2016年アメリカ大統領選挙を終わって(所感) | ExcomAdvisorのブログ

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本稿は私・平田幸治の個人の意見・見解等を綴ったものです。

 私は本ブログシリーズの2016年10月19日に『アメリカの行方(所感)』と題して進行中の米大統領選挙等について若干の所感を述べた。そのこともあり、11月8日の米大統領選挙で大富豪のドナルド・トランプ氏が次期米国第45代大統領に選出され数日経った今の所感を述べてみたいと思う。

 

 トランプ氏の選挙キャンペーンの一部だが、例えば税制政策について、2015年9月28日の記者会見で「・・年収2万5000ドル未満の独身者と5万ドル未満の夫婦世帯の所得税免除を約束・・」(ロイター、2015年9月29日)や「・・ミシガン州で演説し、・・法人税率を現行の35%から15%に下げるなどとする経済改革を説明した」(朝日新聞デジタル、2016年8月9日、NY=金成隆一特派員)というような開票速報で明らかになるだろう州の有権者へのアピールをしていた。

 

 視点を米メディアに向ければ、大多数のメディアがヒラリー・クリントン前米国務長官支持に流れ、彼女の実績がありすぎることがより現状に不満を感じる人々にとって変化を見いだせないという、メディアが米国社会を動かせないという結果になった。そこに、米国社会の構造的問題が検証されるべきではなかろうか。メディアがチェック機能の多様性を高めることが期待される。

 

 むろん、最終盤のメール問題のFBI再調査の混乱にもかかわらずクリントン氏は選挙人獲得数で敗れたが総得票数で勝っていた。

 

 いずれにせよ、オバマ現政権の諸問題の改革を期待した人々が次期米国大統領を選出したのだから、変革するトランプ氏はアウトサイダーを名乗ってメジャーになった。

 

 11月11日に政権移行チームの体制が発表され政権の陣容が形成される。かつては「ベスト&ブライティスト」とも言われた政権の政治任用ポストは、次期大統領の性格も入れたアメリカ政治のダイナミズムが展開されるのだろう。これはその陣容を待たねばなるまいが、政権の人々が政策を形成し策定・決定過程を担うのであり、日本国民の私は米国民と世界に尽くす優れた人々が登用されることを期待する。

 

 トランプ氏のキャンぺーン中の「メキシコ国境の壁」発言等はことさら移民のことばかりでなく、対米輸出のNAFTA再交渉こそも進められようし、米国貿易統計の数値の改善は「トランプ氏の勝利演説」ばかりでなく次期米国大統領が強いコミットメントを持つものでもあろう。アメリカが自由貿易の旗振り役だったのはその経済の優越でありその利益の考慮と無関係ではなかった。

 

 また、米国の様々な問題には11月12日朝日新聞でビル・エモット元英エコノミスト誌編集長が石合力・同紙ヨーロッパ総局長に指摘したように、2008年のフィナンシャル・リセッション(もしくはグレート・リセッション)で米国が機能不全に陥った。「それこそがトランプ氏の勝因でしょう」と述べている。(朝日の原文を読まれたい)

 

 この、「資本主義と民主主義がともに機能不全に陥った」(ビル・エモット氏)と指摘する問題は大きい。資本主義で欲望を手に入れて後戻りできない人間は、私の知見でうまく表現できないが、いわば「価値観の転換」を歴史と文明の流れにおいて模索しなければならないように思う。例えば、フランスのトマ・ピケティ教授が著書で提起した一握りの人々が大多数の人々の持つ富を持っているということは、国際機関や米FRB調査でも指摘されてきたところである。

 

 私たちはこの時代に思いを致すことが重く多く大きい。<了>

 

《追記》

1.米国貿易問題に関して2016年12月23日05時00朝日新聞デジタル記事(ワシントン=五十嵐大介特派員)を参考にリンクする。

トランプ流、貿易姿勢鮮明 助言組織新設、議長は対中強硬派:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/DA3S12719432.html

 

2.「トランプ氏、トヨタのメキシコ新工場『米に建てろ』」2017年1月6日06時00分朝日新聞デジタル、ワシントン=五十嵐大介特派員をリンクする。

http://www.asahi.com/articles/ASK161TYRK16UHBI001.html