お医者さんも初めての手術 | エトナ火山のお嫁さん(自分史編)

お医者さんも初めての手術

先天性白内障、つまり生まれつきの白内障と、老人が高い確率でかかる老人性白内障とでは深刻さが違います。

老人の場合はたとえ全く見えなくなってしまったとしても、手術をすれば時間をかけてまた見えるようになるといいます。

ところが子供の視神経は未発達のまま生まれてくるので、何ヶ月も白内障を放っておくと視神経が一生機能しなくなってしまうのです。

早い話が、一刻も早く手術して白内障を何とかしないと、失明するということですよね。


S病院からどのようにして歩いて帰って来たのか、母は覚えていないと語りました。

バスにも乗らず・・・赤ちゃんをおんぶして家まで歩いていくには、たいぶ距離があったと思います。


結局エトナの場合、生後二ヶ月にしてK市内のN病院で両目の手術を受けることになりました。

ところがこの手術というのが医師団にとっても初の試み!!

あまり良い言い方ではないけれど、要するにちっちゃな実験台です。


40年前の日本の医学のこと。 子供の白内障の手術はまだ確定されてはいませんでした。

医師団から白内障の濁りがが少ないと言われていた右目の方の手術が残念ながら成功しないで、逆に白内障の濁りが全体の瞳を覆っていた左の方の目を救っていただいたことになります。


・・・もっとも、現代医学は数々の実験台の上に成り立っているんですけど、ね!!

だからエトナは今でも大学病院に行くと、眼科医のタマゴである生徒たちに

「ど~ぞど~ぞ、珍しい症例ですヨ。 将来こういう患者に頻繁に出くわすという保証はありませんからね~。とくと見ていってくださいね!!」

って宣伝しています。(まるで魚売りだよそれじゃ!)

そう、未来の医学を奨励するために!


だから大学病院に行って、実験台にされたなんていう被害者意識を持ったことなんかないですね。

そういう風に言う病院の患者仲間に時々会うんですけど。

医学発展のために国がオカネを出して臨床の研究をさせている施設だもの。 大学病院なんて。

私の症例が医学進歩に貢献できれば幸せだと思わなきゃそんそん!!


えっ?? 「アンタ馬鹿だねー!」って?


・・・そりゃそうでしょうよ。これも先天性。 今に始まったことじゃないです。

とっくに自覚してますよー!!


・・・というわけで、N病院での手術の結果は今の医学の世界からすれば上等なものとは言えなかったことは確かですが、両目の失明という恐ろしい闇の運命から救っていただけたことは事実です。

だからエトナからすれば、あの時勇敢に未知の手術を行ってくれたお医者さんに感謝したいと思っています。

・・・今でもご存命ならの話しですが・・・