セミナー:夕学五十講 『26番目の選手とともに』 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

東京丸の内の、慶応大学丸の内キャンパスに、毎回、著名人をよんで、全国のサテライトスタジオを通じ、旬の話題について講義を聞く夕学五十講。今回は千葉ロッテマリーンズの事業部、部長 荒木重雄さんの『26番目の選手とともに』を聞きました。


事前にどんな話をするかは分からず、講義タイトルからは、昨年、優勝したマリーンズと、そのファンとの湿っぽい裏話かと思っていました。会場の広島商工会議所もがらんとしていて、あまり期待していなかったのですが、とても面白かったです。


荒木重雄さんは、戦国の武将みたいな名前ですが、温和な感じの今年43歳。日本IBMで10年システムに関わった後、外資系企業の日本法人の社長を経た後、東大のスポーツマネジメントスクールでスポーツビジネスについて学び、そのとき一緒に受講していたロッテの球団代表と意気投合し、ロッテの事業部部長になったということです。


巨人戦の視聴率低下、ホリエモンがらみのどたばた買収劇、1リーグ制と、ここ数年野球は落ち目ということになっていましたが、こういった旧態依然たる状況を「野球界」とよび、ビジネスとしてのプロ野球を「野球業界」として、今までの視点を変える作業からはじめたようです。


マーケティングの本をよんだら必ず出てくる、4P(3Pの本もありますが)と3C。

プロダクト(商品)

プライス(価格)

プレイス(場所)

プロモーション(販促)

カンパニー(会社)

カスタマー(顧客)

コペティター(競合)

まずは、それぞれの定義を再定義し、違う視点を導入し、優先順位を入れ替えたりしながら、再度マーケティング戦略を練り直します。そして、出された最重要キーワードは「実観客数」(聞き間違いかも)、ただの数字でなく、どのくらいの時間滞在してくれたかを評価の中心に位置づけました。

試合を見に来ても、面白くなかったりしたらすぐ帰る、そんな観客でなく、ずっと、ここにいてくれる人を増やそうとしました。滞在時間が長くなれば、飲食量も増える。長くいれば、グッズなんかも買ってくれるかもしれない。そういう考えから、週末は朝から球場前で、屋台が出て祭り状態。試合後も、マスコミむけのヒーローインタビューとは別に、観客むけのマイクパフォーマンス、球場の外のステージで3つ目のインタビューと、とにかく長くファンにいてもらう。普通試合に勝つと、さっさと家路に着くのだけど、本当は選手や、ファン同志一緒に長い時間、勝った試合の余韻に浸りたいというのは、まさにファンのことを考えたアイディア、なぜ、今まで誰も考えなかったのだろう。究極は「負けても楽しい球場」というキーワード。負けが混んできたチームでも、観客が減らないチーム。そんなチーム今までにあっただろうか?でも本気で取り組んでいるところがすごい。


講義では、昨年のロッテが上記4P、3Cをどう定義しなおしたかを丁寧に説明されたのですが、マーケティングの教科書の無味乾燥な理屈でなく、生きた事例として、話される様子は、とても面白かったです。

たとえば、コンペティターは・・・・、ロッテの競合といったら、西武?ホークス?ではなく、球場に足を運ぶファンを減らす、ディズニーのようなアミューズメント、家でみるテレビ番組、ゲーム、イベント、流行の飲食店等。その競合に勝つには、昨年2日間やった「球場ビアガーデン」は、居酒屋にいく客を、まさしく横獲ったわけで、上記の分析ができていたら、自ずと決まる、まさにそういう活動を昨年1年間やって来られたようです。


その効果は、過去最高の観客動員数を6月末時点でオーバーしたことで実証されました。その成功が更なるアイディアを生み出し、リーグ2位でプレーオフ進出、パリーグ優勝、日本一、アジア一は、出来すぎ以上の結果でした。


スポーツニュースでも、ロッテの昨年の取り組みを特集にしていましたが、いじましい努力の積み重ね的な、内容だったのですが、荒木さんの話を聞いていると、ちゃんとした、分析と理解がまず大前提としてしっかりできている。その上で、採られる施策だから、おおむね成功を収めている、何かとんでもないウルトラCをやったのではなく、できることをやったという感じだ。これだけ、いろんな経営手法が世の中で、進んできているスポーツの世界も、もっとビジネスで成功できるという気がした。


野球に限らず、○○ボール協会、○○振興会といったスポーツ団体も、アマチュアスポーツも、もっとやり方を変えるとビジネスとして充分成功できるはず。やりすぎて、IOCやFIFAの餌食になっても嫌だが・・・・。


会場の広島商工会議所を出ると、隣には、広島市民球場。横浜に12-5とぼろ負け状態。荒木さん広島に来て!