ソマティック・エクスペリエンスというのは、トラウマ・セラピーの一つです。 
 

アメリカの医学生物物理学博士・心理学博士であるピーター・リヴァインによって作られました。 


それがどのようなものかご紹介する前に、まず、トラウマそのものについてお話していきましょう。 
 


野生の動物、中でも肉食動物からエサとねらわれる草食動物にとって、日常はサバイバルゲームのようなものでしょう。 


肉食動物に襲われて、生きるか死ぬかという目にあうことが日常生活の一部なのです。 


今日うまく生き延びたとしても、明日はどうなるかわかりません。  


 


もし、私たち人間が同じような体験をしたら、どうなるでしょう。 


緊張で神経がはりつめ、クタクタになるのではないでしょうか。  


「こんな生活、もういやだ!」と悲観的になるかもしれません。  


 


私は、映画の中で主人公が命をねらわれるシーンを見るだけで、くたびれてしまいます。


 
映画の中のタフガイを別にすれば、暴漢に襲われる、ひどい交通事故に巻き込まれるなど、たった一回、死ぬような目にあっただけでも、私たちはダメージを受けることがあります。


 


その出来事はもうすんでしまったことなのに、そして自分が助かったことは頭では分かっているのに、ふとした瞬間に恐怖がよみがえったり、熟睡できなくなったり、少しの物音で怯(おび)えるようになったりします。


  


穏やかだった人がいつもイライラするようになったり、元気いっぱいだった人が無気力になったりと、人が変わってしまうこともあるかもしれません。


   


いわゆる「トラウマ」を受けた状態です。 


  


でも、野生の動物たちは、そんなふうにはならないのです。  


ついさっきチーターに追いかけられて必死で逃げていたインパラも、「無事に逃げ延びた」「危険は去った」とわかると、またリラックスして草を食べ始めます。


私たち人間のように「トラウマ」に苦しめられることはありません。 


  


この違いはどこから来るのでしょう。 


それについては、また次回書いていこうと思います。 





(つづく)