2年近くつづいたシリーズ「聖ヨハネの帰還」完結 | 親愛なるエロイカへ

2年近くつづいたシリーズ「聖ヨハネの帰還」完結

2011年9月号プリンセスGOLDの掲載分を最後として、
「聖ヨハネの帰還」が、ようやく完結しました。
振り返れば2009年から2年、長かったですね。

隔月とはいえ、630円が高いと感じていた私は、
「聖ヨハネの帰還」シリーズから単行本派に切り替えをしていました。
しかし、38巻とその続きの完結ストーリーを掲載したプリンセスGOLDが同日発売という
秋田書店さんの販売商法には、さすがに乗っかってしまいました(笑)。

爺さまお二人の確執やこだわりが、結局は破壊を招いてしまったというあたり、
青池先生らしさが出ていた展開でした。

他のものを受け入れない頑固さや、気だけは若くて周りは迷惑、
それゆえの滑稽さ等々、年配男性の独特の性質を「魅力的」を描けてしまうのは、
幼少の頃から「おじさま好き」だった青池先生独自の力であり、
他の少女漫画家はまずマネできないところですね。

…しかし、しかし!
38巻~最終話(雑誌掲載)を一気通貫した読後感は、

1にも2にも、
ギャクが多すぎる!

それゆえ、ストーリーの流れがたびたび分断されて、
読みづらい!

……なんでこんな風にしているんだろう?
正直申し上げて、そのギャグもたいして冴えていません。

先生、説明し過ぎです!
余韻を!間を!


ギャグやオーバーめなリアクションは、
たいてい、これまで築かれてきたキャラクターに依存したものであり、
エロイカを長く読んでいる読者にとっては新鮮さを感じられません。

[キモイ]と言わんばかりに伯爵の女装に
顔を青ざめ口を抑える少佐。


→黒髪の美女の時、エリカちゃんの時、そんな反応をしたでしょうか…
まあ、「聖ヨハネの帰還」内の女装はあまり美しくないものが多かった(意図的に)のも
事実ですが。
「心の中でシャットアウトしているから、表面はさらりと受け流していた」というのが
従来の反応だったような気がします。 

ミーシャや少佐が登場するとなると、
震え上がって恐怖心をあらわにする部下達。


→旧KGBの部下達ってそんな態度をとっていましたかねえ…
周囲の反応で「少佐」という人物を演出させる手法なのだとは思いながらも、
どうも不自然感が拭えません。
しかし、新規読者にも人物関係などを分かりやすく理解してもらうための
配慮なのかもしれません。

また、不自然感のその大きな原因の一つに、
絵柄の変化
もあるかもしれません。

80年代~90年代までの絵柄と比較して、よりライトタッチでポップで、若めな
雰囲気に描かれる今の少佐に、常日頃、あの体育会系ミーシャにしごかれている
旧KGBの部下達が、震え上がるほど怖がるような人物である空気は画面からは
どうしても感じられないため、脳内補完にもムリが生じています。

逆に長い付き合いの彼らが、今更ながらどうしてここまでオーバーに
反応させてしまうような描き方をしているのでしょう。
「この聖ヨハネの帰還」シリーズ中、ずっと感じていた点で、38巻はそれが著しかった。。。。

上記と重複しますが、一話完結形のエロイカの新たな読者のための説明要素も
入れているのかなー。。。。というのも考えられなくもありませんが……
それは青池先生らしくないかなあ。
「分からない人には分からなくていい」潔さが、青池先生の特長だったはずですしね。

関連記事:
「こちら殺人課!エーベルバッハ警部」

我々含め、人は経験を積んで行く間に変化していくものですから、
青池先生の変化なのかもしれません。

* * * *

辛辣めになりましたが、ストーリーに関しては、
やはり青池先生らしく、組み立てや展開がよく考えられて作り込まれていますよね。何度か読み返せばそれが分かります。

* * * *

……いずれにせよ、話は完結した「聖ヨハネの帰還」ですが、
「あれはどうなったのかな?」と、未解決といいますか、未説明になっているものが
いくつか残っていますよね。
すでに番外編が予定されているとのこと、おそらくページ数の都合で描ききれなかったのでしょう。
あるいは、全くそれとは別の登場人物のその後か、それまでの事なのか。
分かりませんが、気楽に楽しく読めそうです!


* * * *


”ページ数の都合で描ききれなかった”と言って思い出すのが
Z ツェットシリーズの第四話「Das Fraulein, das Z liebte」(The Mss, Z loved / Zの愛した女性) 。
この話の最終シーン付近で、調査対象の女性とヤってしまったことを少佐に感づかれ、雷がおちるかと思いきや、ツェットに静かに説教する少佐ーーーのくだりです。

「単行本」を見ると、詰め込んで終わった状態で(連載時と思われる)明らかにページ数が足りなかったという状態が手に取るようにわかります。
その後に出版されているデラックス版などでは、ページやコマが補完されていて(微妙に絵柄が違うのです!)、ストーリーとして流れも間も、しっかりと自然な状態になっていました。

その「Z-ツェット-」シリーズの完全版、来月14日(金)に発売!
こちらも楽しみです。
好きなZシリーズですので、その際には記事をUPする予定!乞うご期待!!!(笑)
(宣言していて出来ないことがないよう…祈ってね (^_^;) )