たしか,何年か前には大学院入学を目指していた.そして出たよ.がんばった.次は博士だ(笑)
M1の前期では,「絶対辞めるんだ」と意気込んでいた.
それくらい,弱っちい私に,大学院はむずかった.
同期は,大阪の人と徳島の人.両方ともソフト屋さんで,年は私より,ちょい下くらい.話も合うし,この学校のゼミはそれぞれが研究テーマを持ち寄る形なので,それぞれ刺激しあういい関係だった.でも,ゼミがきつい.指導教員が納得するまで,ハードボイルドなゼミがWebで続く.
きつかった.私なんぞ研究するタマではないと,毎晩頭を抱えた.
そんなときに,同期の大阪さんが言った.
「辞めるなんて言わないで,再来年の3月,みんな揃って業しましょう」
彼のその一言でずいぶん,がんばれた.みんな一緒に修了しよう.それを合言葉に2年間,大学院で頑張った.
結果.無事修了し,指導教員とは当時,あちこちの研究会に出かけるのが好きになった.なにより,研究が好きになった.
学位記授与式をめざして,ラストスパートをかけているときに,大阪さんが実は......と告白した.
2018年の冬,「どうもね,私,修了に単位が足りないらしいんですよ」
え?うそでしょ?口頭試問会やったじゃないですか?単位が足りないから,3月の学位記授与には間に合わない.次の9月だと言うのだ.え?みんなで一緒に卒業しようと言ったじゃないか?
単位が足りないという彼の痛恨のミスを受け入れるとして,2019年の春.NHKホールで徳島さんと一緒に式典に出ていたときのこと.
同プログラムの別ゼミの人が,私達を見て,
「やっぱり,大阪さん,卒業しなかったんだ」と言った.
どういうことかと確認すると,別ゼミの人は大阪の彼と同郷で,去年の夏に,プログラム毎の学生飲み会で一緒だったそうだ.そのとき,大阪さんは,
「徳島さんは卒業研究から指導教員と研究をしている.それと埼玉のアリとは,二人で特選修論誌に載ることが決まった.私(大阪さん)なんぞは,ついていけない.時期をずらして卒業する」と宣言していたというのだ.え?なに?どういうこと??一緒に出ようと言って私を引き留めたのはあなただよ.最初から仕組んでいたの?
学位記授与式の後のWebゼミで大阪さんに正面から聞いたが,指導教員がそこに居るからか,正直には答えてもらえなかった.残念な気持ちで大学院最後のゼミを終えた.
★☆★
私は同期3人の卒業を記念して,小さなストラップアクセサリーを作った.私と徳島さんと,先生と,大阪さんの分.それぞれ名が入っている.
2020年の冬に,QUEENのライブがあった.がんばってチケットを取ろうとしたが,東京でチケットは取れなかった.でも,大阪ならある.
大阪まで飛行機で片道1万円しない.思い切って,大阪でライブを観ることとした.もちろん,大阪さんに会って,真相をたずね,卒業記念のストラップを手渡すために.
彼と話して分かったこと.彼はM2の夏ぐらいから,何を研究しているか迷走していたそうだ.そうは見えなかったよ.それに,悩んでいるならば,言って欲しかったよ.そんな中,彼は本当に失敗して,単位取得登録をし損ねたんだそうだ.故意ではなかったが,仕方もないかと自分でも納得できる半年遅れの卒業なのだそうだ.
残念だけれど仕方ない.私は大阪さんの前で宣言した.
「次は博士を狙うから」すごく混雑した串揚げ屋で話していたので,聞こえないかと思い,思いきり,大きな声を出した.
そのとき,ちょうど,周りの会話が途絶えて,大声で宣言した形になった.
おぅ!がんばれよ!博士,ええやん!周りの赤の他人の人が励ましてくれた.恥ずかしいけど,うん.頑張るよ.大阪さんとは,それからSNSでつながっている.その後はコロナ流行で残念ながら,出歩くのが難しくなった.
徳島さんは,去年の博士受験を待ってくれていた.理由は私が,受験するまでに至っていなかったから.徳島さんは,私に一緒に行こうと言ってくれている.
うん.頑張るよ.今年こそ,博士課程受験するよ.
本当は大阪さんと3人で一緒に行きたかったが.徳島さんと一緒に行こう.
一年の計は元旦にありならば,ここで一生分,もう一度言おう.
今度は博士課程受験だ.