組織運営について考える | Flicker's Style

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好きこそ物の上手なれって言うじゃない。

こんな記事を見かけたので、せっかくなので組織マネジメントに対する私のスタンスを書いておこうと思います。

組織運営はインフラを提供する役割である
※ここで言う組織運営というのは現場以外の役割全てを差します。

生活するためには水道や電気や電車やバスが必要です。
開発者は開発をするために、開発PCやネットワーク、WikiツールやSCMのような開発環境が必要です。
もちろん自分で用意することもできますが、それらがインフラとして提供されていれば余計な手間を考えずに済みます。
他にもQAチームなどの開発をサポートしてくれるサービスがあると、開発品質は上がるでしょう。

組織運営というのはそれらのインフラを充実させることによって、開発者の作業をより効率的に行う環境を整える役割があると考えています。



ただしそれらのインフラを強制すると逆効果になります。

私達は水道水を使うこともできるし、ミネラルウォーターを使うこともできます。
寒くて部屋を温めたければエアコンを使うこともできるし、ガスヒーターを使うこともできます。

同じように開発者はWikiを使うこともできるし、Wordを使うことが必要な場合もあるでしょう。
チームのコンテキストによってgithubやbitbucketではなくsubversionを選択したほうが効率が良い場合もあるでしょう。(そう長くは続かないだろうけど)
コンテキストに応じて様々なツールを組み合わることによりプロセスはチームに局所最適されます。
それが開発効率を上げる一番の手段だと私は考えています。


プロセスの標準化やツール類の矯正は開発速度や効率、創造性を下げます。
なぜなら、プロセスの標準化やツール類の強制の大体の目的は組織運営がチームを管理下に置くことを目的としているためです。



なぜ管理しようとすると逆効果になるのか?

昨今のWEB業界では大量の開発プロジェクトが生まれては消えていく運命にありますが、それらのプロジェクトはメンバーも含めてすべてがコンテキストが違います。
コンテキストが違う大量のチームを管理するのは非常にコストがかかります。

最初は数人のマネージャで管理していればうまくいくと思いますが、急成長する組織ではあっという間に破綻するでしょう。
大量のチームをそれぞれのコンテキストに合わせて、且つ組織拡大のスケーラビリティを保ちながら管理下に置くのは非常に困難です。
だいたいはそこで共通の基準を設けることになります。

コンテキストが違う物事を同じ基準で管理しようとするとどうなるか?
低いレベルの基準で管理しようとすると、組織が大きければ大きいほど最大公約数的な恐ろしく低いレベルでの基準で管理することになるでしょう。
逆に無理やり高いレベルで基準を作ればほとんどの開発チームは管理コストに払う作業に振り回されることになるでしょう。

残念ながら組織運営ができるのは必要なインフラを整えて、見守ることのみだと考えています。
何が必要かは個々のチームの活動により決定されます。
組織運営が用意したインフラを誰も使わなかったら、組織運営側の読みが外れたということになるので、インフラ整備においては明確なゴール設定とその計測方法についてのノウハウが必要になります。

ゲームのシムシティでは個々の住民をコントロールすることはできません。
インフラを整えて見守ることによって都市を発展させる必要があります。
それが組織運営ということだと私は思っています。

完全に管理下に置くのは不可能ですし、無理やり管理下に置こうとするのは逆効果だと考えています。


組織運営において一番重要なこと
人を育成する環境を作ることです。
ツールとかフレームワークはこれっぽっちも問題ではありません。

人を育てるしか方法はありません。
組織のビジョンを伝え、カルチャーを共有し、技術のディスカッションを行い、同じ課題に取り組む。
この環境を整えればおのずと組織レベルは必ず上がるでしょう。

逆にここを軽視すると、経験が浅い開発チームが大量に作られカルチャーは破壊されます。
カルチャーのないチームは成果が出せないので、組織は管理せざるを得なくなるでしょう。
こうしてマネージャが生まれます。
この繰り返しで組織ヒエラルキーは増加していくと考えています。(大企業病の出来上がり!)

私が組織運営に関わる時は「個々のチームは管理できない」という前提で物事を考えます。
「そうはいっても管理しないとうんぬんかんぬん」「とはいえ、好き勝手させるとほげほげ」ではなく「管理できない前提」なのです。
農業を行う時に、天候はコントロールできない前提に立つのと同じです。
管理しないと解決できない問題というのは、その問題以前の大きな問題があります。


管理に頼らない組織運営というのはチャレンジと創造性が必要で、失敗も多くなるとは思いますが私は取り組むべき大きなメリットを持っていると考えています。