毎日通勤途中に中央区の坂本町公園を横切る。


 この公園は小さいのだが、由緒ある公園である。

明治22年に東京の市街地で最初に設けられた小公園

なのである。


 それまでは、江戸時代からの行楽地や社寺有地などの

いわゆる「ありもの利用」が多かったが、市民憩いの場所

として正式に公園を作った第一号なのである。


 

 今では何の変哲もない普通の公園である。


 周りが桜と銀杏の木で囲まれている円形状の公園で、

特に春は桜の名所となる。


 私は毎朝その円の直径を歩いている。


 箒でよく掃かれた土の上に鳩の足跡が無数についている。

それがとても綺麗なのだ。 桜の花びらとか銀杏の葉との

コントラストは誠に見事としかいいようがない。


 私はその足跡を「鳩紋(きゅうもん)」と名付けた。

全くの造語である。 


 この鳩紋は当然のように毎日新しく飽きさせてくれない。


 今、初夏の不躾な光達が緑にまとわりつき、はしゃぎまわって

いる様は心に沁みる。


 春の桜色は冬のモノトーンから一気に華やぐという意味では

ウキウキさせてくれるし、秋の黄色が寒風の中で煌くのにドキッと

させたれたりもする。 


 しかし、「心に沁みる」という意味では新緑だけではないだろうか。


 私が絵を断念したきっかけを作った妹はある時こういった。


 「もし、神様が耳か目のどちらかを奪うといったら、耳にして

欲しい」と。


 確かに、絵心のない私も音楽は脳を刺激するが、心は

刺激しない。


 週末には読者も緑に心を浸して下さい!