占い
占いへ行った。とうとう行ってしまった。映画デートをキャンセルし、ひさしぶりに会う女友達を連れて。それくらいせっぱつまっていた。彼のことだけが頭を支配していて、身動きがとれなかった。いてもたってもいられなくて、どうにかしたかった。どうにかしてほしかった。なんだっていい、誰かの言葉が聞きたかった。右でも左でもいい、ただ今この場所にいるのがいやで、動きたかった。筆でビッとしるしをつけ、そこへ指をさしてほしかった。こうしなさい、と言ってほしい、ただ今のこの宙ぶらりんな状況がとんでもなく私をじりじりと迫らせているようで、一刻もはやく逃げたかった「いい思い出としてとっておきなさい」そんなふうに言われた気がする。過去にとらわれている、先に進んで、とも。私をとらえるにはじゅうぶんすぎるくらいに、私にとって大きな出来事だった。きっと彼にとってもそうだろう、そうに違いない、そうあってほしい、そんな期待は軽く裏切られた。彼は行動を起こしていなかった。タロット占いだったけど、私の気持ちはまっすぐだったという。彼は、結局どうだったのだろうか。釈然としないまま、しかし思ったより良くはなかった。現実だなあと感じる。でもどこかほっとした。なんでだろうか。「縁があればまたあえる」と彼女は言った。縁。縁があれば、きっと会える。待つしかないのか。縁を信じて、偶然を待つしかないのだろうか。胸が苦しくなった。縁。そんなもの、あるに決まっている。あんな出会いしたんだもの。縁がなくてたまるか。縁なんて自分でつくってやる。会いたい。縁があれば。縁。縁。縁。たぐりよせて、絶対に合ってやる。今はそうとしか考えられない。信じるしかない。信じるしか方法がないいまの私は、どんな女の子になっているだろう?誇り高く、凛とした、素敵で美しい理想の女。そんな女になれているだろうか。みじめで不安げで、かげろうのように存在している彼の姿を、一目見ようともがきあえいでいる、かわいそうな女にはなっていないだろうか。わからない。私は自分が分からない。どうしたらいいのか、どうしたいのか。会いたいしか、今は考えられなくて、それがまたより一層、つらくてたまらない気持ちになる。「彼のことが好きというよりも、あのときの空間が好きなだでは」とのこと。そう、私はあのとき、あの場所で、ああいう行為に及んだことを、嬉しく思っている。高揚、羞恥のなかにある優越、幸福。幸福。たしかに私は幸福だっただろう。高揚もあった。ただの旅の一環と割り切ってしまうには、それは少々重すぎた。私はあの時間、あの空間に恋をしてしまった。だから私は今、また彼と再会して同じことをしたいと思っている。場所は違えど、彼と通じたいと思っている。私はあの素敵なフライトを、いい旅の思い出としてしまうことはまだ到底できそうになかった。