、彼女に負担と責任を強いて、孤独にしないように。
 それはさておき、三木先生の歪んだ願望が力を得て暴走した結果、彼は引き返せない罪を犯した。それは亜澄さんや蓮華さんの思惑からも外れ、雛菊さんの隠蔽からも外れてしまったため、彼には現実世界でそれ相応の処罰が下される。間違いなく逮捕されるため、社会的信用の失墜は免れないだろう。
 そしてそれは……この星霜学園にとっても忌々しき事態だ。これまで数多くの淑女を輩出してきた名門お嬢様学校の男性教師が、女子高生の売春容疑で逮捕されてしまうのだから。
 勿論、この罪は学園とは直接関係がない。だが……学園内の生徒でも彼の影響下で、今まさにグレーゾーンからアウトの領域へ自ら足を踏み入れようとしている生徒がいるのだ。雛菊さんでも、自主的に道を踏み外す『繁栄者』を助ける義理はない。だから、この問題は私たちで解決しなければならないのだ。
 『灰猫』の皆さんがその前調査を行っていて、間もなく結果が出る。それをもとに久那市に残る売春斡旋組織を壊滅させ、そこにある星霜学園生徒の痕跡を消すこと……これが今、綾小路先輩が山岸さんたち『灰猫』に依頼していることだった。
 今日の会合で、その調査結果が伝えられるのかと思ったけれど、ならば私のような部外者(関係者のようなものだと自分でも思うけれど)は排斥したいはずだ。綾小路先輩が同席を許可しているということは、きっと本当に、本筋とは関係ない雑談なのだろう。帰りたい。

 ……そんな私の心情など、目の前の綾小路先輩は察していないだろう。もしくは、気づかないふりを続けるつもりなのだろう。要するに、この部屋に入った私が諦めるしかないのだ。
 そう思い込んで自分を納得させ、ため息をついた瞬間……扉が軽く3回ノックされて。
「……失礼します」
 扉を開いて入ってきたのは、『灰猫』の中核メンバーの一人でもある山岸司さん。
 一人だけ違う、ブラウスに紺色のスカートという久那商業高校の夏服に身を包み、ショートカットが涼しげで眼鏡の奥にある瞳もいつも通りの冷静さを保っている。彼女を見て思わずホッとしてしまった私は……綾小路先輩に対して大分失礼だと思うけれど。
 部屋の中にいる私を確認した彼女が、ペコリと小さく会釈をした。
「ごきげんよう、山岸さん。ご無理を言って申し訳ございませんでした。御崎さん、貴女と東原さんの間に一つ、椅子を用意していただけるかしら?」
 立ち上がった綾小路先輩が彼女に頭を下げ、御崎さんに指示を出す。彼女が壁に立てかけてある椅子を用意する間、山岸さんは持っていたトートバックからクリアファイルを取り出し、綾小路先輩に手渡した。
 そして、右隣に座っている私をチラリと一瞥する。
「……綾小路会長、東原さんが同席ということは……」
「ええ、私から直接お願いするつもりですわ」
「……承知しました」
 二人の間で何やら私の知らない話が進行しているようだが、いずれ知ることになりそうなので今は深く追及せずにいよう。
 私が足を組み替えた次の瞬間、山岸さんが隣に腰を下ろした。これで4人が内側を向き、互いの顔を見て座っている状態になる。
 さて、何が始まるのやら……私は腕時計をチラリと確認して、この会議が長引かないようにと願うのだった。

 全員の表情を確認した綾小路先輩が、コホンと咳払いをしてから、本格的に会議を始める。
「では、改めて……本日はお忙しいところご足労いただき、ありがとうございます。メンバーは全員顔見知りですので、自己紹介は割愛しますわ。早速ですけれど……東原さん、貴女に1つ、お願いしたいことがあるのです」
 そう言って、右隣にいる私を改めて見つめる綾小路先輩。自ずと、残り2人の視線も私に注がれることになる。
「承諾するかどうかはお話を伺ってから判断します、それでもよろしいですか?」
「ええ、当然ですわ。では本題に入ります。東原さんもある程度ご存知だと山岸さんから伺っていますけれど……夏休み明け、わが校の職員が逮捕、そして生徒が補導される可能性が高くなりました。しかも罪状は未成年者との淫行……まぁ、基本的な対応は理事長や職員に任せることになりますけれど、我々としても出来ることはしておいて、これ以上のスキャンダルは食い止めたいのが本音ですの。そして今、まさにこの夏休みという休暇を利用して、己と引き換えに金銭を授受しようとしているわが校の生徒がいることも、ある程度分かっていますわ。なんとまぁ……由々しき事態です」
「……」
 まだそんなことを考えている生徒がいたのか、と、私は内心で大きなため息をついた。
 これが、全国的な知名度も決して低くないお嬢様学校・星霜学園の現状なのだ。
 時代が変わり、お嬢様教育というのがそもそも今の時代にそぐわないのかもしれない。苦しすぎる制約から抜け出すため、それが例え非合法の快楽であったとしても、そこに大きな魅力を感じて没頭してしまう生徒がいるのが、今の星霜学園なのだ。
 しかし……現代の淑女教育を受けるお嬢様は、この事態を泣きながら見守るだけではない。
 綾小路会長は目に力を宿し、言葉を続ける。
「そこで、生徒会としても私個人としても、道を踏み外そうとしている学生を正したいと思っています。とはいえ、証拠が不十分なまま警察に相談すると、更に厄介で大事になってしまうかもしれない……そこで、『灰猫』の皆さんのお力を借りて、今、その諸悪の根源の潜伏先と活動時間などを掴みましたわ。後はそちらへ伺って、可能であれば平和的に私どもの生徒を解放して欲しいと考えています」
「平和的に、ですか……」
「可能であれば、ですわ。恐らく相手は応じないでしょう。星霜学園という名前が若干一人歩きしているとはいえ、この学園の生徒であるということは一種のステータスです。当然、そのような聖域を犯したいと考える方がいてもおかしくはない。そして、そのために支払われる対価は……きっと、私達が思っている以上に多いのだと思いますわ。でなければ、新たに志願する生徒がいるとは思えませんもの。それに、今はまだ対価が金銭で済んでいますが、これが薬物にでもなったら……考えるだけでおぞましいですわ」
 そう言って、綾小路先輩は軽く頭を振った。そして一度息をつき、改めて、私を見つめる。
「東原さん、貴女の身体能力は非常に高く、個人における危機回避能力も学園随一のものだと思っていますわ。そんな東原さんを見込んで……お願いです、後に指定された日時に相手方の潜伏先に乗り込み、星霜学園に関わらないよう、釘を差してきていただけないでしょうか?」
 それは予想外の頼み事だった。言い方は悪いけれど、綾小路先輩はこれまで『灰猫』に調査を依頼し、自分以外の自校の生徒はなるだけ関わらせないようにしてきたように感じていたから。
 それに……私は自分の中に浮かんだ率直な疑問を、最近覚えた言葉と一緒に吐き出してみる。
「それは……私で務まる役目なのでしょうか? 正直なところ、私では、その……ナメられるといいますか、軽くあしらわれて終わるだけだと思いますけれど……あまり本気を出すと、刑事事件に発展しそうで……」
 私はまだ精神的にも未熟なので、例え『雫』を使わなくても、目の前にいる反社会的な人間には容赦出来ないかもしれない。先日は止めてくれる人がいたから大丈夫だっただけ、次があるかどうか……自分でも保証出来ないのだから。
 その結果、学園や家に迷惑をかけることだけは、絶対に避けなければならないから。
 私の疑問を恐らく想定していたであろう綾小路先輩が、サラサラと淀みなく言葉を返す。
「山岸さん達の情報によれば、現在、久那市でそれらの斡旋をしているのは、年長者でも20歳を超えたくらいの若い男性だそうです。彼らは己を強く見せることで、下にいる人間に逆らえない雰囲気を作っているそうですわ。そんな彼らが、年下の、しかもお嬢様学校の女子高生に負けたとなれば、少なくともこの周辺ではしばらく大人しくしているのではないかと思います。彼らが台頭してきたのは本当にごく最近のことですから、今のうちに叩いておけば、しばらく浮上してくることはないと考えていますわ」
 ごく最近になって出てきた、未成年を惑わす反社会的勢力……まさかこれも、『堕落者』の影響なのだろうか?
 だとすれば1人くらい剣を使える人材がいたほうが良いと思うけど……ならば、有坂さんで十分ではないだろうか。彼のほうが場慣れしているというか、今回のような事態への対処方法も心得ているだろうし。
 どうして私なのだろうか、と、口に出そうとした次の瞬間、山岸さんが補足を始めた。
「……今回、部外者である東原さんへお願いする理由が3つあります。1つ目は、東原さんの危機回避能力が高いこと、2つ目は、東原さんのご実家は久那市……いえ、県内でも有数の警察一家です、何かあった時にもみ消しがきくことがあります」

 山岸さんの言葉に、私は無意識のうちに唇を噛み締めていた。

 少し調べれば分かることだから驚きはない。私の家――東原家は、久那市を、そしてこの地域を表立って守るため、その親族の多くが警察関係、もしくは公的な仕事をしている。更に早期退職をして、市議会議員や県議会議員になる人物もいる。
 けっして、それ以上には――国家公務員や国会議員にはならない。国政に関わると、久那市を守ることが出来なくなってしまうから。
 だから、私の周囲には武道に長けた人材がゴロゴロしているのだ。幼い頃から稽古をつけてくれている母も、祖母も、みんな同じ道を通ってきたから。
「なるほど……確かに、多少のことなら何とか出来るでしょうね」
 私の態度と口調を感じ取った山岸さんが、軽く頭を下げた。
「……お気を悪くされたのであれば謝罪します。ですが、使える手段は使うというのが『灰猫』の主義ですので、ご理解ください」
「構いませんわ。むしろ、今まで頼られなかったのが不思議なくらいですもの。それで、3つ目の理由は何ですか?」
 どうせ3つ目は、私に『干渉者』としての役割を期待しているのだろう。口元を緩めて尋ねる私に、山岸さんは意外すぎる答えをくれる。

「……3つ目は、有坂椎葉からの指名です」
「…………はい?」

 思わず間を置いて尋ね返してしまったではないか。綾小路先輩の瞳がキラっと輝いたことが、嫌になるほど分かるくらいに。

「山岸さん……『灰猫』という組織は、いつから外部の女子を指名して仕事をする下賤な活動に成り下がってしまったのですか?」
「……今回は反論のしようがありませんが、この件は、椎葉が積極的に追いかけている案件なんです。先日、久那センで女子高生の痴話喧嘩がちょっとした騒ぎになったことはご存知ですよね。あの出来事をキッカケに椎葉が中心になって情報を集め、今に至っています」
「あの時の……」
 それは、有坂さんの能力を開花させた事件。女子高生同士の上下関係が歪み、『堕落者』に利用され、崩壊した――そんな、事件。

「守れなくてゴメン。でも、次はない。約束するよ」
「寛子ちゃんみたいな思いをする人をなくしたい。そのために俺達は動き続けるんだ」

 あの時の彼の言葉が脳裏をかすめた。そうか、彼はあの後……動き続けていたんだ。
 学生と『灰猫』と『干渉者』、それ以外にも多くの役割をこなしながら、ずっと。
 そんな彼がどうして私を指名しているのか、詳しいことは知らないし特に知りたいとも思わないけれど。

「絢芽ちゃんには多分理解出来ないと思うけど、要するに俺は、『壇』と一緒に戦えて楽しいし、俺に人とは違う経験をさせてくれたことを感謝さえしてるんだ。勿論、戦う時は本気でやってるぜ。でもこれは、俺が望んでいたことだから……だから基本的に笑っていられるんだと思う」
「俺のこと……もっと、知りたい?」

 前回と同じ言葉を投げられても、私は全力で拒否するだろう。
 だって、現時点での貴方を知ったところで……貴方はまた変わってしまう気がするから。
 そして――私も。
 貴方の方を向いたりはしない。お互いが前を見なければ、前には進めないのだから。
 
「――分かりました。私に出来ることをやりますわ」
 ため息混じりに吐き出した私の言葉に、山岸さんがもう一度頭を下げた。
 どうせ綾小路先輩は、私が了承することを見越していたのだと思う。嫌味を込めた視線で彼女を見やると、驚くほど真っ直ぐな視線を向けられ、少し驚いてしまった。
「綾小路先輩……?」
 私が軽く目を見開くと、彼女は立ち上がり、深々と頭を下げた。結い上げた髪の毛が、サラサラと彼女の体にかかっていく。
「どうか……学園生を、よろしくお願いします」
 言葉の端々から、自分がこれ以上何も出来ない悔しさを感じた。だから私も立ち上がって、体ごと彼女の方を向く。そして。
「――顔を上げてくださいませ、そして、後はお任せください。粛々と役割をこなして、早々にご報告にあがりますわ」
 軽く会釈し、顔を上げ、私は笑顔を向けるのだ。
 だって、成功させることしか考えていないのだから。

 しかし……ここから、ちょっとした誤算が発生する。
 頭を上げた綾小路先輩が、満足そうな表情で全体を見渡し、手元に開いていたファイルをパタンと閉じた。
 そして……。
「とりあえず、今回の件に関してはまとまりましたわめ。今後も何か進展があれば、ご報告くださいませ。と、いうわけで……移動しますわよ、東原さん」
「移動、ですか……? 一体どちらへ? というか、私はこれから用事が――」
「――それは、私からの誘いを断るほど重要なものですか? どうせ、樋口さん達と会って楽しくお喋りをするお約束でしょう?」
「……」
 私の言葉を遮る綾小路先輩の言葉に、言い返せなかった。まぁ……半分くらい事実だから。
 そんな私の反応で自分の言葉が正しいことを悟った綾小路先輩が、ビシっと私を指差し、よく通る声でこんなことを言った。
「東原さん、本日は私どもの女子会に参加していただきますわ!!」
「じょ、女子会……?」
「そうです、女性が集まってお茶やお菓子を囲んで楽しく談笑する会合です!! ご心配なく、会場は御崎さんのご実家でもある喫茶店の一角を既に予約してありますわ!!」
 だからこの場に彼女がいたのか……内心で納得しつつ、先程から一切発言をしない御崎さんにチラリと視線を向けると、苦笑いを浮かべている彼女と目が合った。
 しかし、御崎さんの家は喫茶店だったのか……どこのお店だろう。彼女の佇まいから察するに、きっと、落ち着いて良い雰囲気のお店なのではないだろうか。
 それに……今日の『干渉者』は私以外の3人も揃うはずだ。だったら……私が急に行けなくなっても問題ない。だって、先輩からの呼び出しには従順に従うのが、後輩のお勤めなのだから。
 私は本日何度目か分からないため息をつき、スカートのポケットからスマートフォンを取り出した。
「……今日は行けない、と、連絡しておきますわ」
 苦情は全て綾小路先輩へお願いします、と、付け加えておこう。これで誰も文句は言わないだろう。
「ありがとうございます、東原さん♪ さあ皆さん、片付けて移動しましょう。御崎さんのお店のコーヒーとチーズケーキは絶品ですもの、楽しみですわ」
 綾小路先輩の笑顔に、恐縮して頭を振る御崎さん。チラリと山岸さんにその真偽を尋ねると、「……間違いありません。価格も良心的なので、本当に良いお店です」という太鼓判をもらうことが出来た。
 そうか、ならばと期待を膨らませつつ、私は香澄さん達へのメッセージを作り始める。

 以前では考えられなかった日常に、まだ少しだけ、戸惑うこともあるけれど。
 でも……以前よりずっと、楽しいと感じることが増えたから。
 私はこれからも、この日常を守っていこうと思う。
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2016-04-28

実家のような安心感

テーマ:霧原雑記

いやまぁ、実際実家に帰省(寄生?)しているわけなのですが……丁度2週間前から継続している、熊本・大分地震のそこそこ近くで、普通の生活をしております。

改めて、今回の地震で被災された皆様へお見舞いを申し上げます。

 

もともとこの時期に帰省する予定で色々準備をしていて(ボイスドラマの公開とか)、よし、全部終わったグダグダするぞーと思った矢先、熊本で震度7の地震が発生した、というニュース速報を見て、目を疑いました。

九州であまり大きな地震が発生する、という印象がなく、ましてや熊本……福岡は西方沖地震がありましたが、熊本、そして大分……阿蘇山の噴火の方が自然災害として可能性が高そうな印象を持っていたので、さすがに驚きました。

とはいえ、東日本大震災を被災地ど真ん中で経験した霧原、公共交通機関が動いていて、ライフラインに異常がなければ予定通り出発するつもりでした。そして、出発当日、私の目的地に何の異常もなかったので、家族や犬の様子見(&寄生)もかねて、南下してきたわけです。

実際、今の私はごく普通の、非常に快適な生活を送っております。とはいえ、数十キロ南にいけば、今でも避難所や車の中で生活していらっしゃる方が大勢いらっしゃって。

私に出来ることは、わずかでも募金や熊本・大分のお土産を買って帰ることかなぁと思って、今、品定めをしている最中です。

まだ行方不明の方もいらっしゃいますし、現地ではこれから新しい問題がボッコボコ出てくると思いますが……どうか、負けないでください。

諦めなければならないこともたくさんあると思いますし、今後も出てくると思います。でも、負けないでほしい。一方的にそう思っています。

 

さて、話を変えましょう。実家はいわば私の創作の原点であり、『リジスターズ・カルテット』の久那市は、私の地元がモデルになっています。

と、いうわけで、久しぶりに市の中心部などを歩いてみると……いやぁ、作品を書き始めたころと景色が違うこと違うこと。

現在不定期更新中のリテイク版は、2011年当時の私の記憶を頼りに久那市を構成しているのでまだ新しいですが、それでも随分違うところがあって……最初に書いた文章と最近書く文章で、景色の描写に矛盾が生まれないよう、しっかり設定しておけばよかったと思いました、まる。

要するに、自分の雑さを実感して「あーあ」と思った、というお話です。この辺りは16年前から変わっていないんですね……人間、そう簡単には変われないのですよ。(遠い目)

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2016-04-09

音声企画延長戦・エピソード39.5:彼女に秘密のコンフェッション

テーマ:音声企画
この記事が公開されているということは……今回の延長戦ボイスドラマが無事に全編公開されている、ということですね。
と、いうわけで。『リジスターズ・カルテット』音声企画延長戦・エピソード39.5:彼女に秘密のコンフェッション、完成です!! 長い!!(フレームの関係上、トップページからバナークリックで特設ページに移動してください)
終了後ということで、例によって例のごとくこの記事は長いですよー、覚悟してくださいませ。


この企画は、2月に公開した『リジカル』の音声CM企画から突如として派生したものです。
ボイスドラマ公開後、久しぶりの本格的な音声企画に楽しさMAXテンションMAXだった霧原さん。丁度Twitterで悠樹役をお願いしている高瀬さんとやり取りさせていただくことがあり、「このメンツでもう少し何か出来ないだろうか……!?」という妄想が、日に日に大きくなっていったのです。
とはいえ、基本的に1度きりの企画としてお願いしたキャストさんだったので、私の思いつきに賛同してただけれるか分かりません。というわけで、まずはキャストさんで一緒にやってくれる方を、Twitter限定で募集することにしました。
この企画に『こえ部』を使わなかったのは、『こえ部』だとメールなどで直接やり取りが出来ないからです。と、いうわけで、参加出来るキャストさんがそもそも限られた形にもなってしまいましたが、それでも5名、手を上げてくださいました!!

最初は『リジカル』と違う、全然関係ないボイスドラマを作りたいと思っていたんですよ、本当ですよ。
ですが、悠樹役の高瀬さんと綾小路先輩役のryokaさんが揃い、そこへ亜澄と蓮華、雛菊がいるので、これはもう、本編では1行で終わらせた「綾小路先輩が悠樹に告白してフラれる」エピソードをちゃんとやりたい! と、思ったのです。
元々彼女が悠樹に好意を寄せていることは物語序盤から明らかにしてきたことで、そんな彼女の恋心を香澄の回想一言+現在進行中の外伝で少しフォロー、という形で終わらせるのはちょっと可哀想かなー、と、思っていたのです。
そもそも、どうして彼女が悠樹のことを好きになったのか、しっかり書いていなかったので……その辺も含めてフォロー出来ないかと、外伝にどこまで入れようか考えていたところでした。

そこへこのキャストさんの立候補ですよ……渡りに船? とにかく、物語の中でも一番ピュアな彼女の気持ちが、少しでもドラマチックに伝わればいいなぁ、と、思ったのです。失恋確定なので切ないんですけどね。
と、いうことで思い立った霧原は早かった。まずは原案となる小説を書き、そこからセリフなどをピックアップにして台本を作り……前回のボイスドラマ公開から約1週間後には、キャストさんへセリフを発注していました。うん、やっぱり自分のやりたいことに関しては早いね!!

今回の智恵子は失恋することが決まっていたので、悠樹に断られた後の智恵子はどうするだろう(泣く? 笑う? 怒る?)と考えたのですが……正直なところ、明確な答えは出ませんでした。悠樹の「好きだと言ってもらえて嬉しかった、ありがとう」から、智恵子が「香澄のことが好きなのか?」と尋ねる間には、更に数分の空白があると思っています。その間のことを知っているのは当事者のみ、彼女(作者)にも秘密のコンフェッション(告白)なのです。

さてさて、では……以下、毎回恒例・キャストさんごとへの重い思いをば。
お名前の下にあるセリフは、声に出してもらって一番好きなセリフです。


■奥村悠樹:高瀬悠さん
「取り留めのない愚痴でスイマセン……こういうこと、あいつらには本当に言いたくないんで……」

今回の悠樹は、普段、香澄や椎葉に呆れつつまとめてくれる年上の先輩ではなく、歳相応の……普通の男子高校生としての側面を強くしたつもりです。特に後半。
悠樹は年齢や性格、キャラの立ち位置的に、あまり愚痴を言えないので……同じ学年で生徒会長という共通点がある智恵子にならばある程度吐き出すかな、と、思い、「好きが何か分からない」という小学生並みの告白をさせています。多分、これを椎葉に聞かれた日には……悠樹が椎葉を灰になるまで燃やすのではないかと。(笑)
今後、会合以外での敬語を撤廃すると約束した悠樹ですが、それを見た香澄がどんな反応をするのか……いつ書けるか楽しみです。
高瀬さんにはモノローグを含め、最も多いセリフ数をお願いしました。文句も苦情も泣き言も言わずに演じていただきまして……本当にありがとうございます!! でも、本当は女装させた時のセリフを高い声で言ってもらおうかと思ったりしたんです……またの機会にお願いします。(ヲイ)
そして、後半部分の編集に悩んでいる時も力になっていただきまして……もう、ありがとう以外の言葉が浮かばない自分が悔しい、でも、ありがとうございます……!!
高瀬さんとのやり取りや悠樹に対する実直な考えがなければ、今回の企画は生まれませんでした。今後も何かとお世話になりたい所存でございます!!


■綾小路智恵子:ryokaさん
「あら、私はこれが生まれつきなので今更変更出来ませんわ。奥村さん、樋口さん達には砕けた口調で接していらっしゃいますわよね? 少し……羨ましいんですのよ?」

台本を渡してから「セリフ中の私は『わたし』ですか? 『わたくし』ですか?」と尋ねられ、「そこまで考えてなかったー!!∑(゚Д゚)」と、慌てて考えたのは秘密です。答えはボイスドラマ内で確認してください。
今回の企画はryokaさんに参加していただけたので、綾小路智恵子というキャラクターに最大の見せ場を作ることが出来ました。
このセリフは、最後の「少し……羨ましいんですのよ?」の言い方がいじらしいというか、おねだり上手というか……要するに可愛いんです。
前回は予告ということもあり、セリフ数も少なかった智恵子なので、今回はここぞとばかりにガッツリ喋っていただきましたよ。リーダーとしての顔から恋する女の子、失恋を乗り越えて悠樹をいじる顔……色々な表情になる智恵子をしっかり演じていただきました。途中に長セリフもあったので大変だったかと思います……本当にありがとうございました!!


■蓮華:柚衣華 【ゆいか】(武川楓)さん
「それは……無理な注文じゃな。わしとお主は、もう、立場が違う。分かっておるじゃろう? 世界はどちらかの主張しか認めてくれんのじゃ。だから、わしらは押し通る――それだけじゃよ」

今回の蓮華は、立場上ツッコミとヤレヤレ役(何だそれ)にまわってもらっていたのですが……それだけじゃダメだろうと思って、終盤に蓮華の主張を入れ込みました。
柚衣華さんに演じてもらう蓮華は風格があって好きなので、今回は本編では中々見せられないような表情を盛り込んでおります。前半だけ聞くと、厄介な妹に振り回されるお姉ちゃんなんですけど……あれ、蓮華が姉だっけ。(忘れるな)
亜澄の声が高めなので、相棒である蓮華が中~低めというのは非常にバランスが取れて、編集していて楽しかったです。蓮華の優しい一面も、蓮華というキャラからブレることなく表現していただけて助かりました。流石です……!!
聞いていただいた方の中には「どうしてこんなに優しい彼女が雛菊と敵対しているの?」という疑問も深まった方もいらっしゃるでしょう。それは、今後の小説本編をお楽しみに!!


■樋口亜澄:ぴのさん
「当然。あるからこんな提案してるんじゃん。そろそろ香澄ちゃんを本気で焦らせないと――なんか、ムカつくし」

亜澄に「ムカつくし」と言わせたいがために、このセリフを入れ込んだのかもしれない……それくらい、この「ムカつくし」という5文字の言い方が「ああ、亜澄だなー。相変わらず香澄のことになるとイライラしてるなー」と、ニヤニヤしてしまいました。
ぴのさん演じる亜澄は、透き通った声の中に小悪魔的な要素があって本当にキャラのイメージ通りなのです。今回はもうめいっぱい喋らせるつもりだったのですが、半分以上、食べ続ける雛菊への苦言になってしまいましたね。今回は香澄が不在なので、同じ素質を持っているであろう亜澄がツッコミに回るのは大自然の摂理。「ねー蓮華ー」と普段の調子で蓮華を呼んでいる声も好きです。
でも本当はもっと、智恵子が告白することに対して焦る亜澄の姿を入れるべきでしたよね、と、今更ながら少し後悔しています……オドオドする亜澄も聞いてみたかった! よし次だ!(笑)
とはいえ、CM企画からぴのさん演じる亜澄の声をもっと聞いてみたかったので、とりあえず満足です。ありがとうございました!!


■雛菊:望月ゆうやさん
「いいんですよ。もう、今回の戦いは終わりました。だからこうして、若い二人の逢引をお姉さん的立場として微笑ましく見守りつつ、今後悠樹さんと何かあった時には切り札として使わせていただこうかと」

今回の雛菊は、食べながら喋るという指定が多かったので、特に大変だったかと思うよ……ありがとう。
そして、彼女のセリフが一番トゲトゲしているというか、容赦無いというか……何を考えているのか分からない感じを出したくて、食べながら喋らせたり、唐突にシリアスになったりしてもらいました。香澄という本家のツッコミが不在だったこともあり、好き放題でしたねー。
望月さんに私がアドバイスすることなんか何もないので、セリフを発注したら丸投げです。段々とセリフも発注が雑になっている気がしなくもないですが、それでも私の思った通り、時にそれ以上に笑顔の雛菊が戻ってくるので、コチラも気合が入りますよね。効果音入れるタイミングとか。
次に何かするときは、ちゃんと香澄を連れてくるから。また何か思いついた時は、話くらい聞いてやってね。本当にありがとうございました!!


あ、ドラマの中に友情出演のキャラクターがいるのですが……お気づきですか?
ココでネタバレするのは勿体無いので、少し時間が経過してから追記します。
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2016-04-01

『リジカル』音声企画延長戦、開始!!

テーマ:音声企画
と、いうわけで、『リジスターズ・カルテット』の音声企画が、延長戦に突入しました!! ドンドンパフパフ!!
この企画は、前回のCM企画ですっかり音声企画の面白さを思い出した霧原さんが調子に乗って、Twitterで「誰か一緒にやろーぜー!!」と呼びかけ、それに応じていただいたキャストさんから物語を作り上げた、という経緯で生まれました。
そして、折角悠樹と綾小路先輩が揃っているので、本文中では香澄の説明1行で終わった「悠樹への告白と失恋」に関するエピソードを、しっかり掘り下げようと思ったのです……傍観者というオマケ付きで。

とりあえず、前半部分が公開されていますが……綾小路先輩の告白と、亜澄&蓮華with雛菊というカオスな組み合わせの会話劇です。普段、会話のテンポ感を重視するため、編集していると言葉の間をつめる傾向にあるのですが……今回は演者さんの間をなるだけ活かすような編集をした……つもりなんです、これでもね。
作中の季節は真夏、花火のSEのタイミングを決めるのが楽しかったです。
主人公不在だからこそ語れる物語になりました。皆さんの良い意味でキャラを掴んで慣れてきた演技をお楽しみください!!
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