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早いもので、全6回にわたる 第12期 stage l  診断学ベーシックコースも
後半戦に突入しました。
 

4回目となる今回は『非歯原性疼痛』と『歯髄病変』についての講義が行われました。
今回は診断学の講義の中でもかなり重要な回なので、しっかりまとめてみたいと思います!

 


非歯原性疼痛は、診断が難しく対応に悩まされる事もある痛みではありますが、
誰でも起こりうる、日常臨床を行う上で稀な疼痛ではない事も忘れてはいけません。 


 
 
 
 
 
 

今回はまずLinn et al. 2007 の文献を読み解いて行くことから始まりました。
 歯内療法の教室と口腔外科の教室に治療依頼のあった症例についての比較検討が行われています。
 

正しく診断出来ていないのに治療をしてしまっている症例の多さに驚かされます。
診断のエラーは、患者が転院してしまうと把握出来なくなる難しさもあり、
診断を下した後の患者の追跡の必要性も改めて感じました。

痛みの特徴を正しく診断してから治療を介入することの重要性について、
この研究を通して学ぶことが出来ました。



では具体的にはどのように診断していけば良いのでしょうか?
site of pain(痛みを感じる部位) と source of pain(痛みの原因がある部位) は本当に同じなのでしょうか?
同じでなかった場合、どうしたら良いのでしょうか?





 
 
 
 
『歯の痛み』について3つのパターンに分け、整理しました。
 

一つ目が、
歯科治療が上手く行かなかった結果、元々の問題があり疼痛が続いている状態

二つ目が、
非歯原性疼痛が原因であるにもかかわらず歯の治療が行われた結果、新たな痛みが作られた状態

三つ目が、
歯科治療とは関係なく非歯原性疼痛が原因で痛みを伴っている状態
 

患者がどの状態に置かれているかを間違えて把握すると、誤診に繋がるのですが
これは、問診をしないと得る事の出来ない情報です。

時間がなくても、問診には必ず時間を取るべきである事が強調されました。






非歯原性疼痛のメカニズムについては
投影痛・投射痛および関連痛の伝達経路の図解も行われました。
 




最後に非歯原性歯痛の痛みの特徴として
①誘発痛に対する変化はない
②患歯に麻酔診を行ってもほとんど除痛できない
③多くの組織が歯への関連痛を引き起こす事がある
④発生頻度の一番高いものは筋痛
⑤筋痛以外には、上顎洞炎や神経障害性疼痛等、様々な可能性がある
などが挙げられました。



 
講義後半では、歯髄病変についての講義が行われました。

イエテボリの診断学を理解する上で重要な内容です。
始めに、発生・組織についてBrannstrom先生、Bergenholtz先生やRicucci先生の
脱灰切片を用いて解説されました。
 

象牙芽細胞の規則正しい並びは、ついうっとりしてしまう様な芸術的な美しさです。
象牙芽細胞の修復メカニズムについても学びました。
人間の科学の力ではなし得ない免疫のメカニズムには、本当に圧巻されます。
象牙質歯髄複合体やラシュコフの神経叢など組織学の復習も行われました。
こうやって今回は発生・組織学の復習を終えた後、講義内容は病的なものへと進んでいきました。


ここでも多くの研究が紹介されました。
今回は、2つほどご紹介したいと思います。
 

まず、プラークが歯髄に対して炎症を誘発することができるかどうか?

1975年のBergenholtz・Lindheの研究について解説が行われました。

この研究では3匹の猿で行われているのですが
5級窩洞を形成し、その窩洞にプラークを5分間に1回塗布、これを8時間続けて行っています。

試験開始後10時間および32時間後の歯髄変化を確認しました。
その結果、組織学的検査において、好中球、単球の増加等が確認されました。
その後、1977年にも同様の研究が行われ、
象牙質を切削することで象牙芽細胞の配列は不規則になるが好中球の浸潤は見られないのに対し、
切削後の象牙質表面にプラークを塗布すると膿瘍形成が見られることも組織標本を使って解説され、
細菌性要素が組織に与える影響を再確認することが出来たのです。

Stage l  診断学ベーシックコースでは研究ベースで知識を整理し、
受講されている先生方の症例を、皆でディスカッションすることにより
得た知識を症例に当てはめていくトレーニングも行い、こうやって
学びを深めていきクリティカル・シンキング出来るようにしていくのです。
 
そしてまた今回も講義で説明されることはすべて、その根拠となる文献を読み解き、
知識を深めていくことが徹底されました。
 
それが、「深い理解」につながるのです。
 
 
言葉で書いてしまうと、なんだかとっても難しいイメージがしてしまいますが、
講義中は誰一人睡魔に襲われていないのもこの宮下コースの特徴です(笑
むしろ興奮気味.....
 

また、Stage Ⅳのスカンジナビアンエンドコースの基礎となる重要な知識もここの回で学びます。


次回は神経障害性疼痛という難しい分野に突入です。
 
HANA
 
 
2017年度  第13期 Stage l   イエテボリ診断学コースは受講申し込みを行っています。
 
 
 
 
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