優勝戦の前の時間はいつも奇妙な重圧に苛まれている。
実際戦うわけでもない私が緊張してるのも変な話なんだけど、端から見たら笑っちゃうくらい顔が強ばっているらしい(よく旦那に笑われる)。
ずっと、ずっと、見てきたから、もう何度も何度も臨んだはずのこの瞬間。
なのに、慣れることがない。SGでも、G1でも、一般戦でも変わらずに。
ただ、いつも、震えがとまらない。
始まりをつげるファンファーレがなるまで、震える指同士をぎゅっと組み合わせて、待っている。
ただ、震えを止めたいだけのその動作。
無為のはずのその仕草が、どこか祈りに似てしまうのは、必然なんだろうと思う。

笑われても、仕方ない。
正直、自分でも気持ちが悪い。
他人のことでそんなふうに心が動くことを、止められないのが。
…ま、止める気も、ないけどね。
この高揚が消えないうちは、全部がっつりと抱えたまま、どこまででも付き合ってやる。
そうやって肚を括れば、先程までとまらなかった震えが少しだけ、和らぐから。


しかし、スタート早っっ。
本当に怖かったぁあ。いやな汗かいた!
フライングコールがかかった時、正直瓜生さんだと思って絶望しそうになったよ。チャレカの時みたいな、あんな瞬間、もう二度と味わいたくない。
いや、瓜生さんじゃないから良いってわけじゃないけど…。
どんなレースも、無事故に越したことないよ。ホントにそう思う…。
お金返してくれなくていいから(そんなに賭けないし)、このフライングなかったことにしてくれないかなぁ、ってよく思う。
大好きな選手が勝って嬉しいけど、胸にポツリと落ちた小さな青いシミのようなものが、いくらこすっても消えないでいつまでも残る。
そして、フライングをした選手の、その後のことを思って、ただ、悲しくなる。
…大袈裟、かな。そうかもしれないね。
だけどフライングって、どんな局面でも、傷にしかならない気がする。

ほんの数センチが、明暗を分ける。
栄光と喪失の境目、その分水領を確実に見極められる選手なんて、いない。
だから常勝の選手なんか存在しないわけだし。

何度の紙一重を通り過ぎれば、次の栄光にたどり着くだろう?
背筋が寒くなるような綱渡りを繰り返して。時には奈落の底に叩き落とされて、また、這い上がる。
そうして得た勝利、だからこそ尊く、祝福を受けるに値するのかもしれない。

瓜生さん、優勝おめでとう。
今年の最初に、いいスタートを切れて良かった。
ここからまた、はじまっていくんだね。
いつかまた、その瞬間にめぐりあうための戦いが。
私も、どうしても指がふるえるけれど、またこの緊張感とに在りたいと思う。

ちなみに、JLCで優勝インタビュー見てたら、一緒に見てた旦那がいきなり耳をひっぱりながら「そうですね、あの…」とか言いだしたので気でも触れたのかと思ったら、どうやらモノマネだったらしく。
…微妙に顔が似てるので、妙に似てて実にイヤだ(笑)。
コツは声を低くすることと目を泳がせることなんだって。
「俺、瓜生正義をマスターした!」と嬉しそうにしてたので誉めてあげました。はいはい良かったね。
細かすぎて伝わらないモノマネにでも出てくれば?
ネタ自体がスキマ産業すぎて伝わらない可能性大だけど。 



…あ、ハチクロ見忘れた…