当ブログ「野村克也元監督が『プロ野球界は学歴社会』と発言」で、高卒選手はよくも悪くも子どもと指摘した。その見本として清原和博の名前を挙げたが、もう一人いた。清原より、むしろ、この男のほうが子どもっぽいかもしれない。
山崎武司。愛知県知多市生まれの45歳。愛工大名電高校出身。ドラフト2位で中日に入団し、その後、オリックス、楽天、中日と渡り歩いた。中日(第1期)、オリックス時代は監督とたびたび衝突し、わがままな選手と呼ばれた。しかし、楽天移籍後はリーダーとしての自覚が芽生え、若手選手を叱咤激励した。ときには手を出すこともあった。ヒーローインタビューで受け狙いの発言をすることも多く、試合中によく「今日は何を言おうかと考えていた」という。守備機会のない指名打者の特権だろう。地元球団で古巣の中日に戻ったが、体力の限界を感じ、2013年限りで現役を引退した。現在は野球解説者として、テレビやラジオに出演している。
愛称は「ジャイアン」。それ自体が子どもっぽいキャラであることを示している。意外なことに、酒とタバコは全くやらない。女性との浮いた噂も聞かない。その代わり、車に使う金は半端じゃない。少年時代、スーパーカーブームに直撃され、その感覚のままで大人になった。これまでランボルギーニの歴代フラッグシップモデルを乗り継いできた。同時にフェラーリ、ベンツ、ポルシェなどを所有。ミニカーのコレクターでもある。

当ブログ2012年6月20日付に「ランボルギーニ好きの山崎武司」という文章を載せた。当時、山崎はランボルギーニ・アヴェンタドールを購入した
ばかり。特注でマットブラック(つや消し黒)に塗装してもらったこともあり、諸経費込みで5000万円の買い物になった。山崎がこの車で球場に現れたときは、周りに人垣ができた。スポーツ紙の記事になったほどである。
以下、デイリースポーツ2012年3月7日付より。
《中日の山崎武司内野手が7日、新車のランボルギーニ・アヴェンタドールで名古屋市中川区のナゴヤ球場に登場した。
日本価格は4100万円、最高速度350キロを誇るイタリア製のスーパーカーに周囲は一時騒然。 同じカーマニアとして知られる山本昌も少年のような笑顔で試乗ドライブを楽しんだ。
開幕4番取りへ、この日も屋内練習場でバットを振り込んだ山崎は「去年の給料で買ったんだ。 今年の給料じゃ、3分の2しか買えないよ」と爆笑を誘っていた》
あれから2年…。マットブラックのアヴェンタドールは、すでに山崎の手元にはない。2013年12月に黄色いランボルギーニ・アヴェンタドール・アニバーサリオに乗り換えたのだ。ランボルギーニ創業50周年記念モデルで、世界限定100台。本体価格は5600万円。最高出力は720馬力を誇るが、通常のアヴェンタドールも同700馬力だ。その差はわずか20馬力。外見もそれほど変化がないので、乗り換えなくてもいいと思うのだが、世界限定100台という看板がマニアの心をくすぐったようだ。

山崎は『ベストカー』5月26日号で西川淳(自動車評論家)と対談した。日本のユーザーで最も早くアヴェンタドールを所有したのが西川、次が山崎。山崎は、マットブラックのアヴェンタドールを購入するとき、ディーラーに「国内輸入1号車にしてくれ」と念押ししていた。しかし、その約束は守られず、山崎が激怒しているという話が流れた。西川はそれを気にしていたようで、山崎に謝罪。山崎は「気にしてない」と応じた。大人になったな、山崎…。
山崎によれば、阪神の西岡剛もアヴェンタドールを所有しているという。阪神では福留孝介もスーパーカーマニアとして知られている。所有車はメルセデス・ベンツSLRマクラーン。本体価格は5775万円。メジャーリーグに移籍する前に所属していた中日では、契約交渉の際、「こんな年俸じゃSLRマクラーレンも買えない」と言ったとされる。

引退した山崎は今年1月、カーレース挑戦を表明した。市販車のトヨタ86&スバルBRZで順位を競う「ガズーレーシング86・BRZレース」だ。2014年は全10戦の開催が予定されているが、山崎は野球解説の仕事を優先するため、3~4戦のスポット参戦になる。所属チームはP.MU RACING。
山崎はカーレースに興味があり、その一環として2年前からカートの練習をしていた。J SPORTSの番組『BANZAI! 野球好き』で、レーサーの脇阪寿一とカートで対戦したこともある。選手時代は怪我を恐れてレース参戦を控えていたが、引退した現在はその制約がなくなった。そこで、初心者でも参戦できる86・BRZレースに白羽の矢を立てたのだ。デビューは、7月26日の第6戦(富士スピードウェイ)になる見込み。
ただ、山崎は1月の時点で86に乗ったことがなかった。興味はあったので、昨年、ディーラーに見に行くと、営業マンに「冷やかしでしょ」と言われた。その一言で急にテンションが下がり、買う気をなくしたという。スーパーカーマニアの山崎がトヨタのディーラーに来たら、口にするかどうかはともかく、誰だって冷やかしだと思う。それを受け流せない山崎は、やはり子どもだった。