藤谷美紀:死の恐怖
藤谷美紀ちゃんといえば、ご存知「国民的美少女コンテスト」の第1回グランプリ受賞者である女優です。
第1回グランプリは後藤久美子じゃないのか、と誤解している人が多くいるようですが、順番的には、
後藤久美子がデビュー
→ たちまち人気に。国民的美少女と呼ばれるようになる
→ その名にあやかって国民的美少女コンテストが開催
→ 藤谷美紀が第1回グランプリに
という経過をたどっており、後藤久美子は国民的美少女コンテストの受賞歴はもちろん、出場経験すらまーったくありません。覚えておきましょうね。
藤谷美紀ちゃんは、1973年9月15日生まれの名古屋市出身。
今回とりあげるのは、彼女がまだ15歳だった1989年2月の話です。
2月10日、東京のにっかつ撮影所のスタジオで行われていた撮影で、美紀ちゃんはワイヤーによって地上約2.5メートルの高さに宙吊りされていました。
その作品名は『グーバルピス・インナーズの冒険旅行』……耳慣れないタイトルなのは当然でありまして、これは映画でもドラマでもなく、同年名古屋地区で開催された『世界デザイン博』で上映される予定のアトラクション映像です。巨大な怪獣の体内を冒険するというストーリーでした。
ワイヤーに吊るされた美紀ちゃんがこの怪獣の鼻の穴から出てきた直後、その鼻の穴からゴーッと炎が噴き出しました。
そういう演出? いいえ違います。
鼻の穴からはスモークだけを出す予定だったのに、そのスモーク装置の火が何かの手違いでセットの一部に引火してしまったんですね。
この手の特撮のセットは往々にして燃えやすい素材で作られているものです。火はあっという間に燃え広がり、スタジオの天井にまで燃え移りました。
もっとも恐怖したのは、いうまでもなく藤谷美紀ちゃんその人。
「助けて! 早くおろして!」
絶叫しました。そう、出火時の彼女はワイヤーで宙吊り状態。自分では逃げることもままならない完全無防備です。
このままスタッフ全員が美紀ちゃんを置き去りにあわてて逃げ出していたら、わずか15年という彼女の短い生涯はここで終わっていたかも知れません。
幸運にもそうはならず、スタッフに助け出された美紀ちゃんはスタジオの外に逃げ出し、事なきを得ました。しかし、当時の彼女のトレードマークだったロングヘアーは一部チリチリと焼け焦げてしまい、また逃げる途中に軽いケガもしました。煙も少し吸い込んだそうです。
彼女の体からワイヤーを外す作業をしたスタッフは大ヤケドを負ったとのことですから、火災のすさまじさ、そしてその火炎と美紀ちゃんの体との距離の近さがわかります。
この火災により20代の照明助手1名が死亡。負傷者は25名。
思わぬ大惨事となったこのアクシデントについては、当時ワイドショーや週刊誌などを中心にかなり大きく報道されました。
肉体的には軽傷で済んだ美紀ちゃんでしたが、精神的ショックのほうはしばらく収まることがなかったそうです。
筆者は『世界デザイン博』には足を運んでいません。したがって藤谷美紀ちゃん主演のこの映像を見たことはありませんし、そもそもこの映像が本当に公開されたのかどうか、ということすら知りません。
怪獣の鼻の穴を探検するこのシーンの撮影は出火時点ですでに完了していたのかどうか? 終了していないなら、後日撮り直しをしたのか? 別の撮影方法を使ったりしなかったのか? あるいはシーンごとカットしたのか? 死者まで出した事故のあとだけに企画そのものが打ち切りになったという可能性もあるのではないか?
筆者が知るのはあくまで火災直後のニュースのみ。その後日談はまったくわからないのです。
1989年当時『世界デザイン博』で藤谷美紀主演のアトラクション映像を実際に見たという方、ぜひその詳細をお教え願いたいものです。
それから18年の歳月が経とうとしていますが、このあと藤谷美紀ちゃんがワイヤーを使う演技に挑戦したという話を筆者は聞いたことがありません。ひょっとして何かのトラウマになっているとか……そんなことはないんでしょうか?
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