22話「聖ヨハネの帰還」連載開始!「ディシス」とは…? | 親愛なるエロイカへ

22話「聖ヨハネの帰還」連載開始!「ディシス」とは…?

親愛なるエロイカへ-No.22 聖ヨハネの帰還

秋田書店 プリンセスGOLD 2009年5月号
表紙:青池保子「エロイカより愛をこめて
No.22 聖ヨハネの帰還」

2年ぶりのエロイカ新シリーズ「聖ヨハネの帰還」の第1回目の連載が2009年4月16日(木)発売のプリンセスGOLD 5月号に掲載。

実はCMX発行の「英語版エロイカ」の記事を書いていた途中だったが、ちょっと横において速報を先に書こう。

やっぱり本編はいいですな。
しまってる。

最近のややハイテンションで少々わざとらしさが気になるコメディシーンも、NATO情報部が動くシリアスな話が背景にあってこそ面白く見られるものではないだろうか?
昨今人気の高いフィギュアスケートも、競技でしのぎを削って厳密な点数を争った真剣勝負の後だからこそ、その後の「エキジビション」がより面白いと思えるのと、自分にとっては同じなのだ。

このGOLDの表紙。色見がライトでキレイ。
青池氏の絵は色調が本当に美しくなった。80年代の重たい色味とは全然違っている。色感って変化するものなのだね。

話の前半では、少佐の部下たちがNATO60周年記念クイズの当てっこに盛り上がり、なおかつ前回の「古城販売作戦」での展示会とライブペインティングの話へと移る。

そこでもA君は未だに伯爵を見て喜んでいた奥さんのことがまだ面白くないようで、
A君の“妻は自分だけを見ていて欲しい”
といった度量の狭さがいっそう露呈している。

A君ファンには悪いけど、前号に引き続いてちょっとイメージダウンかな。
嫌いではないのだが。

それにしても、エーベルバッハ少佐の
エーベルバッハ少佐:(A君に向かって)
君の奥さんに会わせてくれ
2人だけで話をしたい
© 青池保子著 エロイカより愛をこめて「No.22 聖ヨハネの帰還」 プリンセスGOLD P21 2009年5月号/秋田書店
にはおおっ ? !
…といってもそれはA君を追い払うための意図的なものであることは明らかなのだが、
それでもエーベルバッハ少佐は:
  1. A君の妻を誘うフリ でA君を困らせようとしてるのか
  2. 彼女を情報部のキナクくさい仕事の世界に巻き込むフリ
    A君を困らせようとしているのか
彼の意図はどっちなんだか。
あ、いや、そうじゃないな。

その少佐に対してA君が取り乱している理由が:
  1. 自分の妻と少佐が2人きりで会って気持ちが奪われることへの恐れ
  2. 箱入り妻でいて欲しい彼女が、少佐の尋問でキナクくさい世界に
    汚染される
    ことへの恐れ

……のどっちのなのかがよく分からない、といった方が正しいか。

冷戦中のストーリー No.14「皇帝円舞曲」(1987年~1998年ビバプリンセス掲載)での
少佐が伯爵を尋問しているシーンではこんなセリフがあった:
伯爵:
A君の奥さんもタイプだし (少佐に対し)
命を大事にするんだよ A君
奥さんが未亡人になって喜ぶのはだれかわかるだろう
少佐:
だまれえええええーーーーー!!!
© 青池保子著 エロイカより愛をこめて P140-141 16巻 プリンセスコミックス/秋田書店
このセリフに対して少佐は激怒していたのだから、
図星にも見える 妙なリアリティさに面白さ
があったと思うのだが…

確かにその真偽は定かじゃないし、これまでも、これからも青池センセは触れる気配もないが、
そもそもこのA君の “少佐に奥さんを取られるかもしれない”ネタは、
すでに ただA君をおちょくるためのネタ だけになっているようだ。



* * * *
親愛なるエロイカへ-「ディシス(Deesis:請願図)」

「ディシス(DEESIS:請願図)」(出典:Wiki)


ビザンティン美術

さて、このストーリーでは、ロシアの武器密売組織の他に久しぶりにビザンティン美術品が絡む。
伯爵が闇ネットークションで見つけた
ビザンティン美術で重要な図像
「ディシス(とりなし)」
の一部である洗礼者ヨハネ像。
その洗礼者ヨハネの顔の向きに隠された意味を追うような展開である。

今回はビザンティン学者の浅野先生に協力*をいただいているとのこと、さすが
しょっぱなからやたらと学術度が高い

これがエロイカをプリンセスの中で浮かせている理由の一つでもあるのだ。

タイトルの「聖ヨハネの帰還」のヨハネとは、「ディシス」の中の洗礼ヨハネのことを指しているのか…
ロシアの武器密輸組織とビザンティン美術の「ディシス」のつながりは、
ビザンチン学界の最高権威のマークス教授が物語のキーマンの一人かな?!

今後の展開が気になるところ。

(*:扉絵にはクレジット記載は特になし。)

* * * *

最後に、幸いにも 象牙トリプティックの「ディシス」 の写真を見つけることができたのでご紹介。
かなり込み入った彫刻である。その上象牙製なんだから!
聖母マリアと洗礼ヨハネが上げている手は、人類を代表して嘆願している意味があるとのこと。

親愛なるエロイカへ-象牙トリプティックの「ディシス」

象牙トリプティック「ディシス(Deesis:請願図)」10世紀、ルーブル美術館 (出典:Wiki)


久しぶりの本編、出だしから結構つまってますな~。

女装強盗の長髪くん、ちょっと気になりませんか。カツラをとった姿が見たい。
青年感が、伯爵が目をつけたヒゲのないヨハネのモザイク画に似てなくもない。


次号は7+8月号に掲載、6月16日(火)発売です!!

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