今年は何がいいかな?
大切な人たちに、感謝と優しさを込めて。
二人で贈り物を準備する。
初めて二人ですごしたクリスマスの次の日。
慶喜さんから、たくさんの贈り物が置屋に届いた。
あの日持ってこられなかった贈り物。
その贈り物たちは多種多様で。
お菓子に雑貨。中には、駒や福笑いなんてお正月のおもちゃまで。
町中のお店で端から買い集めたようなありさまで。
でも、どこかで拾ってきたのかもしれない・・・きれいな小石や、もしかしたら、これは慶喜さんの思い出の品だったりするのかな?というものまで含まれていて、ひとつづつ、どうして贈ってくれたのかを考えるととても幸せな気分になった。
でも、あまりにもたくさんで秋斉さんは呆れていたし、花里ちゃんはなんだか興奮して、菖蒲さんも上品にだけど笑っていた。
慶喜さんから、短かったけれど、今度は私にも読める文字で「みんなでわけてね」っていう文がついていて、お菓子や雑貨は置屋のみんなでわけさせてもらった。
みんな。
私の作った贈り物も、慶喜さんからの贈り物も。
無邪気に喜んでくれた。
それから、毎年とはいかなかったけれど、クリスマスには二人で贈り物を考える。
ささやかでも温かい気持ちをこめて。
二人でサンタクロースの真似事をする。
こっそり、枕元に届けた贈り物。
朝。
サンタクロースからの温もりを。
喜ぶ笑顔に私たちは温もりをもらう。
「今年も、喜んでくれるでしょうか?」
「そうだね。きっと、幸せを信じて願いをかける日になるよ」
「そうですね」
私たちは顔を見合わせて微笑みあう。
生きていくのは全部がみんな、ずっと幸せではいられないけれど。
だけど、幸せを願う気持ちは、先へ進むために必要だと思うから。
小さな希望を、クリスマスに。
それが、サンタクロースを夢見る無邪気な想いから願った幸せなら、きっと暖かいから。
私たちはサンタクロースの真似事をする。
「メリークリスマス。○○」
慶喜さんはそう言って、私の鼻の頭に小さな口付けを落とす。
はじめてクリスマスの約束をしたときみたいに。
お互いの為にクリスマスを過ごした時みたいに。
毎年、慶喜さんは私の鼻の頭にキスをする。
今年も、また。
私は、そのくすぐったい柔らかさに笑みを漏らす。
「ふふ…メリークリスマス。慶喜さん」
「あれ。もう、赤くならないんだね?」
からかうみたいに慶喜さんは小首を傾げて私の顔をのぞき込む。
「え?」
慶喜さんの指が私の鼻を、つんとつつく。
「いつも、○○は俺が口付けすると、そこから真っ赤になって…ふふっ」
慶喜さんは、途中で耐えかねるみたいに笑いをもらす。
「もしかして!トナカイみたいって…?!」
私は、慶喜さんの鼻の頭への口付けの意味をはじめて知って、怒ってみせる。
「ごめん。ごめんね。だって○○があんまりにもかわいい反応をするからさ」
慶喜さんはクスクス笑って、私をなだめるみたいに頭を撫でる。
そうされると、私はもう怒れなくなってしまう。
「お前はいつも、素直でかわいいね。ほら、そんなにすねないの。ねぇ、じゃあ。」
形の良い目が、すっと細められて目尻が柔らかく緩められる。
濃艶な色気をにじませて、私の肩に腕をもたせかける。
私は、あのときと違って、もう怖がらない。
何かを期待する胸の震えとともに、慶喜さんの腕に手を添える。
満足そうに慶喜さんは微笑んで。
「もう。○○の鼻へ口付けしないことにする?」
くるりと瞳の色を悪戯にかえ、私の鼻に自分の鼻をこすりあわせてくる。
「・・・」
甘える仕草に、私は触れ合った部分から、赤くなる。
「やっぱり、かわいい」
クスリと笑った慶喜さんが指で私の唇とそっとなぞった。
「ねぇ。こっちかのほうがいいかい?」
私は、小さく頭を振った。
「・・・どっちもください」
慶喜さんは、温かく優しく笑って、私の鼻をまたつついて、それからそっと鼻の頭へ口付けを落とす。
「もぅ。ほんと。たまんない」
ぎゅっと、慶喜さんの腕に抱きこまれて、私は目の前にある慶喜さんのくしゃっとなった全開の笑顔に幸せになる。
「○○。今年は、何をくれる?」
また、色気をはらんだ慶喜さんの瞳に、鼓動を早めながら私は、あのときは言わなかった、今では何度伝えたか分からない言葉を口にする。
「慶喜さん…大好きです」
「俺も。○○のことが好き」
慶喜さんは、愛しい眼差しで笑ってかえしてくれる。
いつも。いつも。
願って、それからお互いに築いてきたもの。
自分の欲しいものは、もう願わない。
サンタクロースに願うのは、別のことになった。
そっと、目を閉じて願いをかける。
慶喜さんの願いはなんだろう?
『俺の願いも、お前の願いと一緒だよ』
慶喜さんの私に触れた唇が、そんな風に伝えてくれた。