ワイルド・エンジェルズ | アッシュのブログ

ワイルド・エンジェルズ

"The Wild Angels"
1966年アメリカ映画
監督:ロジャー・コーマン
主演:ピーター・フォンダ

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「イージー・ライダー」の前に、バイカー映画というジャンルは既に確立されていたのですが、多分そのきっかけはこの映画でしょう。
ヘルズ・エンジェルズの無軌道ぶりを描いた「ワイルド・エンジェルズ」です。

主演は、「イージー・ライダー」「ダーティー・メリー・クレイジー・ラリー」のピーター・フォンダ。
いわゆる美男子ではないけれど、こういうのはハマリ役です。
監督は、「蜂女の実験室(The Wasp Woman)」などwで知られるB級映画の帝王、ロジャー・コーマン。
コーマンらしく、流行の兆しが見えたものに逸早く飛びついてサクッと1本作ってしまったような作品です。
見所はそこそこ盛り込みながら、破綻なく低予算でまとめた職人芸。
ひょっとして、一番カネがかかっているのは、ヒロインのナンシー・シナトラ(フランク・シナトラの娘で、歌手)のギャラなんじゃないですか。

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ノーヘル上等!な時代です。

物語は、あってないようなものです。
バイカーを見せることが目的の映画ですからね。
特に前半は明確なものがない。
主人公のブルースが、バイカーというものに幻滅していく様を描いた無残青春ものと言うべきなのでしょうけれど、その内面があまり伝わってきません。
ピーター・フォンダの演技とコーマンの演出からは、このメイン・テーマをよく理解していて、ただの見世物映画に終わらせないという意図があったのがわかるんですけどね。中途半端です。

この後にコーマンのプロデュースで制作された"Devil's Angels"も同様で、主演をジョン・カサヴェテスに代えて若者の孤独を描きます・・・って書くと変だけど、バイカー万歳でもなければ、バイカーという病を抉るわけでもない微妙な映画なんですよ。
こちらはDVD化されていないし、ビデオもレアなのですけど、まあ、これと大体同じ映画です。

バイカーの騒動は、コーマンらしい手堅さwもあって、60年代青春ものにありがちな凡庸さなんですが

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バイカー仲間のルーザーの葬儀のシーンは、「マッド・マックス」を思い起こさせます。


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毎度「マッド・マックス」につなげるのもアレですが、そのくらいあの映画には、源流がしっかりあると言えるのですよね。

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それはさておき、この映画も、細かく見ると職人技が見つかります。


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ルーザーの葬儀で、牧師に詰め寄るブルース。

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説教に反抗するブルース。

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「それではあなた方は何をしたいというのか?」と切り返されて言葉に詰まったブルース。

内心ではバイカーの無意味さに気づいていたブルースが、上の世代の牧師の指摘によって、そのことをはっきりと気づかせられるシーンです。

2枚目と3枚目の間でのピーター・フォンダの変化も見事ですが、コーマンの演出も冴えています。
次第にボケていくブルースの仲間たち。
よく見ると3枚目の時点では人数が減っていますね。
教科書的ともいえる演出ですが、これをすんなりとやってのけるのは見事ですw
低予算・早撮りというスタイルで膨大な作品を作り出したコーマンですが、ただの手抜きとは違うんですよ。
作品にもよりますがw

まあ、細けぇこたぁいいんだよという向きにはあまりお勧めできないかな。
全体が散漫ですから。
大きな柱をもたせてガッチリ作り上げられた構成とか、よく出来たドラマとか、そういうのはコーマン作品には見られないものです。
ピーター・フォンダの存在感が一番の見所。
逆にナンシー・シナトラはもっさりしています。
"These Boots Are Made For Walkin'"の頃ですから、相性がいいかと思ったらなんか違う。
未見の人には意外かもしれませんけどね。