49 Bコース | Taeko-KIRA

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obscured by 2 clouds ― 雲母妙子の戯書三昧

 日曜日は霧雨だった。肌寒さも手伝って、京也はやけに遠い所まで連れて来られたような気がした。

 教室内の雰囲気は、一般や準会員の日曜テストの時のT大学やJ大学八号館とさほど変わりはなかった。ただ、一クラス百名程度であるため、これまでの大教室より随分こぢんまりとはしていた。

 テストや講義の運営も準会員と同じである。が、流石にBコースの算数は難しい。自習シリーズの練習問題とは別物だった。辻大木戸の算数で六十点に届かなかったのは初めてだった。もっと解法自在に力を入れないとダメだと京也は感じた。

 解法自在とは、学習参考書で有名なG社から出版されている中学受験用の参考書である。参考書と言っても、実質は中学入試問題集である。過去、国立や私立の中学で実際に出題された問題を単元別に収録し、自習に耐えるように解法の詳しい説明と正解を付してある。各単元では、例題とその解説に始まり、「ホップ」、「ステップ」、「ジャンプ」と、難易度により分類して問題が掲載されている。そして各問題の文末には出題校の括弧書きがある。この解法自在は、四教科とも出ているが、殊に算数のそれは、難関校を突破する力をつけるためのバイブル的存在となっていた。しかも、執筆陣には辻大木戸の関係者や現役講師が含まれている。

 辻大木戸によれば、五年生のBコースでは、ホップ、ステップまでマスターできれば十分ということだった。ジャンプは所謂難問や特殊な問題が収録されており、出題校は算数の難しい関西勢が殆どで、関東では御三家の豊武や浅蔵などをたまに目にする程度である。

 京也は、真澄が使っていた解法自在を譲り受けた。算数は使い込みが激しく、かなり傷んでいたが、他の三教科はカバーの色褪せを除けば新品同様だった。(つづく)