僕が何者かを書くのを忘れた。
職業は、精神障害者の社会復帰施設に勤めている。
趣味は、映画・演劇を観るのではなく創る方。
何故それを職業にしなかったのか…。
食えなかったから。
映画は、小学生の頃から作っているから何本制作しただろう…。
演劇も、大体2年間に一本くらい上演しているから…かれこれ…。
僕が今の会社の門を叩いた時は、精神保健福祉の世界は惨憺たるものだった。
その作業所は印刷を生業としていたが、職人さんから
「アンタ若いのになんでこんな所に来たの?」
と、言われた。
「新しく電子編集を導入するので、是非君の力を…」
と、施設長に言われた。
部署に行ってみると、数人の女子がひとりの女性のもとに集まって何やら質問している。
ドアが開くと皆の視線が一斉に僕に集まった。
皆の中心にいたその女性が、近づいてきた。
身長は僕よりある大柄の女子だった。
「相談室ソーシャルワーカーの若松です。」
「ど、どうも。」
と、お座なりの挨拶が交わされる。
僕の壮絶な体験の、初めの一歩だった…。