紅-クレナイ-の人(2) | えりんぎのブログ






~チャンミンside~





「…なっ……////////////////////!!」



目の前に繰り広げられた光景────。


見知らぬ男の人と、こちらに背を向けた多分、今日、…共演予定のアイドルの子との、…熱烈なキスシーン。


長身のその人にぶら下がるように首に両手を回す女の子。


その人は何度も角度を変えながら、…口角をあげたまま、いかにも余裕しゃくしゃくに。


背中に回した、長くてきれいな指が、さわさわと…大きく開いたドレスの隙間を往復するのに目を奪われて。


────ここ、僕の楽屋、…だよな?


時間にして数秒は固まっていたと思うけど、…一歩下がって、ドアの脇、自分のなまえが書かれたプレートを確認した。


そのまま、チラッと視線を戻したら…その人とバチって目があって。


あろうことか、ニヤッと不敵な笑い、…ウインクまでしてきた。


「…あ、あの……。」


言いかけたところで、クチュッ、…と大きなリップ音を最後に唇を離して。


「…ほら?もう、おしまい。自分の楽屋に戻りな?」


あっさりと身体を離そうとするけど、蕩けそうな顔の女の子がそれを許そうとしない。


ギュッと首に巻いた腕を緩めようとせず、…困ったように笑うその人の視線は、なぜか僕を見据えたままで。


「……シム・チャンミンに見られてるけど、……いいの?」


ボソッとその子の耳許で囁いて。


「…キャッ!!///////」


え…?…今まで気づかなかったわけ?


人の楽屋で…!!


さすがにイラッとして、ずんずん奥まで歩いていき、小さなソファーの上にドサッとわざと大きな音をたてて荷物を置いた。


そんな僕の背後で、…ねぇ、ユノ?後から会える?とか、…まだやってる。


…ってか、ユノ、って誰?

…なんでわざわざ僕の楽屋でラブシーンなんてしちゃってんの?


ちょっと色々我慢の限界が近づいてきて、…握った拳がふるふると震えはじめたとき。


「…もう、いいから。帰れ、つってんだろ?」


急に低い声を出したその人に、…さすがに女の子も諦めてすごすごと楽屋をあとにした。


────しばらくの沈黙。


この非常識な人になんて文句を言ってやろう。


勢い勇んで振りかえった僕。


そこには、さっきまでの事はまるで無かったかのように、ニッコリ笑って僕を見つめる、…男の僕でさえ、格好いいと、見惚れるような人が立っていた。