季節はずれですが、台風の話 | 科学は面白い

季節はずれですが、台風の話

 季節はずれの話ですが、年が改まると、台風の番号もリセットされて1からになるのはご存じと思います。昨年の最初の台風KONG-REYが発生したのは3月31日ですから、まだまだ鬼の笑う話かも知れません。


 えっ? 「KONG-REY」って? ハリケーンじゃあるまいし、台風は番号で呼ばれるのではなかったか? と思われている方も多いと思います。事実私は、「番号もリセットされて1からになる」と書いたばかりです。ですが、台風が「15号」などと番号で呼ばれるのは現在では日本国内の話で、2000年以降、国際名称は、WMOの台風委員会(Typhoon Committee)が作成したリストによって、台風の国際名称(アジア名)がつけられており、これが国際的には通用しています。例えば、2004年に西日本に上陸して死者不明98名という大きな被害をもたらした23号台風は、たまたま日本が提唱した名前、TOKAGEがつけられています。


 ところが一昨年、アジア名のない台風が現れました。これは、北東太平洋で発生したハリケーンが西へ西へとすすみ、東経180度を超えて、台風に変身?したためで、ハリケーン時の名称、IOKEがそのまま使われました。この台風は、南鳥島にかなり接近しましたので、私の知る範囲で、「日本に最も接近したハリケーン」ということになります。


 さて、ハリケーンは、北東太平洋、北大西洋で発生した熱帯低気圧の呼称で、北西太平洋と南シナ海で発生したものは台風、インド洋、南太平洋で発生したものはサイクロンと呼んでいます。統一すれば良さそうなものですが、歴史的経緯で、なかなかそうはいきません。もっとも、これら全体を呼ぶときには「トロピカルサイクロン」と呼ぶことがあります。


 「ちょっと待て。南大西洋が抜けているぞ」と思われた方、ご慧眼です。実際私はわざと抜いて書きました。実は、南大西洋ではほとんど熱帯低気圧が発生しないのです。海水温が低いからと考えられていますが、2004年3月24日から28日にかけて、ブラジル近くで熱帯低気圧らしきものが観測されました。いや、観測された等という生やさしいものではなく、国も国民も「そんなもの聞いたこともない」状況だったため、被害が拡大し、3億5000万ドルにのぼる被害を出しました。ただし、これが熱帯低気圧だったかどうかは、まだ結論されていません。はっきりした「 」も観測されていますので、見かけは立派な熱帯低気圧ですが・・・。


 なお、物理学的理由で、台風やハリケーンが赤道を越えてサイクロンになることはありません・・・と言いたいところですし、実際、「この台風が赤道を越えました」という確実な情報を私は持ち合わせていないのですが、まだ私が大学院生だった頃、確か「科学朝日」誌上だったか、「無理矢理赤道を越えようとした台風(もしくはハリケーン)が、2つに分裂し、一つは南半球へ、一つは北半球へ進行した」という記事を、気象衛星の画像付きで見たような記憶があります。どなたかご存じの方がおられましたら、コメントしていただけましたら幸いです。