私が担当していた患者さんの旦那さんのお話です。
その方は脳梗塞になられた奥さんのため毎日病院に来られ、朝から夕方まで、ずっと身の回りのお世話をされていました。奥さんからは「父さん、父さん」と呼ばれていて、とても仲の良いご夫婦。
しかしある時から父さんは腰を痛め、徐々に足にシビレを感じ出し、さらに左足に力が入らなくなってきたため、同病院の整形外科を受診。第2/3間の腰椎椎間板ヘルニアの診断で、外来理学療法の処方が出され、ご夫婦ともに私が担当することになりました。
父さんの症状は、おおよそL2神経根症状に近いもので、①膝に力が入らず、しゃがんだら立ち上がれない、②太ももの前あたりがしびれる、③四頭筋反射やや減弱で、④前屈みになると腰が痛い、などでした。
それから週に2回の理学療法を行いました。神経根圧迫の可能性もあるので、慎重に治療を進めます。まずは前屈方向の可動性を出すために、腰椎の椎間関節の動きを徒手的に拡げてゆきます。神経症状が出ないか確認しながらの治療です。
すると、治療3週目くらいで腰痛としびれは軽快し始め、6週目くらいで膝に力が入るようになり、しゃがんで立ち上がれるようになりました。どうしても毎日奥さんを抱えたりされるので、腰痛はちょいちょい再発されましたが、膝の伸展筋力はほぼ完全に回復しました。
これは大げさに言えば、『偽ヘルニアによる偽麻痺』だったわけです。
外側ヘルニアの患者さんのMRIを見ていると、確かにヘルニアが横にとび出ているのですが、さらによ~く椎間孔を観察すると、神経根って結構うまく上の隙間に逃げ込んで、圧迫を避けていたりします。
おそらく、父さんには元々L2/3付近に関節機能障害があり、急性期にはヘルニアによる神経障害が実際にあったのかもしれませんが、その後は関節機能障害がオーバーラップして、実際よりも麻痺症状が強く出ていただけ、というのは治療をしてみて初めて分かることです。
その後はご夫婦で仲良くご自宅に復帰されましたとさ
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