短くなった煙草を灰皿に押し付ける。

そう、あれが始まりだった。

小・中は同じ市内の学校に通った。

もともと要領がよく、何でも器用にこなす優大に負けたくなくて

必死に勉強し、なんとか高校も大学も同じところに入学した。

正直、挫折しかけたが、

「すっと一緒だよな」と呟く寂しそうな横顔と

「やったな!また一緒に通える!」と

無邪気に喜ぶ優大のおかげでここまでこれた。

流石に会社まで同じとはいかなかったが

二人とも大手会社に就職している。

内定した日、俺も周りも飛び上がって喜んだが、優大は違った。

何故か一人浮かない顔で俺をホテルに呼び出し

そして、ベッドに誘った。

それからは毎週一度はこうしてホテルで会い、身体を繋げている。

ここまで俺に執着する優大が怖くなる時もある

もてるくせに今まで彼女と歩いているところを見たことがない。

それに彼女が出来たと報告した時の優大の目はやばかった。

でも、もう俺も優大も25歳だ。

三年も続けたこの関係を終わらせるべきだろう。



優大の寝顔を見つめおでこにキスを落とすと

決心したように花束に手を伸ばす。

適当に一本抜き取り、20年前に優大がしたように

指で一枚の花びらを掴んだ。

「ずっと一緒」

花びらが一枚静かに床に落ちる。

「ずっと一緒じゃない」

もう一枚。

大人の男性の節くれだった指が言葉と共に

一枚一枚花びらをもぎ取っていく。

あの時と同じようにゆっくりと。

「ずっと一緒」

最後の一枚。

「すっと一緒じゃない」


最後の一枚と共に花びらを失った茎を捨て、立ち上がる。

シャワーを浴びて部屋に戻ると、まだ優大は寝ていた。

身支度を整え、花束を抱える。

ドアを開けると、最後に振り返り精一杯の笑みを浮かべて

最後の最後に気づいた本当の気持ちを呟く。



「さよなら、ゆうくん。好きだったよ。」










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