~チャンミンside~
「…なっ……////////////////////!!」
目の前に繰り広げられた光景────。
見知らぬ男の人と、こちらに背を向けた多分、今日、…共演予定のアイドルの子との、…熱烈なキスシーン。
長身のその人にぶら下がるように首に両手を回す女の子。
その人は何度も角度を変えながら、…口角をあげたまま、いかにも余裕しゃくしゃくに。
背中に回した、長くてきれいな指が、さわさわと…大きく開いたドレスの隙間を往復するのに目を奪われて。
────ここ、僕の楽屋、…だよな?
時間にして数秒は固まっていたと思うけど、…一歩下がって、ドアの脇、自分のなまえが書かれたプレートを確認した。
そのまま、チラッと視線を戻したら…その人とバチって目があって。
あろうことか、ニヤッと不敵な笑い、…ウインクまでしてきた。
「…あ、あの……。」
言いかけたところで、クチュッ、…と大きなリップ音を最後に唇を離して。
「…ほら?もう、おしまい。自分の楽屋に戻りな?」
あっさりと身体を離そうとするけど、蕩けそうな顔の女の子がそれを許そうとしない。
ギュッと首に巻いた腕を緩めようとせず、…困ったように笑うその人の視線は、なぜか僕を見据えたままで。
「……シム・チャンミンに見られてるけど、……いいの?」
ボソッとその子の耳許で囁いて。
「…キャッ!!///////」
え…?…今まで気づかなかったわけ?
人の楽屋で…!!
さすがにイラッとして、ずんずん奥まで歩いていき、小さなソファーの上にドサッとわざと大きな音をたてて荷物を置いた。
そんな僕の背後で、…ねぇ、ユノ?後から会える?とか、…まだやってる。
…ってか、ユノ、って誰?
…なんでわざわざ僕の楽屋でラブシーンなんてしちゃってんの?
ちょっと色々我慢の限界が近づいてきて、…握った拳がふるふると震えはじめたとき。
「…もう、いいから。帰れ、つってんだろ?」
急に低い声を出したその人に、…さすがに女の子も諦めてすごすごと楽屋をあとにした。
────しばらくの沈黙。
この非常識な人になんて文句を言ってやろう。
勢い勇んで振りかえった僕。
そこには、さっきまでの事はまるで無かったかのように、ニッコリ笑って僕を見つめる、…男の僕でさえ、格好いいと、見惚れるような人が立っていた。