60兆の『社会』 人体 ミクロの大冒険 | 医療事務会社のサラリーマンのブログ

医療事務会社のサラリーマンのブログ

医療事務業界(会社の仕事です)や読んだ本、日々気になる出来事について綴ります。
なお、このブログに記載していることは、あくまでわたくし個人の意見であり、会社の意見を反映したものではありません。

人体 ミクロの大冒険 
出版社 角川書店
著者 NHKスペシャル取材班 
出版年 2014/4/2
価格 1,500円(税別)
評価 ★★★1/2

このNHKスペシャルのメイキングオブの位置づけです。
手法としては以前の第2弾という感じです。
前回についてはこちら

昔から「氏か育ちか」
という言葉が良く使われています。
前者は遺伝子として比較的一般にも知られていますが、
後者は今まであまり解明がされていませんでした。
でも近年細胞などを生きたまま観察できる
バイオイメージング
などの技法の発達により、
経験を反映する仕組み
に関して新たな知見が表れている様です。
そしてそのしくみは“細胞”から産まれています。
本書及びドキュメンタリーはそれを記載、反映したものです。

自分としては興味深かったのは以下。

■エピジェネティクス
“経験を反映する仕組み”の
カギとなる概念の様です。
DNAの塩基配列を変えることなく、折り込んで塩基配列を
読めなくしてしまう事で、遺伝子を「働かせる/働かせない」ようにし、
機能を替えることを言います。

そしてこれらは、必ずしも自分たちがこの世に生まれてからではなく、
母親の胎内にいる時から行われている可能性が高いことがわかってきました。
例えば、母親の胎内で飢餓状態(本当に食べ物が無かったり、極度のダイエットをしていたりした場合)
を感じたら、子どもは胎内にいる時から、間葉系幹細胞が脂肪細胞により多く変わります。

また、母親がPTSDを経験した子供は、胎内においてコルチゾール受容体を多く持ち、
そのため生まれた後も強い不安感を抱きやすいと言った研究報告がある様です。

これらは、一見不利な変化なようにみえますが、予測される環境下において
生き残りやすい可能性
を高めるためには、賢明な戦略と言えます。

■思春期の意味
細胞的には人を
自分の成長から、次世代を生みだす姿に替える
時期だそうです。
人は生命の危機に関するものについては、比較的早い段階で
環境の変化に適応しますが、そうでないものについては、
比較的年齢が遅い段階まで成長し続けます。
したがって、それぞれの機能の“臨界期”が異なります。

例えば、
視覚野/聴覚野⇒運動野⇒前頭野
の順番に臨界期を迎えます。したがって思春期というのは
辺縁系は成長しているが前頭野の成熟はまだこれから、
というある意味アンバランスな状態なので、色々な
その時期特有の問題も発生します。

■老化の意味
成長と寿命は相殺関係にあるみたいです。
老化は
・体内の免疫細胞の動きが鈍くなったり、
・敵と味方の区別がつかず自分の胎内を攻撃するようになること
が一因で発生するようです。

免疫細胞の司令塔的役割を担うT細胞は、
胎内のあらゆる種類の分子が含まれている
胸腺でもまれて該当する分子がなく、
体内に出ていったもののみがなることができます。

でもこれは生命の保持のためには非常に重要な仕組みですが
決して効率的な仕組みではありません。
したがって胸腺は10代までで衰え、後は今まで作った
T細胞で何とか免疫機能を保持します。

だから年を取るにつれ通常の機能をしないT細胞の割合が多くなり、
老化につながる様です。

細胞にとって思春期以降というのはある意味“余生”にあたるようです。

細胞にはあらゆる設計図が遺伝子という形で含まれており、
それをあたかも自分たちの意志で機能を選択しているかのように見えます。
でも会社でも一人一人が全体像を把握し、必要に応じて
自分に求められる機能を発揮する様にできないものかなぁ
と思いました。
細胞の事がもっとわかれば、それが社会や会社にも生きる気がしました。
人体 ミクロの大冒険 60兆の細胞が紡ぐ人生 (ノンフィクション単行本)/KADOKAWA/角川書店

¥1,620
Amazon.co.jp