外資系ITビジネスマンの視点 -2ページ目

外資系ITビジネスマンの視点

ビジネストピックに関する考察を中心に、外資系企業、IT業界の内情も紹介しています。

人を育てるのって難しい。

人材育成に関する悩みは、どんな企業でも抱えている課題です。

私もまだまだ学ぶ身ではありますが、仕事を教える機会も増え、人材育成について考えることが多くなりました。

しかしそれにしても、不思議というか、皮肉だなと感じることは、

外資系企業のような放任文化でこそ、逆に人は育つということ。

いえ人によるんですよ、もちろん。

しかし、周囲の若手社員や、中途入社した方で仕事の進め方が改善した人を見ていると、そのように思うのです。
【関連記事】成長という視点から見る、外資系企業に新卒で入社するメリット

入社したばかりの頃は主体性に欠け、指示待ちで受け身の仕事しか出来なかった人が、数ヶ月も経つと自分で物事を考えて、積極的に仕事を進めるようになっていく。

そして、その人にこのような成長をもたらしたものが何かと言うと、「教育」ではなく、むしろ「放任」だったりする。

つまり、誰かがつきっきりで仕事を教えて面倒を見ていたわけではなく、むしろ何も教えない。

課題を与えてとにかくやらせてみる、結果だけを見て、足りないことを指摘するのみ。

細かい指導はしない。

その結果、本人が自分で考えて、勝手に伸びていく。

こういう例を見ていると、人を育てることで重要なのは、計画的な教育制度と親密なサポート、丁寧なアドバイス。ではなくて、

課題を与えて、それにどう立ち向かうか本人に考えさせて、意識を持たせることだと思えます。

親切丁寧に細かく教えてサポートすることは必ずしも成長にならない。

わが子を谷底に落とすライオンよろしく、人は教えてもらうのではなくて、自分で考えて工夫することによってのみ、より強くたくましく成長できるのでしょう。

とは言え、渦中にいる本人はツラいんですけどね。

ベンチャー企業なんかでもそうかもしれませんが、外資系企業では、程度の差はあれ、従業員の自主性を重んじる文化がある。

社員の主体性を重視し、また社員の考えを尊重し、そして仕事を任せる。

そう表現するととても聞こえはいいのですが、必ずしもそんなにキレイなモンじゃない。。

大学入試の過去問と解答だけ渡されて、「一週間後にこの大学の入試をパスしてね。誰も教えないけどね。クスクス」と難題を突きつけられているような感じ。

見方を変えれば、とっても意地悪です。
いや、本当に意地悪なのかもしれない。

その環境を嘆くより、これはもう、そういうもんだと思うしかない。

その分仕事を任せてもらえる、裁量が大きい、という権利も得ることが出来ますから。

ともかく、そんな環境でがむしゃらにやっていると、いつの間にか自分で能動的に考えて行動するクセみたいなものがついてくる。

そうすると、課題に対しての自分のキャパシティというか、対処出来る範囲が広がってくる、それが結果的に仕事の実力を高めることへと繋がっていく。

もちろん、人によってはこういうやり方だと潰れてしまうかもしれませんし、手厚いサポートが必要な人もいますから、育成する立場からすると本当は注意しないといけませんけどね。

しかし、これもまた外資系企業だと「自分で厳しい所を選んだんだから、それで潰れたら自己責任でしょ」みたいな雰囲気がある。

つまり大切に育てようという意識が無い。

ああ、やっぱり意地が悪い、もっと優しくしてくれ。

でもそんな親切心の無い、愛情が少ない環境で、力がついて、結果自分のためになってしまうこの皮肉。

人を育てない外資系で人が育つというジレンマに、物事の難しさを感じるのでした。

新年は多くの外資系IT企業で、人事異動が発表される時期です。

外資系のIT企業の多くは、1月から新しい決算期がスタートし、この時期に大きく組織が見直されることが多いためです。

特に、今年は社長や会長の交代、就任と言ったトップ層のニュースが目立ちます。

日本IBMでは、マーティン・イェッター前社長から、ポール与那嶺氏に交代。(IT pro)

日本HPでも、吉田仁志氏の新社長の就任が発表されました。(IT media)

新年早々、大手外資系企業の多くでトップの交代が相次いでいますが、実はこの流れは昨年から続いているものです。

2014年は外資系IT企業のトップが相次いで変わった年でした。

まず3月に、元日本HP社長の小出氏がセールスフォース・ドットコムの社長に就任ZD Net japan

同じく3月に、日本オラクルで、これまた元日本HPの杉原氏が社長に就任。IT Pro

シマンテック社長を5月に退任した河村氏は、Dropboxの社長に就任。ZD Net japan

6月にはアドビシステムズで元マイクロソフトの佐分利 ユージン氏が社長に就任。RBB today

7月には、SAPジャパンで生え抜きの福田氏が社長に就任。IT Pro

11月にはシスコシステムズの平井氏が社長を退任。IT Pro

そして、12月にはEMCジャパンで、日本オラクルに在籍していた大塚氏が新社長に就任。ZD Net japan

一年でこんなにも多くの企業で社長が交代するとは、我ながら、とんでもない業界ですね。

しかも、同業他社から新社長を招き入れるケースが多いこと多いこと。

SAPジャパンのように生え抜きが新社長に就任した珍しいケースもありますが、外資系企業では、このように競合から人を引っ張ってくることは日常茶飯事。

それはトップであろうが平社員であろうが一緒です。

昨日まで、ライバルとして敵意むき出しで戦っていた企業のことを、次の日から、何食わぬ顔で自分の会社として誉めそやすわけです。

もはや、普通の神経じゃない(笑

しかし、これはプロスポーツの世界なんかではよくあることで、例えばプロ野球やサッカーの世界で選手の移籍や監督の引き抜きはよくあることですよね。

自分が活躍できる場所で能力を発揮する、ということが、この世界で生きる人たちの信念でもあるわけですね。

しかし、人の入れ替わりが激しいプロスポーツ選手の世界でも、いくらなんでもここまで組織のトップが交代することは無いでしょう。

我ながら、とんでもない業界に入ってしまったことを実感しつつ、この変化を刺激として、今年も一年楽しんで働きたいと思います。
組織に属すことなく稼ぐ人、ベンチャー企業に勤めている人による、大企業で働いている人達を見下すような発言を聞くことがあります。

特に、名前の良く知られた有名ブロガーの方の記事でよく見受けられます。

彼らは程度の差はあれ、会社に頼らず自分の能力でお金を稼ぎ、その生き方にプライドを持っている人達。

その口調からは、大企業で生涯勤めることを旧態依然の生き方とし、それに引き替え自分は「普通の人とは違う自分らしい生き方」を確立したという自信が感じられます。

「大企業の人達は組織や時間に縛られて不自由な生き方だ」 (それに比べると私は自由だ)

「大企業の人達は簡単に転職も出来ず、会社に依存する生き方しかできない」 (それに比べると私は自分の意思で仕事を選べる)

「大企業に就職したがる若者は思考停止している。そんなつまらない人生で何が楽しいの」 (それに比べると私は人とは違う魅力的な人生を歩んでいる)

ちょっと悪意も含めてみましたが、程度の差はあれ、こんな感じに。

的を得ている場合もありますが、ぶっちゃけ、かなり余計なお世話ですよね。

自分が大企業に一生涯勤めるという選択をしなかった(ないしは出来なかった)からと言って、その選択を批判する必要も無いでしょう。

こう言うと、「私は批判しているわけでは無く、『私には出来ない』と、傍観者的に言っているだけで、やりたい人はどうぞご自由にという平和的なスタンスなんだよ」と述べる方もいるかもしれない。

いや、その時点で結構な上からだよ、と(笑

口調はどうあれ、人の生き方を否定している時点で、自分の選択を必死に正当化しているように見えてしまいます。

まあ、記事として面白いこともあるので、それは良いんですがね。両者を経験した上で、単純な「比較」をしているものならタメになりますし。

ところで、考えてみると大企業の社員が、ブログなんかで、「起業やベンチャーより大企業の方が、楽だし儲かるし、仕事もスケールがでかくて楽しいぜ!」って叫んでいるものってあんまり見ない。

というか、見たことが無い。

これ、「大企業の人達って、思考力も情報発信力も弱いんじゃね」という風に、アンチ大企業的に考えることも出来るかもしれない。

でも実は、「わざわざ自分達より小さい物を否定したり、批判する必要性が彼らには無い」ということも言えるんじゃないかと思います。

仕事と社会的地位において、自尊心が満たされている彼らからすれば、独立した人やベンチャーで働いている人を、時に羨望の目で見ることはあっても攻撃する必要性は無い。

余裕があれば批判なんてしないんですよね。

何より、大きくて強い側が、そうでない側を否定しても何にも面白くないし新しくない。

「お金があるほうが良い!無い奴は人生損している!」

「権力があった方が良い!無いやつより自分の存在価値を感じることが出来る!」

まあ、その通りだよ、うるせえよ、となる(笑

世間で批判される対象は、えてして優位な地位にあり、人の妬みを買いやすい方。

政治家や、官僚や、富裕層や、有名芸能人や、出世した人や、教授や教師、などなど。

大企業そのものもここに含まれます。

弱い物イジメってのはまた別の議論だとして、人が対抗心を燃やして批判する対象ってたいがい自分より、強かったり大きかったりする。

お金持ちが、貧乏な人を批判することはない。

社長が、平社員に対抗心を燃やすことはない。

その逆は、常にある。

大企業叩きをする人達って、嫉妬のあるなしは別にして、実はそこに強い対抗心を持っている気がします。

あるいは、「世間とは違う生き方をしている私カッコイイ」的な自尊心を満たすためにやっている。

大企業叩きは、世論に一石を投じるという意味で気持ちがいいのかもしれませんが、そういう意味ではなんだか寂しいことのような気もしますね。

ここまで書いて、実はそういうことを考えている自分自身が、大企業批判をするような「世間に縛られず、その生き方に誇りを持つ人達」に対抗心を持っているのかもしれない、といった気付きがあり、それはそれで良かったと思った2014年の終わり。

今年も最後まで頑張っていきましょう。
先日、とある著名な起業家の講演を聞く機会がありました。

その方は、東京の有名大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社。

その後留学し、ハーバード大学をトップクラスの成績で卒業、帰国後ベンチャーを立ち上げ大成功を収めたという、絵に描いたような素晴らしいご経歴の人物です。

きっと私のような平凡な会社人からすると、想像も出来ないような経験をされておられるのでしょう。

実際に、その方の話は大変刺激的で、面白い。

留学時の学びや異文化交流、起業した時の苦労や成功エピソード等、波乱万丈な人生。

自らリスクを取って、チャレンジし続ける生き方って素晴らしい!と感動しました。

そして、

「俺もこんな所にいる場合じゃないな、ここはひとつ留学や起業に挑戦してみよう!」

と一瞬、思いました。

そして、

「留学するならやっぱりアメリカかな、起業だったらやっぱりITだよな」

と一瞬、考えました。

が、

やっぱり一晩寝たら忘れていました(笑

次の日から、いつも通り楽しく目の前の仕事に打ち込むことが出来ました。

うん、気分が切り替わり易い性格で良かった。

私には今から「留学」や「起業」という選択をして、時間やリスクを取るほど、そこに強く「思い」が無いことを忘れそうになりました。

危ない、危ない。

独立して成功した人や起業家の方によるありがたいお話を聞くときには、そこまでたどり着くための大変な苦労や、大きなリスクがあることを忘れてはいけません。

成功者と呼ばれる人の話は、誰にとっても魅力的です。

いちばーんオイシイ部分がすくい取られ、まとめられているからです。

だからと言って、話をすべて鵜呑みにして、自分もやってみよう、と簡単に思ってはいけないですね。

もちろん、「普通の人にはそんなこと出来っこないからやめておけ!」

と言っているわけではありません。

果たして自分は、チャレンジするリスク以上の「思い」をそこに持っているのか、これを確認しないまま踏み出すのは危険ということです。

コレを言うとカッコ悪いかのような風潮がある中、あえて口にしますが、安定はいいですよ(笑

毎日仕事があって、仲間がいて、お金が定期的に入ってきて、家族と安心して過ごせる。

これが出来なくてどれだけ多くの人が苦労しているか。

それを既に持っている人は十分に、幸せな立場なんです。

安定を捨て、リスクを取ってチャレンジしている人は格好いい。

その人の言葉は情熱的で説得力もある。

でも、「俺もやってみよう!」

と、思う前に是非一度、考えてみてください。

「自分はその人と同じ価値観を持っているのか」

「自分は本当にそのチャレンジを望んでいるのか」

「そのチャレンジで自分は何を失うのか」

現状維持、守ることも立派な選択です。

起業や転職が以前より当たり前の時代。

それらを促す、耳触りの良い言葉。

そんな情報があふれている今だからこそ、自分の価値観に素直に、正直に生きることが大切です。

もちろん、チャレンジすることは素晴らしいこと。

後悔するならばやるべきです。

と言うより、やるべき人はこんな保守的な文章を読んでも、たぶん思いとどまらない(笑

もし、あなたが他の誰かの影響によって、リスクの大きなチャレンジをしようとされているなら、自分が持っているものの価値を改めて確認して欲しいと思います。

不安定な環境に身を置いて、改めて安定の魅力を確認できた筆者より

※関連記事
新規事業や転職の難しさについてはコチラ
仕事だけが人生の幸せではないよね、という記事はコチラ
とは言え、リスクを取っても別に命までは取られないよね、という記事はコチラ

外資系企業に入って自分が変わったことの一つに、「決断が速くなったこと」があります。

入社当時は、決断のスピードが遅いとよく指摘されて苦労しましたが、数年たってかなりマシになった実感があります。

今では時に、人の決断の遅さにイライラすることも増えてしまいました。

自分が少しくらい成長したからといって、謙虚な気持ちを忘れないようにしたいですね。
未熟だった頃のことを忘れて、頭ごなしに指摘したり叱る大人にはならないように気をつけたいものです(笑

さて本題ですが、なぜ自分は決断が速くなってきたのか、またどうして決断が速い人と遅い人がいるのか、その理由を考えてみました。

一つ目のポイントは「経験」です。

仕事の経験を積み重ねることによって判断が速くなったことは間違いありません。

誰しも自分が知らないこと、良くわからないことはすぐ判断が出来ませんよね。

決断には「情報」が必要です。

情報が最低限揃っていないと、決断する材料が無いですし、失敗する可能性も高くなります。

経験によって、自然と決断のための情報が蓄積されるので、意思決定が速くなっていきます。

電車で移動するにしても、いつも使っている駅や経路であれば、どうやって乗り換えをしてどのホームに行けばいいのかすぐ判断できます。

しかし、初めていった国で電車に乗ろうとすると、そもそも目的地に電車で辿りつけるのか、切符をどのように買うのか、という基本的なことから調べなくてはなりません。

すでに経験していることだからこそ、情報が十分そろっているため、素早い判断が出来る訳です。

時々、情報がほとんど無いのに見切り発車で決断する、脳みそ筋肉系の方も見かけますが、失敗する可能性が高く、これでは、特攻したものの自爆するという結果に終わりがちです。

決断には速さ以上に「質」も大切ですからね。

そして、二つ目のポイントは「覚悟」です。

これは決断に対してリスクを取る覚悟、という意味です。

特に人によって決断のスピードが違うのは、リスクに対する考え方が違うからだと思います。

その決断をして、もし失敗した時にどうするのか。

それでもなんとかなる!と楽観的に考えられる人は決断のスピードが速く、

失敗したらどうしよう。と悲観的に考える人は決断のスピードが遅くなりがちです。

一つ目のポイントであげた「経験」を、例え同じくらい持っていたとしても、人によって決断が速かったり、遅かったりするのはここが大きいです。(その他に、情報収集力、思考力といった、いわゆる「頭の回転」も大きいでしょうが)

外資系企業の人達が全体的に決断が速いのは、もちろん企業文化もあるでしょうが、リスクを思い切って取っていくタイプの人が多いからだと言えます。

何しろ、解雇や成果主義といったリスクを承知で、外資系に入ってきた人達ばかりですからね。

私は学生時代や日系大企業にいた時には、割と保守的でのんびりした人生を歩んできたので、転職した当時はリスクに対する恐怖感が強かったと、今になって思います。

今の会社でたくさんの修羅場を味わうことにより、大分リスクへの恐れは無くなりました。

やばい状況になってもなんとかなる、ということを体験として学ぶことが出来たんですね。

リスクにさらされ続けていると、そこへの慣れから決断のための覚悟や度胸が身についてくるように思います。

それと比較すると、減点主義の保守的な企業で働いている方は、どうしてもリスクを怖がってしまいますよね。

決断して失敗するくらいなら、決断しない。こう思ってしまうことも無理はないと思います。

経営者の中にも、決断が速い方とそうでない方がおられます。

よく、創業者で社長になった方と、平社員から出世を重ねて社長になられた方が比較されますが、決断の思い切りの良さ、スピード感は前者の方が優れておられる感覚があります。

もちろん例外はたくさんありますが、やはり起業というリスクを取って社長になられた創業者の方が、サラリーマンとして大きな失敗をせず上に上がられた方よりも、リスクの取り方が大胆なんでしょう。

このように、決断の速さには「経験」と「覚悟」が大きなポイントになります。

よく、魅力的な男性の条件で「決断力」が挙げられ、「優柔不断」な男が嫌われる、なんてことが言われますが、それは「経験」と「覚悟」があるか無いかはそのまま男性の「器」に直結するからだという気もします。

仕事もプライベートも魅力的な男になるためにも、「経験」と「覚悟」を兼ね備えた、思い切った決断が出来る「器」の大きい人間になることを目指したいものです。

本日のランチで、ハンバーグかカレーを選ぶのに10分もかかってしまった筆者より