福井総裁への「妬み」と「公義」と「武士道」 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

日銀の副総裁、福井さんが村上ファンド似1000万円を出資し、7年間で倍くらいになったという。その村上ファンドの村上さんが当初の志(こころざし)と違ってきたため、この2月に解約した。


これで済めば問題なかったのだが、村上氏がインサイダー取引という違法行為で、逮捕されたため、福井さんおかしいんじゃないの?という議論がマスコミを連日賑わせている。


福井さんは、すばらしい経歴と、バブル後の不況に慎重過ぎる政策ながらも、日銀を率い、最近の景気回復に重要な職務を発揮してきた過去を持つ。また、村上氏の思想は、株主利益重視というよりは、経営者の怠慢に対し、「物言う株主」として、いろいろ発言してきた。ここに、意気に感じて、激励のつもりで出資したというのも充分うなずける。(私もお金はないので、気持ちを出資してきた)1000万で出てくる利子に、福井さんがこだわる理由はない。


しかし世の中はゼロ金利時代。その政策担当の張本人が年利6,7%の利殖をしているのは何事か?即刻辞めてしまえ!という議論になっている。


その出発点は結局「妬み」である。


一方でデイトレーダーや、ファンドマネージャーといった大儲けをしている人がいる。福井氏と村上氏の関係より、いくら儲けたかが論点となり、儲けすぎているという論調でマスコミは福井氏を叩いている。街頭インタビューの一般の人も全て「妬み」が根底にあるように聞こえる。


かといって福井氏を擁護するわけではない。

時期から言って、ライブドアの幹部が逮捕されたのが1月。ホリエモン側近の自供のなかに村上氏とのインサイダー疑惑を感じた東京地検が、福井氏にリークした、あるいは偶然、そういう情報を聞き知った福井さんが慌てて解約したということは考えられないだろうか?捜査情報が、漏れる、漏らす。もし、そういう事実があれば、そっちいこそ問題。

また政策の独立性が必至の日銀。政府や与党に対して負い目を作ってしまったことで、福井氏は総裁に不適格な人となってしまった。実際、量的緩和政策は先週見送りが決定してしまった。

捜査情報のリーク疑惑、独立性が疑わしくなったこと、この論点で報じている報道機関はほとんどない。マスコミのミスリーディングを感じる。


今世間ではいろんな事件事故が起きている。その事件事故をめぐる解釈は、報道を聞いている人間でなく、マスコミ(TV・新聞)がしている。どこもいっしょで、しかもミスリーディングと来ている。国民はそれを鵜呑みにして街頭インタビューでは予想通りの反応。(違う反応の人の意見は採用されないのだろうけど)。そこには、「妬み」「面子」「体裁」といった「私欲」が渦巻いているような気がする。


えらく抽象的な話になってしまったが、かつて、『武士道解題』という本の中で、台湾元総統、李登輝さんが、「今の日本人には、『公義』という思想が無くなった人が多い」と嘆いていた。李登輝さんは、戦前、占領下の台湾で日本の教育を受けていた。しかし、占領下の教育をいささかも恥じることなく、京都大学に進んで、新渡戸稲造の『武士道』を、一生の教えとし、心のよりどころとしている。また、キリスト信者でもある李登輝さんは、キリスト教と『武士道』に共通してある『公義』という考え方を今一度日本人も再確認しなさいという。


busidou


『公義』を一言で説明するのは難しいが、何かに対して怒る場合「私憤」でなく、「公憤」でなくてはいけないという。人が怒るときは、自らの不遇や、嫉妬という個人の気持ちから発するのではなく、みんなのためにならない、後の世の人のためにならないという、空間、時間的なひろがりから発していかなくてはいけない。『公義』というのは、その「公憤」の基準となるもの、公の正義、英語ではジャスティス!


昔は、マスコミや報道機関はすごいと思っていたが、この世界も完全ではないようだ。ただ、スタートラインを変えて、ちゃんと考えていけば、何が大事なことなのか充分伝えることは出来ると思う。


それにしても昔の人は偉かった。「武士道」は、やがてその精神を忘れる日本人のために書かれた警告書。私も再度読んでみようと思った。