ここ数日、急に寒くなりました。そうなると病院では呼吸器の患者さんが増えます。肺炎・気管支炎のため急性増悪したCOPD患者さんや、高齢な誤嚥性肺炎の患者さん、肺癌や間質性肺炎の方もちょくちょく。病棟では看護師さんが「パルスどこー!?」、「吸引お願いしまーす!」なんて、走り回られてます。

 呼吸器の疾患をもつ患者さんの訴えとして最も多いのは、「息切れ・呼吸苦」。理学療法士にはその症状を治す技術があります。厳密には「完治」ではなく、「軽減」ですね。患者さんはこの症状が軽くなることでより活動的に動くことができます。

 一度壊れた肺組織は元に戻りませんが(肺気腫など)、その肺を取り囲んでいる「胸郭の硬さ」と「呼吸筋の弱さ」は治療できます。ちゃんと治療できて初めて、『実はこの患者さん、もっと楽に呼吸できたんだ』 あるいは『もっと動けるんだ』ということが分かります。ちゃんと治療できてない療法士やその担当患者さんは、残念ながら本当の自分の呼吸機能や活動能力に気付くことはありません。それぐらいカチカチのヨワヨワになった筋肉や関節が呼吸循環機能に与える影響は大きいです。臨床で治療してると私も患者さんもびっくりします。

 ここの治療は薬ではできません。手術でもできません。理学療法しか方法がないんですね。だから適切な治療をしなきゃいけない。

 たとえばCOPDの患者さんは胸郭がちょい吸気位で固まってます。残気量の多い、いわゆる樽状胸郭ですね。あれ、胸郭が開いたままで固まってるから吐けないんです。気管支の虚脱と肺胞破壊とで、エアートラッピングされてるだけじゃなさそうです。そっちは気管支拡張薬の仕事になります。でもそれだけでは空気は出ていかない。胸郭がしぼもうとする弾性が失われてますので。吸気位で拘縮しているんです。

 胸郭~腹部周囲のカチカチ・ヨワヨワが治ると、ほかにも副次効果が出ます。「お腹の張りが取れた」、「便秘が治った」、「胸の圧迫感や絞扼感(こうやくかん)が取れた」、「ノドのつかえ感が取れて、食べ物が飲み込みやすくなった」、「肋間神経痛(と言われていたもの)が治った」、「よく眠れるようになったetc...

 もちろん最大の効果は息切れ・呼吸苦の軽減です。まぁ呼吸機能がよくなる分、歩く距離も増えるので、結局前と同じくらい息は切れてくるのですが、休憩時の回復が早まったり、頻脈が改善したり、疲労感が減ったりという効果は残ります。

 いつかこのブログで実際の患者さんの話もしてみたいと思います(治療頻度や方法なども)。レントゲン像やスパイロメータの値も変化するので、療法士も患者さんにとっても、とても興味深いです。


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