ヴァージニア日記

ヴァージニア日記

毎日の生活で感じたことを記します。

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クリスマスイブ。10時過ぎに寝室へ行き、ブラインドの棒をクルクルと回し、ブラインドをしっかり閉める。閉めた後でなぜか私は、ブラインドの隙間に指を挟み空をみた。紺色の夜空が見えた。そして私は思い出せた。



「ねぇ、子供の時、サンタさんのこと信じてた?」子供の時のことを全くと言っていいほど覚えていない哲に聞くのがそもそも間違えている。それでも、今年もやっぱり聞いてしまった。そんなサンタさんを信じていたことを覚えていない哲が、サンタさんの真実を、可愛い妹の美佐ちゃんに明かしてしまったことは、以前聞きだすことが出来た。

哲には美佐ちゃんという5つ離れた妹がいる。哲がもうサンタさんはサンタさんでは無いと分かる年になった頃、まだ美佐ちゃんは純粋にサンタさんを信じていた。クリスマスの日の朝には未だに枕元におもちゃが置かれていた。それは美佐ちゃんの純粋な心の恩恵だった。哲はサンタさんを信じていないのにサンタさんからクリスマスプレゼントをもらっていた。

それはある年のクリスマス前のことだった。大人になってからは『思いやり』をモットーにしている優しい哲は、当時はただの悪がきだった。小学校では女の子に変なあだ名を付けていじめたり、からかったり。風貌もジャイアンのようにプリプリだったけれど、中身もジャイアンだった。そんなジャイアンな哲は、今年もサンタさんからのプレゼントを楽しみにしている美佐ちゃんを見てこう言った。「サンタさんはいないんだよ。サンタさんは本当はお父さんとお母さんなんだよ。」それを聞いた美佐ちゃんは、びっくりしてお母さんに聞きに行った。この年から、クリスマスの朝におもちゃは届かなくなったという。「もう分かっちゃったなら仕方が無いね。いらないね。」何ともお母さんらしいやり方だ。上野家のクリスマスはこうして終わったらしい。

幼い頃のことを良く覚えている私だけど、サンタさんのことを信じていたかどうか、なぜか思い出すことが出来ない。クリスマスの日の朝に、おもちゃが枕元に置いてあっても、それがパパからだということを知っていた。ある年には東中野駅前にあったおもちゃ屋さんに一緒に足を運び、おもちゃを選んだりもした。そんなことは覚えている。私も末っ子、先にサンタさんの真実を知った佳世ちゃんと典ちゃんのお蔭で、もしかしたら、早いうちにサンタさんの真実を明かされたのかもしれない。サンタさんがいないと分かっていても、クリスマスプレゼントを買ってくれたパパに感謝する。

そう、私は哲同様、自分がサンタさんを信じていたかどうか覚えていない。


ブラインドから見た夜空。前に建つコンドミニアムから漏れる明り。クリスマスの飾りが輝いている。そして私は突然、一気に一気に子供時代のある時を思い出した。

この空、この明り、この空気、あの時と一緒。

そして、私はサンタさんがそりに乗って空を飛んでくるのを窓から空を見上げながら待つ自分を思いだした。模様が入った窓は曇りガラスで出来ていたから、私は寒いのにそっと窓を開けたのだ。隣に建つアパートと自分の家に挟まれた小さな空を見上げていた。サンタさん、いないなぁ。

そして、今度は物干しがあった方へ行き、新宿の高層ビルが立ち並ぶ方角を眺めた。窓を使って描き出される住友ビルのクリスマスの模様を見、そしてそのまま空を見た。


良かった。私もサンタさんを信じていた時があったんだ。なんだか嬉しくなった。


ヴァージニア日記
そうして起きた朝、もうサンタさんの真実を知って何十年も経つのに、私にもサンタさんが来てくれていた。













ヴァージニア日記 ママが言う。「本当にハルちゃんは良い子ねぇ。アンディとは大違いだわっ!」お散歩の途中で行き交う人も通りすがりに言ってくれる。「SUCH A GOOD BOY!」そう、ハルはとっても良い子だ。我が家に来た最初の日から全く手の掛からない良い子だった。そして、その後も、哲と私で一生懸命に育てた。教えた。躾した。

「お座りできる?」とペットショップのお兄さんがトリートを手に私に尋ねる。「もっちろん出来ますよ。DOWNも。SHAKEも。」ハルはSTAYだってBED(ベッドで待機)だってバーン(ピストルで撃つ真似をすると倒れること)だって出来るのだ。そうハルにはいろいろなことを教えてきた。キッチンにはどんなことがあっても入ってこない。ハルのボールがキッチンに転がってしまっても、キッチンの境界線で絶対に立ち止まる。リビングの床に置いてある物も、自分のおもちゃ以外は触らない。触ったら私に「NO!」と言われるのを分かっているからだ。そんなハルを見て、私もたくさんのことを教えたんだなと思ったりもする。だけど、私がハルに教えたことは、私達の生活に従うように行動してもらうルールだけ。ハルが私に教えてくれたことに比べたら本当に本当に些細なこと。私がハルにルールを教えてあげたことの引き換えに私がハルから教えてもらったこと、それは「今の自分」になるのにとてもとても大切だったこと。ルールでは無くて「生き方」だった。

ハル無しには「今の私」は存在しない。ハルは人間の言葉も話さないのに、毎日毎日、根気良く、ハルの目でハルの態度で私に大事なことを教えてくれた。
ヴァージニア日記 今日もとっても良い天気だ。紅葉を見上げながらハルと歩く散歩道。ふと下を見ると、2年前は引っ張り癖のあったハルがきちんと私の横をテケテケ歩いている。ハルも本当に歩くのが上手になったものだ。私はハルがきちんと横に付いて来ているのを確認せずとも歩くことが出来るから、ハルに気を取られず前を向いて、そして時には空を見上げて歩くことが出来る。あぁ、気持ち良い日だ。「そうだ、こんな日はちょっとルートを変えて大回りでお散歩を楽しもう!」2年前は毎日同じことをしていないと不安になり勝手に自分でタイムスケジュールを組み、自分のルールに束縛されていた私は、時間を考えずにルールも無く違う道を歩き始めた。そうだよ、かぁちゃん、好きな時にしたいと思うことをすれば良いんだよ。ハルが教えてくれたのだ。

ハルが来る前の私は体にも心にも自信が無かった。自分の体調も自分で整えることが出来ず、毎日、哲や家族に心配してもらい、支えられるようにそれにすがるように生活していた。体調が悪いと思ったら、家にじっとしていた。ところが、ハルが来てからは、そうは言っていられない。とにかく毎日ハルのためにお散歩に行かなくてはならない。そして、それから一日2時間は歩く日々だった。そうだよ、かぁちゃん、外に出ておいhしい空気を吸って歩けば元気になるんだよ。かぁちゃんは本当は健康なんだよ。雨の日も、雪の日も、寒い日も、暑い日も、歩いて歩いて歩いた。気付くと3年間、風邪一つ引かない自分がいた。
ヴァージニア日記 そんなことを考えながら歩いていたら、ハルが急に止まった。「何っ?!」そして後ろに座り込んでいるハルを見た時、今まで前だけ向いて歩いてきた後ろの風景が視界に飛び込んで来た。「うわぁ、日の射し方でこんなに空が、木が、綺麗に見えるんだぁ。」そして私は空に向かってシャッターを押す。そうだよ、時々振り返ったら、違う景色が見えるんだよ。

今の私の心と体はハルが作りあげてくれた。私は今の自分がとっても好きだ。やっとやっとやっと好きな自分に巡り合えた気がする。ハル、かぁちゃんは、ハルにSITやDOWNくらいしか教えてあげることが出来ないのに、ハルはたくさんのことを教えてくれていたんだね。ハル、どうもありがとう。今日は雨だから外に出るのはやめようか、、、。それは2年前の私。今日は雨だけどもちろんお散歩だよね。今の私はリーシュを取る。さぁ、今日も歩くよっ!