再審無罪が確定した菅家利和さん(63)の足利事件で、警察庁は1日、菅家さんを逮捕するに至った捜査の検証結果を報告書として公表した。

 冤罪(えんざい)を生んだ理由として、栃木県警が、「1000人に1・2人」程度に過ぎなかった当時のDNA鑑定の精度を過大評価した結果、捜査員には、菅家さんが「犯人」だとの誤った先入観があったと指摘。さらに、「エース」と呼ばれたベテラン警部が捜査指揮と、菅家さんの取り調べを兼務したため、その「自白」が真実かどうか信用性を吟味する機能が不十分だったと結論づけた。

 報告書は、栃木県警の当時の捜査員ら約20人から事情を聞き、捜査記録を再点検するなどした結果をA4判60ページにまとめた。冒頭には、「犯人ではない菅家氏を逮捕し、17年半も受刑者などの立場で苦しまれたことはあってはならない事態」などと、捜査を自己批判する内容を盛り込んだ。

 捜査の問題点として初めに挙げたのは、当時のDNA鑑定に対する過大評価。栃木県警の捜査員たちが、被害女児のシャツの付着物と菅家さんのDNAが一致する確率が「1000人に1・2人」に過ぎないのに、「菅家さんが犯人に違いない」との先入観を持って、取り調べに臨んだことが虚偽の自白に追い込んだと総括した。

 「エース」と呼ばれたベテラン警部が捜査を指揮する捜査主任官と取調官を兼ねたことで、他の捜査員が会議で疑問を口にしにくくなったとも指摘。犯人であれば間違えるはずのない菅家さんの供述を「忘れたに違いない」と判断し、犯人しか知り得ない「秘密の暴露」のない点を重要視しなかった原因になったとした。

 宇都宮地裁が先月26日の再審判決で、菅家さんの性格を「強く言われるとなかなか反論できない」と指摘した点についても「取調官に迎合する可能性への留意を欠いた」と分析。事件の核心部分を供述できない菅家さんに対し、取調官が「期待する供述が得られるまで繰り返し質問した」ことなどが虚偽供述に結びついたとした。

 この結果を受け、警察庁は、国家公安委員会規則の犯罪捜査規範を改正し、虚偽自白を生まないよう、捜査本部に自白の信用性をチェックする専従の担当者を配置することなどの再発防止策を公表した。

 ◆検証報告の骨子◆▽「1000人に1・2人」というDNA鑑定の精度について理解や検討が不十分のまま、菅家さんを犯人だと思い込んだ。▽取調官に迎合しやすい性格に留意せず、虚偽自白の可能性を考えなかった。▽捜査主任官の警部が取調官を兼務したため、供述と符合しない客観的事実や、供述が変遷した理由を吟味できなかった。

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