ハトポッポ体操 Ⅲ
もう一つ、当時の真美ちゃんが抱えていた深刻な問題がありました。
それは保育園のオリエンテーション(方向認知)の不十分さからくるオモラシです。
年長さんになったというのに、私にはオモラシの常習犯というレッテルが押されていました。
(イヤなレッテルだよねぇそれは!)
言い訳するようだけど、今から考えてみるとこれにはちょっと理由があったのかも知れません。
「おしっこをしたい!」
と思ってお教室からトイレに行くのは、真美ちゃんにとって毎回ちょっとした冒険。
トイレの入り口を探しているうちに時間がかかっちゃうわけです。
一度失敗して怒られたりすると、そのマイナスの記憶が原因でトイレに行くのがますます嫌になってしまうんですよね。
この他にも、一度お外に出て遊んだら玄関に戻ってくるのに時間がかかる。
どろんこ遊びをしたあと水道まで手を洗いに行くのが面倒で、そのまま部屋に戻ってくる。
人のあとをついていって駅まで行ってしまい、家に帰れなくなって母から警察に連絡される。
色々とはためーわくなことをやらかしてきましたとも!
視覚障害の子供たちとの接し方その4 新しい環境に連れてきたら、第一に建物の構造を一緒に歩いて丁寧に説明すること。
全盲の子には戸をさわらせたり、小学生以上なら歩幅で教えます。
弱視の子には戸の数を数えさせたり、教室やトイレの標識を読ませたりします。
標識はできるだけ低いところに、濃くて大きな字で書いてあると子供には読みやすいですよね。
大きくなったらしっかりとした記憶力も出て場所もすぐ覚えますが、小さな子供のうちは周囲の人の観察と、何度も同じ事を教える忍耐が必要なのかもしれません。
特に弱視の子は、見えないくせに少ない視力で何とかしようとするので、慌てて突っ走ってとんでもない事件をやらかすことが多いんですよ。(笑)
ハト組さんクラスには、保母さんが二人いらっしゃいました。
そのうちの一人のT先生は、私に始終つきっきりで面倒をみていたのだそうです。
だから同じクラスの子が嫉妬して、先生に言いました。
「どうしてT先生は、真美ちゃんといつも一緒なの?
真美ちゃんは先生の子供なの?」
あれから36年。
今でもT先生は、同じ保育園で保母さんをなさっています。
今年の夏、妹の夜勤があったある日、母が妹の子供を同じ保育園にお迎えに行きました。
去年、イタリアの50人の友達を招いてピザ屋さんで行った40歳の誕生パーティーの写真を母は持って行ったんです。
ピスタチオで表面を覆って緑の野原に仕立て、周りを生花でぐるっと囲ったバースデーケーキを前にして嬉しい顔をたたえるエトナ。 その周りのたくさんのお友達の写真を見て、T先生の目には思わず涙が浮かんだそうです。
「あの真美ちゃんがねぇ。 大きくなって・・・みんなに愛されて・・・世界のお役に立っているんだねぇ・・・」
って。(いや、ほんとに役に立っているかどうかは疑問だが・・・)
T先生のお世話のおかげよ♪ 本当にありがとうございます!
写真はエトナの40歳の誕生日会。
イタリアの親友50人が出席してくれました。