またしても重いテーマをw
先日イレッサの訴訟の判決が出ました。イレッサの製造メーカー(アストラゼネカ)に賠償の支払いを命じる判決でした。
イレッサの何が問題であったかというと、副作用の一つである間質性肺炎でたくさんの人が亡くなられたということです。
その注意喚起が不十分であったということで製造メーカーに賠償の支払いを命じたということです。
注意喚起が十分だったかどうかは意見が分かれるところです。
添付文書には間質性肺炎の記載はありました。
記載があるだけでは不十分だというのが今回の判決です。
この判決には大きな問題があります。
1.今後製薬メーカーは副作用の危険性を添付文書に記載する際にはより強く記載する必要がある。
強く記載されれば、現場の医師・薬剤師は患者への説明義務が生じ、
(記載されていないからと言ってないというわけではありませんが、不必要に副作用の説明の必要が増える)
患者の不安をあおることになる。
2.そもそも抗がん剤は副作用はかなりたくさんあるものです。
訴訟を起こされ賠償金を払うくらいなら日本で承認を得るメリットは何もなくなってしまいます。
さらなるドラッグラグを生じます。これは国民に対して何の利益ももたらしません。
3.添付文書に書かれていたことを医師が説明しているはずですがそれが不十分で、
しかも、抗がん剤という危険な薬を使っているのであるからもっと注意をするべきだった。
という意見も一部あるようです。が、それも間違いです。
その責任を医師に押し付けるのであれば、医師は抗がん剤を使いません。
使わなければ副作用の出る確率は0%なのですから。
それを解決するために「保障制度」を新たに本来は作る必要があります。
医師やメーカーに過失があろうとなかろうと必要な保障をする制度です。
副作用などの被害、もしくは医療過誤と思われる被害にあわれた方を速やかに
救済するためにはこの制度が必要です。
この制度で一番大事なことは、「過失の有無は関係ない」ということ。
そして、「裁判にもちこまないで一定の保障を支払う」ということです。
医療は不確実なものです。明らかに悪いといことが分かることは少ないです。
最善の努力の結果、思わしくない結果が出ることもたくさんあります。
そこで犯人探しをするということは何のメリットもなく、ただただ医療者の疲労を増やすだけです。