クリスマスツリーこのお話は 23日公開クリスマスイベントにフライング参加中クリスマスツリー
23日にみなさんのクリスマスのお話やイラストとかその他色々のお楽しみが公開されます。
当日までの日常を連載中です。当日分のみでも読んでもらえる予定です。

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  【クリスマス企画】
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11月24日 15時


師走を目前にした11月。
先日、少しだけ積もった初雪はもう姿を消していたけれど、毎日寒い日が続いている。
私は幕末に来て、はじめての冬を迎えていた。





「〇〇?」
藍屋さんの前で○○の帰りを待っていたオレの前を〇〇が寒そうに身を縮めて早足で通り過ぎた。

「あ・・・翔太君?」
声をかけると足を止めた〇〇が視線を彷徨わせて、オレを見つけてからふんわりと微笑んだ。

「久しぶり。〇〇」

久しぶりに会った〇〇は、少し大人びて綺麗になったと思う。

「本当。久しぶりだね。いつ京都に?」
「うん。さっき。実は移動の途中で寄っただけで、また明日の朝には立たなきゃいけないんだけど」

忙しい日程の中、龍馬さんに無理を言って〇〇の様子を見にこさせてもらっていた。
〇〇に会う事はオレにとっては、龍馬さんについて色々な所に行くのと同じくらい大事なことだった。
小さい頃から・・・二人で幕末に来てからは特に、どうしても守りたい存在。
「そうなんだ。忙しそうだね?龍馬さんは元気?」
「うん。元気だよ。もうすぐここに来ると思うんだけど・・・〇〇は風邪とかひいてない?」

無理を言って・・・といっても、本当は龍馬さんも○○に会いたがっているんだけど。
〇〇の笑顔を見ると、やる気が出るそうだ。その気持ちはよくわかる。

「うん、大丈夫だよ!翔太君も気をつけてね。」

ほら、こんな風に満面の笑みを見せてくれるから。

着物姿の〇〇の身のこなしは制服の時と違ってなんだか艶めいて見える。
だけど、この〇〇の明るい笑顔は、前と同じでオレに元気をくれた。

「うん、それでさ。これ」

隠し持っていた鹿の人形を〇〇に向かって差し出した。
このまえ見つけた。布で出来た鹿の人形は、全身は白っぽい色の布でできているのに、鼻の部分だけ赤い布が使われている。

「かわいい!鼻が赤くてトナカイみたい。」
「○○ならそう言うと思った」

オレと同じ事を思って更に笑顔になる〇〇にうれしくなる。

「今頃、向こうはクリスマスの飾り付けがされてる頃なんだろうね。」
「だろうな。でも、こっちは旧暦で、ひと月くらい暦がずれてるから・・・」
「そっか。じゃあ今日がイブかもしれないんだね。あ・・・だから、これクリスマスプレゼント?」

この鹿の人形を見つけたとき、すぐに〇〇のよろこんでくれる顔が思い浮かんだから、そのつもりで持って来た。

「うん。○○、クリスマス好きだっただろ?毎年はりきって飾り付けしてたもんな」
「うん。ツリーにケーキにプレゼント!みんなでパーティーとかしたよね。お正月より楽しみだったかも・・・」

〇〇が、クリスマスを思い出すように少し遠い目をした。
その表情が、少し寂しそうに見える。

「あ・・・ごめん。さみしくなっちゃったか?」

〇○ に寂しい思いをさせたかったわけじゃなかったのに。
ただ、喜ぶ顔が見たかっただけなのに、オレは・・・

「ううん!大丈夫だよ。今はちょっとクリスマスを思い出してただけ。お正月がまだだひと月くらいあとだから、なんだか実感がないけど・・・」

と、〇〇は笑って慌てて否定した。
その笑顔はとても明るかった。

「そうだよな。キリストの誕生祭だっけ?それよりも年末のイベントってイメージだよな。でも、オレと龍馬さん、しばらく江戸に行くから年末は京にいられないんだよ。だから、〇〇にあげときたくてさ。」
「うん。ありがとう翔太君。かわいくてうれしいよ。」

大事そうに、鹿の人形を胸に抱く〇〇の方が、俺の目には可愛く映って真っ直ぐ見るのが気恥ずかしくて少し視線をそらしてしまった。

そらした先で、手を振る龍馬さんを見つける。

「おぉ~い。翔太ぁ。〇〇!」

龍馬さんが手を振るとチリンチリンと音がした。







翔太と〇〇が置屋の前で仲良さそうに話しているのを見つけて、手を振って呼びかけると〇〇が笑顔で迎えてくれた。

「あ。龍馬さん。こんにちは」
「〇〇、久しぶりじゃのぅ。しばらく見ない間に、また綺麗になったかの?」
「本当ですか?ありがとうございます」

目元を赤く染めながら礼を言う〇〇を見ると、どうにも抱き上げて抱きしめたくなる。

「龍馬さん、遅かったですね。どうでした?」
「おう。そうじゃそうじゃ。〇〇これを」

翔太に言われてから思い出して、手に持っていた鈴のついた緑色の組紐を〇〇に見せる。

「綺麗な組紐ですね!」
「くりすますぷれぜんとぜよ。」

翔太が言っていた言葉を真似て〇〇に言うと、〇〇が驚いた顔をしてわしを見上げた。

「え?私に?ありがとうございます」
「全く。翔太がこっそり抜け駆けして、その人形を買うたのを隠しとったから、わしは慌てて探しにいってきとーせよ?」

本当は翔太が人形を〇〇にやるんじゃろうとも思っていたが、京に着いてから『くりすますには大事な人に贈り物をする』のだと言うので、こうしてはおれんと思ったわけだが。

「翔太が『となかい』には鈴がついちょるゆうで、ちょうどええのが見つかったぜよ。その鹿に結うたらええ。」
「わざわざ、私の為に・・・2人とも、ありがとう」

〇〇は、可愛らしい顔で本当に嬉しそうに笑った。

「ええがや。〇〇の可愛らしい笑顔が見れたからのう」
「そうですね。じゃあ、そろそろ行きましょう龍馬さん」
「そうじゃな。また来るでの」

わしは〇〇の明るい笑顔をみると元気になれる。翔太も〇〇と同じように明るく笑うが、女子にはかなわん。

「急ぐ日程じゃったが、ちょびっとでも会えてよかったな」
「はい。」





私は、赤鼻の白いトナカイの首に鈴のついた緑の組紐を結んだ。
「本当に、クリスマスにぴったりでかわいい」
私は、寒さも忘れて嬉しい気持ちで置屋に戻った。



に続く



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龍馬さんの語りは。。。難しい。
ゆるーく見てやってください。