- プレイヤーにできるだけ決定権を与える。コーチが、プレイヤーたちが判断できるレベルの選択肢に落とし込んででも、プレイヤーが自分で決めるように仕向ける。
- 建設的で、パフォーマンスを改善できることに焦点を当て、ただダメなところを指摘するだけでなく、どうすれば改善できるかも示す。
- プレイヤーを他のプレイヤーと比べるのではなく、その子の過去のパフォーマンスと比べる。その子がどれだけ成長したかで判断する。
- 相互の尊敬に基づくコーチとプレイヤーの関係を作る。
1つ目は「人よりも良くありたい」という、他の人と比べての方向性です。スポーツでいうと、県大会で優勝したいだとか、あの選手に勝ちたいとか、「誰か他の人より秀でていたい」という方向性です。これをエゴオリエンテーションといいます。
2つ目は「前よりも成長していたい」という、過去の自分と比べる方向性です。これは、前よりもタスク(仕事)ができるようにという意味で、タスクオリエンテーションといいます。
この方向性は各個人(子どもたち、コーチ)も、集団(チーム)も、両方が持っています。
エゴオリエンテーションに傾きすぎることを「勝利至上主義に陥る」と言い換えられます。外発的動機づけ(これが出来たらお菓子など)と同じく、エゴオリエンテーションも、リスクが大きいと言えます。
対 してタスクオリエンテーションは、内発的モチベーション(純粋に楽しむモチベーション)と強く結びついています。コーチとして、「その子がどれだけ頑張り、どれだけ成長したか」に焦点を当て、そこで評価する傾向が強いと、タスクオリエンテーションが強いということになります。内発的モチベーションと同様、これはリスクが少なく、メリットも多くあります。
これだけだと、「勝利を目指すな」という結論になってしまいそうですが、実は話にはまだ続きがあります。エゴオリエンテーション(「勝つこと」に目を向ける方向性)とタスクオリエ ンテーション(「成長すること」に目を向ける方向性)の両方に焦点が当たっている場合は、エゴオリエンテーションのリスクが激減するということです。つまり「勝ち」も「成長」も追及することで、競技を楽しみながら高いモチベーションレベルを保ち、かつバーンアウトや柔軟な思考の阻害といったリスクを受けずにパフォーマンスを伸ばしていくことが可能になるということです。特に競技スポーツにおいては、「勝つこと」と「成長すること」の両方に子どもたちの焦点が当たっている状態が望ましいということになります。タイトルの「勝ち」か「成長」かという問いの答えは、両方とも追求することができそうです。 当たり前といえば当たり前ですね^ ^
しかしそれは自然に達成されるわけではありません。何故なら「勝敗は誰もが最も分かりやすい判断材料」であり、子どもたち自身も、保護者などの子どもの周りにいる人も、どうしても 「勝ち負け」で良し悪しを判断することが多くなるためです。何しろそれが一番分かりやすく、はっきりしている判断基準ですから。そこでコーチも「勝ち」のみに執着してしまったら、子どもたちの注意は本当に「勝ち」のみに向いてしまいます。そうすると、子どもたちの目は自然に「誰かを負かすこと」のみに集中 してしまい、エゴオリエンテーションの弊害が出やすくなってしまいます。
では、どうしたら…
考えてみると、
コーチがチームの方向性と して、「どれだけ成長したか」に照準を当て、「その子の中での成長の尺度」「そのチームの中での成長の尺度」を持たせてあげることが非常に大事になってくるかと思います。そしてそれができるのは多くの場合、充分なサッカーに関する知識を、どうすれば成長できるかを示す「コーチ」という役割だけだと思うのです。「勝ち」への方向性に傾きがちな子どもたちを、「成長」への方向性へと引っ張り、バランスを取ってあげるのがコーチの役割ではないかと感じます。