振り飛車党の棋風を考察 藤井猛九段編1 | fineのぐだぐだブログ

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以前は四間飛車党fineのぐだぐだブログというタイトルでした。前は四間飛車ばかりやってましたが、最近はゴキ中や矢倉、振り穴にも挑戦しており、四間飛車党と名乗るのがおこがましくなったので名称を変更しました。
拙い部分が多いと思いますが、よろしくお願いします。


前回の記事を読んで頂けたでしょうか(^ ^)
あとで投稿した記事を読むと、見辛かったので今回はその辺にも配慮しつつ書いていこうと思います。


さて、前回は振り飛車御三家の棋風を考察し、紹介しましたね。今回はその続きで、藤井九段の棋風がよく現れた将棋を解説していきたいと思います。全部で3局紹介する予定ですが、今回はそのうちの1局を紹介したいと思います。


1局目の棋譜は恐らく藤井九段の棋譜で1番有名な棋譜ではないかと思われる棋譜を紹介します。"一歩竜王"と聞いただけで頭に棋譜が思い浮かぶ人もいるのではないでしょうか?

そう、第13期竜王戦七番勝負第7局 藤井-羽生戦です。両者3勝3敗で迎えた最終局、藤井竜王が勝てば防衛、羽生五冠が勝てば六冠となる大一番。先崎八段によって書かれた観戦記"一歩竜王"は当時とても話題になったようです。当時の将棋世界があればいいのですが、12年前で私が7才の頃ですので、流石に手に入らないですねf^_^;)
その頃のことはあまり記憶にないですが、私自身、将棋になんの興味も示してなかったのではないかと思います。


さて、前置きはこれぐらいして、実際に棋譜解説に移りたいと思います。(肩書きはいずれも対局当時のものです)


対局日:2000年12月25,26日
棋戦:第13期竜王戦七番勝負第7局
先手:藤井猛竜王
後手:羽生善治五冠

▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩
▲6八飛△6二銀▲1六歩△1四歩
▲3八銀△4二玉▲7八銀△3二玉
▲6七銀△5二金右▲4八玉△5四歩
photo:01



さて、藤井竜王の先手藤井システムに対して、羽生五冠は端歩を受けました。これにより、穴熊の可能性が低くなりましたので▲4八玉と玉を移動させました。


▲3九玉△5三銀▲4六歩△7四歩
▲2八玉
photo:02



先手は3一玉型で対左美濃藤井システムを狙うのも有力だとは思いますが、藤井竜王は▲2八玉と入城しました。
実はこの対局から約2ヶ月前の竜王戦七番勝負第2局でそのまま先後逆にしたような局面から羽生五冠が右銀急戦を用いて勝利を収めています(参考図)。
【参考図は4六銀まで】
photo:03




恐らく藤井竜王は7一玉型(3九玉型)で右銀急戦を受けるのはやや危険と思われての修正手順が本譜なのでしょう。6九金型で5八金を保留しているのも急戦に対して7八金の余地を残す為でしょう。この辺りの何気なく見過ごしてしまいそうな手順の中にも藤井竜王の序盤理論が表れていると思います。



△8五歩▲7七角△2四歩
photo:04



対する羽生五冠も右銀急戦を見送り左美濃へと作戦を切り替えました。急戦の場合は▲2八玉の一手は非常に価値の高い一手になるからです。
反対に左美濃の場合は▲2八玉の一手は急戦の場合に比べてあまり価値高くない手になります。玉頭攻めを行なう場合には▲2八玉の一手は戦場に近づいている意味もあり、場合によってはむしろマイナスになる可能性すらあります。
"棋は対話なり"といいますが、この辺りは相手の指し手を見てから自分の指し手を決める非常に高度な駆け引きだと思います。


▲5八金左△2三玉▲3六歩△3二銀
▲2六歩△7二飛▲7八飛
photo:05



羽生五冠は囲いが完成したところで△7二飛と仕掛けの筋をちらつかせます。対する▲7八飛も攻められそう筋に予め回る振り飛車の常套手段ですね。


△4四歩▲4七金△4三金▲3七桂△4二銀▲8八飛△7三桂▲5六銀△3三銀右▲2七銀△3一角▲3八金
photo:06



受けられたので羽生五冠は仕掛けず、藤井竜王も対左美濃藤井システムのように激しく玉頭を攻める展開にはせず、駒組みの順を選びました。



△9四歩
▲6五歩△5五歩▲同 角△5四金
▲4五歩△同 歩▲6六角△4四銀
▲4六歩△2二角▲4五歩△5五銀
▲同 銀△同 金▲同 角△同 角
▲9八飛
photo:07



このまま駒組みが続いて後手が米長玉銀冠に組み替えるのかと思っていたらいきなり△5五歩!
具体的な手順はわかりませんが駒組みを続けた場合▲2三銀の瞬間離れ駒ができるのでその瞬間の先手からの仕掛けを嫌ったものでしょうか?
そして最終手の▲9八飛は角金交換の駒損で手番まで渡してしまっても振り飛車指せるという、当時控え室を驚嘆させたという藤井竜王の素晴らしき大局観。


△8六歩▲2五歩△同 歩
▲5六金△2二角▲4四歩△同 角
▲4五金△4二飛▲3四金△同 玉
▲4五銀△2三玉▲2四歩△1二玉
▲2三金△同 銀▲同歩成△同 玉
▲4三歩△5二飛▲4四銀△5七飛成
▲2四銀△3四玉▲3五銀右△2三玉
▲4二角△同 金▲同歩成△6六角
photo:08



長手数進めましたが、△8六歩に同歩は△8八歩で振り飛車不利。先手も歩成が間に合ってこないようやや急いで攻めないといけない局面です。
途中▲3四金など激しい手があります、一時的に大きな駒損でも攻めが続いてしまえばいいという意味ですね。もう少しゆっくり攻めても振り飛車優勢だと思いますが。本譜は王手龍取りの筋を見せたりしつつギリギリで攻めをつないでいきます。そして最終手の△6六角の局面で決め手があります。少し考えて見て下さい。








▲8六歩△1二玉▲2四歩△2二金
▲4三銀不成△3七龍▲同 金△3九角打
▲2九玉
まで101手にて藤井竜王の勝ち
photo:09



決め手と書いたので後手玉に迫る手を想像された人もいるかもしれませんが、▲8六歩が決め手です。一歩あれば後手玉が詰めろになることが読みきれれば発見出来ると思います。この手が"一歩竜王"と呼ばれるようになった所以です。

以下はそのまま藤井竜王が押しきり101手で防衛を決めました。


今回は藤井九段の特長である序盤に重点をおき解説してきましたが如何でしたか?
次回は大山先生の将棋を研究した藤井九段の受けの強さがよく出た棋譜を紹介しようと思います。


間違い、要望などございましたらコメント下さい(^-^)/
最後まで読んで下さってありがとうございました。


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