国際厚生事業団は5月22日、日本との経済連携協定(EPA)に基づいて来日したインドネシア人として、日本の看護師国家試験に初めて合格したリア・アグスティナさんとヤレド・フェブリアン・フェルナンデスさんの合格報告会を東京都内で開いた。合格者本人のほか、2人が働く新潟県三条市の三之町病院の研修担当者が、合格までのサポート体制や苦労話などを紹介し、インドネシア人やフィリピン人の看護師候補者を受け入れている病院の担当者ら約100人が熱心に耳を傾けた。

 リアさんとヤレドさんは2008年8月に来日した1期生で、半年間の日本語研修の後、昨年2月から三之町病院で働き始めた。来日時の日本語レベルは、「こんにちは」や「ありがとうございます」など、簡単なあいさつが分かる程度だったという。

 受け入れに先立ち、同病院では08年12月末、すべての職員を対象にした説明会を開いた。「人前で叱られる習慣がない」「給与の明細書を仲間同士で確認し合う習慣がある」といった日本との文化の違いなどを確認し、事前のサポート体制を整えたという。
 研修を担当する同病院総務課の樋口博一さんは報告会で、「説明会の効果は大きかった」と強調。院内の全職員を集めて実施したため、「当初は上からお叱りも受けたが、EPAを成功させるためには必須条件だった」と振り返った。

 同病院では、ベテランの看護師と事務職員合わせて4人を指導役に置いた。リアさんとヤレドさんは、午前中は看護助手として病棟で働き、午後は日本語の学習や国家試験の過去問題集などに取り組んだ。入浴や食事の介助といった業務中の患者とのかかわり合いを通じ、早口の言葉や方言を習得していった。
 イスラム教徒であるリアさんへの対応について、樋口さんは「昼と午後4時ごろに15分ぐらい時間を取り、そのための簡単な水場を提供した」と説明。ラマダン(断食月)中も、勤務スケジュールは通常通りだったという。

 病院側が神経を使ったのは、モチベーションの維持やホームシックへの対策だ。同病院では、職員が休日にショッピングや食事に連れて行ったり、登山や旅行を企画したりするなど、2人を家族のように扱った。毎週月曜には剣道、木曜にはバレーボールと、スポーツで汗を流す機会もつくった。リアさんとヤレドさんは、「(職員が)自分の子どもみたいに接してくれた」と口をそろえ、病院側の手厚いサポートが合格につながったと強調した。

■漢字対策、「1番いい方法は過去問題をやること」

 最も困難な漢字への対策について、リアさんは、常に単語カードを携帯し、分からない言葉は紙に書いてトイレに張るなど工夫して覚えたという。その上で、「1番いい勉強方法は、とにかく過去問題をやること。最初は読めなくても、やっていくうちに慣れてくる」と、会場の看護師候補者にアドバイスした。
 一方のヤレドさんは、漢字をノートに何度も書いて覚えたり、試験問題によく出る漢字をピックアップしたりしたという。「例えば、脳の単語は脳の病気というように頭で連想するようにした」と勉強方法を明かした。

■看護師候補者の滞在期間、5年に延長を

 樋口さんは、受け入れから合格までを振り返り、同病院の准看護師6人が一緒に国試を受験(全員合格)したことなど、さまざまな要因が「相乗効果を生んだ」と強調。EPA制度については、「初めから100パーセント出来のよい制度はない」とした上で、看護師候補者の合格率を上げるためには、現在3年の滞在期間を5年に延長し、学習の環境を整備すべきだと提言した。


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