長門発売日決定記念。浅井×安藝×MAX渡辺対談その2 | 産地直送 MAX丸見え特捜部ログ ぶっちゃけまっくす!

長門発売日決定記念。浅井×安藝×MAX渡辺対談その2

こんにちは、figma雑務担当の金子です。
前回に続き長門発売日決定記念、浅井×安藝×MAX渡辺対談をお送りしますー。




浅井: 約一年、figmaの準備をしてきて感じるのは、ファクトリーもGSCも、一緒に仕事するには非常に面白い会社だったんだなと。 失礼な話かもしれませんが、これは意外でしたね。
で、その立場になってみてわかったんですが、海洋堂は張り合って面白い会社だった。僕が今まで、3社とこういうスタンスで関わる事はありませんでしたから、これは新鮮な発見でしたよ。
だから一緒にやって楽しいマックスファクトリーと、張り合って面白い海洋堂と、それぞれこういう形で関われる今の環境は、ちょっと幸せに感じられる緊張感ですね。

安藝: 燃えますよね、海洋堂さん相手だとなぜか。

浅井: 燃えますねー すごい燃えますねー。


Max: やってやるぜって言ってくれるしね。


安藝: 宮脇さんにお会いすると、お前らツブすからなっ!て言ってくれるじゃないですか(笑) 潰されてたまるかこのヤロー!!みたいな(笑)。


浅井: この戦い……戦いと表現して良いのかどうか、難しいところではあるんですけど、あえてそう表現するなら、これって自分たちが持ってるスキルや知識とか、方法論を駆使しての、真正面からの殴り合いだったりするじゃないですか。手抜き無しの。

それは他のどんなメーカーとの競い合いよりも、海洋堂が前に居るからこそ面白いと感じてしまいますね。競い合ってはいるんですけども、敵だとか憎い相手みたいな感覚に全然ならない。悔しいな、とは思いますけどね。

でももっと別の、模型業界以外の世間であるとか、立体に興味を持って無い客層だとか、そういったものと戦ってるんだなっていう実感を感じられるんで、これはすごく楽しいですね。


安藝: そうですねー。


Max: うん、なんか胸を借りてスパーリングで殴り合いながら、ニコニコしてるみたいな感覚だね。


安藝: 2,000円~2,500円という価格帯の商材は、いきなりライバルが増えるんですよ、やっぱり。

音楽CDしかり、安価に楽しめるレジャーしかり。エンターテイメント全体が、なんていうか“お客さんの奪い合いをする場所”になるじゃないですか。


Max: そうだね。お!これいいな♪ってビッと来たら、比較的躊躇なく出せちゃう金額といえるよね。


安藝: 6,000円~8,000円のフィギュアともなってくると、それはもうフィギュアを買う人が、フィギュアを買うためのお金を持って選ぼうとしてくれているわけですけれども・・・


浅井: 2,000円~3,000円っていうのは趣味や娯楽に使えるお金の、非常に集中しがちな幅の価格帯ですよね。


安藝: 3,000円を切るというのは、お客さんの選択肢の幅が大きく拡がり、逆に言うとその中に埋もれてしまう商品になりかねないってことなんです。figmaの開発に関わって気付いたというか、肌で感じたことのひとつですよね。


Max: なるほどね、いざやってみて気付くことって多いよね。むしろやらないと判らないことの方が多い。


安藝: 2,000円、3,000円の「楽しい」商品って世の中にいっぱいあるわけじゃないですか。でも僕らはほら、“高くてもいい商品だったら売れる的思考”で今までやってきたわけですよね。いいもののほうが(たとえ高くなっても)いいっていう。

でも2千円台の商品を出すということは、そういう一面的な捉え方だけでは通用しない世界に飛び込むということなんですよ。我々スタッフのホビーに対する見方、捉え方も変化しつつあるんですよね。


浅井: 興味深いですね。安藝さんが製造・販売の側面で見方が変わられたように、僕も造形の部分で今回はだいぶ考えさせられました。

以前は、もっと自分の中の理想に近づけるにはどうしたらいいだろうって言う考えで作り方を試行錯誤してきたんです。それが、近年になって製造ありきの落しどころを考えるようになってきた。原型ではなく、製品の段階でのベストを目指そうって考え方ですね。今回は特にそれが顕著になりました。

たくさんの数を早いペースで、けれど今までファクトリーでリリースしてきたフィギュアとしてのクオリティのままで、安定した値段で出していく。それを実現にはどうすべきなのかって事や、それを可能にする造形のあり方ってなんなんだろうっていうのを、常に念頭において考えるようになってます。


figmaにおいては頭部などの制作を越沼君(マックスファクトリー原型師)であるとか別のファクトリーの原型師さんにお願いしたり、僕が作った頭部も彼らの判断で修正してもらったりしてる訳ですよね。今までだったらちょっと認め辛い範囲まで手を入れてもらってる。でも今はむしろ修正して欲しいと思ってるし、製品段階で良いフィギュアに落とし込むには、どういう修正が入ったのか、入れるべきなのかをもっと学びたいと思ってます。


これは量産の事も含めた「製品」として適切なフィギュア原型ってなんなのか、という事に対して今まで以上に興味が湧いているからなんです。実際中国にいって、タンポが入る、塗装が入る、こういった失敗が出る、この作り方は安定しない、なんてことを、現場で体感するじゃないですか。あの体験をしてしまうと、やっぱり無視は出来ないですよ。原型を完成させたら、あとは見知らぬどこかで商品化~ではなくて、ユーザーが喜んでくれたっていう瞬間まで、知っておくべき工程として受け止めたい。


(C)なのはStrikerS PROJECT

「figma高町なのは」は関節概念や素体としての一部部品は流用しているものの、造形はほぼマックスファクトリー原型師:越沼真司の手によるものである。


安藝: そうですね、企画から製造、販売までも含めた、総合的な物作りが必要ですよね。


浅井: 今までもそれは意識してやってたつもりだったんですけど、足りなかったなーって痛感してますね。実際工場の現場入らないと解らないことだらけだったし、やっぱりどうしても中国で現場に入ると、仕事として伺っても実際には……


安藝: 工場見学っぽくなっちゃう。


浅井: そうですね、見学になってしまうし、工場としてもなかなか現場までは入れてくれないですから、実際にはハッパをかけにいくとか、ちょっとしたチェックくらいしかできないわけですよね。

figmaに関してはガッチリ工場に張り付いて、それこそ夜中とか朝まで居るわけで……そうなって初めて見えてきたものってありますよね。


Max: もともとマックスファクトリーもガレージキットメーカーとして立ち上げて、とにかく造形の最適化、より面白い形状の追求って言うのをずっと標榜してきた。ソフビで抜けない、でも見た目は落としたくない、さてどういうふうにしたら良いのだろう、みたいな所から始まって、PVCになって最終的な商品をいかに見映えよく、しかも量産に耐えうる状態に持っていくかっていうところに腐心し試行錯誤してね。

さらに今回はもう一段階あげて、2,500円という低価格まで落とし込みつつ、しかし十分なバリュー、魅力がある商品を出し続けていく。
単発じゃないシリーズモノだからハードルはなおさら高いよ。


浅井: 頭の切り替えが重要だったなと思います。

もはや関わってるみんな、アクションフィギュアを作るとか完成品のフィギュアを作るって言う感覚じゃなくて「figma」を作るって感覚でいるじゃないですか。むしろ、そうじゃないと戦えなかったんじゃないかなって思いますね。


Max: ホントそうだね。




その3に続く!