9レース、その結果を知ったときは思わず机に突っ伏した。
…嘘だ。
やだ。やだやだやだ。
リ、リセットは?
リセットボタンは何処ぉぉぉっ!?

……はぁ。
わかってます。
ないよね、そんなの。
それに、たとえ何度同じ瞬間をやり直したとしても、あのひとはレバー握ったままだと思う。
放ったようには見えなかった。
たぶん、危ないのはわかってたんだろうけど…。
敢えてぎりぎりを狙っていったなら、放りたくなるのを我慢して握り続けなきゃならない。
それって、めちゃくちゃ怖いことじゃないのかな…。
それとももう、感覚がどうかしちゃってるのかな。
これも、ギャンブル、というか勝負にかかわる人間の性なのかもしれないね。
結局、ドM。

でも、これで何回目だろうね。
順調に築き上げてきた足場が、いきなり脆く崩れ去ってゆくのを見るのは…。
晴天の霹靂も、何回も続けば驚きや嘆きよりも先に溜め息が出てくる。
記念の舞台。好調に重ねていく戦績。誰もが、彼を、と思うようになった、その矢先に……崩壊。
ここまで同じことが重なるなら、それはきっと偶然でも不運でもない。
たぶんあるんだと思う。
何か、理由が。

…そして、時々、思う。
目に見えたものや結果だけに捕われるあまり、私たちは、なにかとてつもなく大切なものを見過ごしているのではないかと。
強いひと(もしくは強く見えるひと)の持つ、ごく繊細でやわらかい部分を、土足で踏みつけていることを知らずに、その上で笑っているのではないかと。

…本当のところは、誰にもわからないけど。
でも、もしかして、って。
そう考えちゃうのは、艇王の例もあるからなのかな…。