A HAPPY NEW YEAR 2008
・マキノ雅弘生誕100年・
あけましておめでとうございます。皆さん本年もよろしくお願いします。
本年は早速にTOM'S CABINがマリア・マルダーの久々の来日を実現してくれるなど、GOOD MUSICを聞いていきたいと思います。
そして映画の方ですが、2008年はマキノ雅弘生誕百年です。
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フィルムセンター回顧上映2008年1月5日(土)~3月30日(日)
明治41年(1908年)2月29日生まれなんで今年の2月29日が生誕百年記念日であるが、閏年の2月29日なんで、ようやく25歳とも言える。父マキノ省三はその年の9月に日本最初の劇映画「本能寺合戦」を撮った。日本映画はマキノ雅弘(注1)さんと共に生まれ、育ったのだ。
あまりマキノさんの事を知らない人もいるかも知れないので、少しばかりマキノさんについての口上を綴らせてもらうと、4歳から父の映画に出演し、18歳の時に「青い目の人形」で初監督をし、63歳で藤純子引退映画である「関東緋桜一家」(1972)監督するまで、約260本(注2)を監督をした。世界でも最大の映画監督である。インドとかには膨大な作品を撮る監督がいるらしいし、日本でもピンク映画界では多い時には年間50本以上撮っていただろう小林悟監督や小川欽也監督などを日本映画データベースで調べると400本以上リストアップされているが、世界の映画の草創期から、多くの人を楽しませ、映画スター(注3)を何人も育て上げ、映画人(注4)etc.を育て上げ、そしてその映画に駄作がなく、面白い傑作だらけであると言う点で、世界中で史上最大の監督であると僕は思う。
そのマキノ監督の生誕百年であり、フィルムセンターの回顧上映も始まる。また甥っ子のマキノ雅彦こと津川雅彦(注5)による次郎長三国志のリメイクの公開も予定されているのだから、2008年にはマキノ映画が全国各地で続々と特集上映され、DVD化や放映などされることを期待している。
そこで今年はマキノ映画の魅力について紹介していきたいと思っています。そして一人でも多くの人にマキノ映画の素晴らしさを感じて、1本でも多く見て頂けたらと思っています。
僕とマキノ映画との出会いについてもう少し書きます。映画を見始めた大学時代は見た映画を記録していて、それを見直すと「関東緋桜一家」と「日本侠客伝・関東篇」の2本しか見ていない。どちらも凄く面白かった記憶はあるのだが、マキノさんを映画監督として意識して、追いかけていこうとしなかった。そして大学を卒業する間際の頃、TVでテレビマン・ユニオンが制作した「ああ、にっぽん活動大写真」(注6)を見た事がきっかけだった。これで見た映画が面白かった事を思い出し、さっそく名著「映画渡世 天の巻・地の巻」を買って、ちょうど会社に入って最初の東京研修中にこれを貪るように読んだのだ。そして新世界などでマキノさんの旧作を追いかけ始めると、見る映画見る映画全てが最高に面白く夢中になっていった。そして結婚した頃に「鴛鴦歌合戦」のレーザー・ディスクを手に入れて、最初は毎日見ては毎日笑って、ますますのめり込み、そして十三の当時サンポード・アップル・シアター(今の七藝)で次郎長三国志連続上映を見て、完全にぶちのめされたのだ。そして91年の湯布院映画祭である。前から一度行ってみたいと思いながら、遠くて行くを躊躇っていたのだが、その年、何とマキノさんがゲストだった。この時マキノさんに会いに行かなければ、もう会えないないかも知れないと言う強い思いにかられて友人を誘って湯布院に行った。そして素晴らしい映画を見、マキノさんの語りを聞き、そして有名な猿の物まねを見せて頂いた。写真も一緒に撮って頂き、握手もして頂いた。映画の神様に僕は会えたのだ。

てなことでマキノさんの素晴らしい映画を今年は紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
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注1 マキノさんは生まれた時が牧野正唯、そして マキノ正博 、マキノ雅広、マキノ雅裕などと何度も改名している。
注2 戦前は監督の定義が曖昧で、本当に監督した作品がどれであるのか特定しがたいところがあるそうで、それを今、山根貞夫さんが整理作業をしていると言う。なお山根さんと山田宏一さん編集の名著「映画渡世」のリストによれば261本となる。
注3 藤純子、高倉健、森繁久彌・・・などなど。梶芽衣子の芸名を付けたのもマキノさんだ。注4 助監督を勤めた弟子と言えば、東宝時代の岡本喜八監督、東映時代の沢井信一郎監督などが有名で、助監督時代の黒沢明も1942年の「阿片戦争」の脚本に抜擢されている。
注5 マキノさんは映画一家である。父省三、弟には映画プロデューサーマキノ光雄、何度か結婚しているが、その妻には女優轟夕起子など。子供には女優のマキノ佐代子や沖縄アクターズスクールのマキノ正幸、甥っ子には長門裕之、津川雅彦兄弟。そうそうたるものである。
注6 TBS系・浦谷年良演出・78年1月1日~3月26日放送・全13回。「映画渡世」を原作とし、小倉一郎の雅弘、伊東四郎の省三、などによるドラマとマキノさん自身へのインタビューを組み合わせた、ちょっと変わったドラマだった。
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山田 宏一
次郎長三国志―マキノ雅弘の世界

マキノ 雅弘
映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝



東映ビデオ
日本侠客伝 BOX

<参考・引用文献>
山田宏一・山根貞男編集・マキノ雅弘著「 映画渡世 天の巻・地の巻」(平凡社)
日本映画データベース http://www.jmdb.ne.jp/
マキノ雅広 戦后文献目録抄 http://www.geocities.jp/kmkr_01/makino_bunken.html