くちびるを離さずに彼は器用にあたしのローブを解いて
肌の柔らかい部分に、指を伝わせて確認している。
あたしが反応する場所に口をつけて吸い上げ
赤い目印をつけている。
見えないところにしてるのが分るから
「見えるところにもして」
って言ったのに。
「誰に見せるの?これは俺の印だから俺とカオリがわかってればいいでしょ」
ってもっともらしい事言うから。
『みんなに見せたいからつけて~』
とは言えなくなっちゃった。

そして、良いことを考えついた。
だったら、あたしが付けちゃえばいいんじゃぁん。
彼の肩に手をまわして、軽く身体を近づけて
鎖骨くぼみのすぐ下に噛み付いて…って。
思わず
「間違えたっ」
って声に出ちゃってた。

聞こえてるはずなのに反応しないタプ…。
今度こそと同じ場所にくちをつけると
彼はクスクスと笑い出してる。
カオリが必死に痕をを残そうとしてるけど
キスマークって技術がいるものなのかな?
全然赤くなってくれない。
「くすぐったいし~」
とますます笑い出す彼になんだか腹が立ってきて。
「も~、いらない」

と背中向てシーツを引き上げ
ベットの端までもぞもぞと移動して
丸まって寝ることに決める。
なんかも~一気に冷めた!!!

キングサイズのベットはこういう時に便利だよね。
身体を離す。
彼の体温が伝わって来ない所だと
少しは客観的に見れるような気がする。
彼が後ろからハグしてくるまでは…。

「カオリ~」
ってそっと耳元に、低音の彼の声かかるだけで。
身体が反応してしまう。
でも、彼がまだ笑っているって分るからほんとヤダ。
キスマークに拘ってる理由は本当にちっぽけだけど
あたしにとっては凄く大事な事

朝はいつものように変わらずに来て、彼は自分の世界に帰ってく。
今日のことだってきっとすぐに忘れちゃうんでしょ?

けど、あたしはきっとそこから進めない…。
夢だったとは思いたくなくて。
記憶は曖昧ですぐに薄れてしまうから。
印をつけて欲しかった。
手首に残る傷だけじゃなくて
直接触れられた痕が良かったの、ただそれだけ。

反応しないあたしにはお構いなしに
彼の腕はあたしを深く抱きかかえて。
肩のくぼみに顎を乗せてくる。
それだけじゃ足りないのか足まで絡めてきて
羽交い絞め状態だし何コレ?プロレス?

さっきまでのあたしなら
つられて笑い出してたよね…きっと。
だけどそんな気分にはなれなくて。
名前を呼ばれても、言葉もでなくて
額からこめかみ、耳元にまで流れるあたしの髪の毛を
彼の指が遠慮がちにかきあげて
彼のくちびるがゆっくりと音を立てて移動してくる。
それなのに、まだ動けない…。
首筋の一番くすぐったい場所に渋い痛みを感じてる。
そして
「これだろ?」
と偉そうに言う。
痛みを感じた場所を手で確認しても。
触っただけでキスマークが分るもんじゃないし。

あああああ~~~それにしてもムカつく!
あたしのことなんて
興味ない風だったでしょ?
わかってなさそうだったのに
して欲しいことすんなりされちゃうと
一気に気持ちが噴出して
涙に変わって溢れてきちゃうよ。
それを見られたくなくて彼の胸に顔埋めて
「あ~~~~ほんと嫌い」
って言っちゃうのは
バランスを取りたいからです。
もう好き過ぎて止まらない…。

だけどそんな自分を見られたくなくて。
けん制したいの、そう言葉だけでも…。
強がったら気持ちの揺れも少しはましになってくれそうで…。